● 番組制作の運用面からみたNHK技研公開(稲井英一郎)
実用化段階に入ったスーパーハイビジョン
SUPER Hi-VISION(SHV)は言わずと知れたNHKの誇る8Kである。はっきり言って、ハイブリッドキャストよりも、こちらの進化ぶりに驚いた。
まず8Kカメラがさらに小型化していることに驚いた。大きさの面では十分に実用化段階に入ってきたのではないか。
それよりさらに驚いたのが、衛星を使った映像データの伝送能力が格段に向上したことである。
デモしていた伝送実験では、最新の映像圧縮(符号化)技術であるHEVCをつかって約85Mbpsの伝送容量で8Kの動画を送ることに成功していた。
写真は世界ではじめて電機メーカーと共同開発したという、8K映像データをリアルタイムで符号化できる装置(エンコーダー)だ。
スーパーハイビジョンHEVCリアルタイム・エンコーダー
さらにNHKでは、衛星経由で電波を送る際の変調方式を16APSKという新方式を加えることによって、衛星の伝送能力を約1.8倍にすることができたという。
現行の衛星デジタル放送では衛星に積んである1つの中継器(トランスポンダ=トラポン)で約50Mbps伝送することができる。それが1.8倍になると92.82Mbpsの伝送容量をもつことが可能だそうだ。
ということは、前述のデモで実現しているリアルタイム伝送容量の85Mbpsをトラポン1器で十分賄えるということになるため、BS衛星放送のトラポン使用上限を0.5トラポン以下と定めている放送法の規制を緩和するだけで、4Kどころか8Kのリアルタイム放送がすぐに可能となる。
8K用のスクリーンは、恐らく展示に使っていた145インチ程度の大きさでないと肉眼での識別が難しいだろうから、高価格となる対応テレビ端末や中継制作ワークフローの高コストなどを考えると、一般の家庭に普及するにはハードルがあまりに高すぎる。
しかし8K映像は十分な明るさがあれば、巨大スクリーンでも肉眼に近い高精細度の映像を再現することができるため、有料シアターやパブリックビューイングなどの劇場型モデルに絞っていけば、収益性のある視聴モデルの可能性が出てきたかもしれない。
2016年のリオデジャネイロ五輪で、NHKがこの8Kの衛星生中継をどのように使ってくるか、大いに楽しみである。
コメント
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