● 番組制作の運用面からみたNHK技研公開(稲井英一郎)
氏家さんが書いた技研公開のレポートは主要な点をたいへん分かりやすく網羅されている。それを前提とした上で、テレビ技術を運用し番組制作をサポートする会社から見たポイントを勝手ながら少し足してみた。といっても私自身、技術の専門家でも理系人間でもないので雑駁な点はご容赦いただきたい。
試行的に始まるハイブリッドキャスト
去年の技研モデルよりも現実的というか、汎用性を意識したモデルになっていた印象を受けた。去年の技研モデルは、今回よりも逆に先進的な技術の活用を前面に出していた。
それは放送番組内容とWebからのコンテンツ内容をほぼ完全に精緻に同期させるという点であったが、それが今年は大幅に姿を消した。
NHKが用意した目玉の連動コンテンツの展示は
(1) スクロールニュース
(2) TVみのがし・なつかし
(3) アクティブ番組表
の3種類であった。この秋からでも試行的に始めるサービス群だ。
スクロ-ルニュ-スの画面
TVみのがしし・なつかし
(1)のスクロールニュース」は天気予報や最新の関連ニュースを画面中に大きく混在表示させるというもので、現在のデータ放送が表示しているBMLコンテンツを、HTML5を活用してより進化させたものである。内容構成としては今のデータ放送と大差はないような気がするが、PCと同じ記述言語のHTML5を使っているだけあって、ネットから取得したコンテンツの映像表現力が格段に向上している。
(2)の「TVみのがし・なつかし」は、放送中の番組で過去OAされた既放送分を、NHKオンデマンドにリンクが飛んで、簡単にオンライン視聴できるようにしたもの。また、その番組に出演している主な俳優さんが、これまでに出演した過去の番組をやはり簡単にオンライン視聴できるようにしたサービスも採り入れている。
ただしオンデマンドに移ったあとは、個人認証を経て有料課金の決済をしてからでないと「みのが・なつかし」視聴はできない。
(3)の「アクティブ番組表」は氏家さんが指摘されているように、過去30日分の番組を遡って内容をチェックできることが最大の売りだ。ここからもNHKオンデマンドで「みのがし視聴」ができるので大変便利だ。ただしNHKの番組しか遡れないため、他の民放番組は一切チェックできない。その点は使う人によって評価が分かれるだろう。
上記3連動はいずれも、今のテレビリモコンの“d”ボタンで呼び出せる。しかし手持ちのテレビがこの秋から発売されるであろうハイブリッド対応機種でない場合は、従来通りのデータ放送を呼び出すことしかできない。
また、連動コンテンツは手もとのセカンドスクリーン(タブレット)でも視聴できるが、メインスクリーンの大画面テレビにも遷移表示できるため、メインスクリーンをなるべく番組以外の情報で荒らしたくない番組制作者にとってはちょっと抵抗があるかも知れない。
今回の目玉展示で注目すべきポイントは、放送中の番組進行にあわせて連動コンテンツの内容を高い精度で同期させて逐次更新することを、基本的に二の次にしていることだった。冒頭のべたように、これが去年との最大の相違点ではないか。
ハイブリッドキャストが当初めざしていた高度な同期性をいったん棚あげにし、今ある技術規格とすぐに用意できる端末を活用して、この秋にも放送開始できるような現実路線にシフトダウンさせたものに思える。
コメント
ワンセグ全番組タイムシフト視聴は視聴率を下げるのか検証してみた〜ガラポンTV視聴ログより
リアルタイムの放送をテレビで視聴する人が増えることは良いことです。 言うまでもなくこれは「視聴率が上がる」ことを意味します。 &nb…
この記事へのコメントはありません。