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20136/28

●捨てる力と伝える力(稲井英一郎)

 

空飛ぶ広報室と9.11

 

長年テレビ局で取材活動をやっていると、まさに想定外の突発事態が生じて、予定が大幅に狂うことを経験する。世界的な大事件や大災害に遭遇したときがそうだ。

 

6月23日に放送されたドラマ「空とぶ広報室」(TBS)でも、そういう逸話がある。
主人公が航空自衛隊の空幕広報室を密着取材していた取材テープの映像は、2011年の東北大震災が起こったためにお蔵入りになってしまう。ドラマの中ではハッキリ描写されていないが、有川さんの原作とは違い、間違いなくお蔵入りになったはずだ。

 

もちろん、その放送局の判断で放送してもいいのだが、あれほどの歴史的な大災害が発生した場合は、全社的に業務への影響が生じるため、取材記者やディレクターなら災害関連の取材活動支援に回らざるをえない。それに災害救援に出動した自衛隊の立場を考えると、犠牲者や被災者のことをさておき自衛隊広報を主人公とした密着映像を放送することは、当面はばかれるだろう。

 

このドラマをみていて12年前のことを思い出した。2001年9月11日、米国の首都ワシントンDCとニューヨークで起きた同時多発テロのときである。
当時私はワシントン支局に赴任中で、前年の大統領選挙およびブッシュ新政権発足がらみの取材が終わり、一段落していた時期だ。

 

こういう時にこそ、米国という超大国の抱える問題点や新しい潮流に焦点をあてた企画取材がじっくりできる。そしてテロが起こる少し前の夏の暑い時期に、私たち取材班はメキシコとの国境の町、テキサス州の「エルパソ」を取材で訪れていた。

 

なぜ国境の町を取材していたかというと、国境近くにあるメキシコ領内の貧しい村から、毎夜、多数の人々が国境地帯に張り巡らされたフェンスなどをくぐり抜け、米国に不法侵入することが社会問題になっていたからだ。

DCF 1.0

テキサス州エルパソ(Wikipediaより)

 

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