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201311/28

マネタイズか死か?~ジャーナリズムのミッション

老舗経済誌の挑戦

 

いま、老舗経済誌のビジネス系ニュースサイトが話題となっている。リニューアルが功を奏して、PV(ページビュー)数が最大で10倍になったのだ。
どこかというと、東洋経済新報社の東洋経済オンライン。一度のぞいてみていただければ分かるが、私のような「オジサン」はあまり相手にしないコンセプトで記事が貼られていることが分かるかもしれない。

 

たとえば11月19日のトップ項目4つのうち、まず柔らかめの2つが目に入る。
「もしドラ」の編集方針の分析「レディガガ」の新曲の話題。あと2つは「ミドリムシベンチャー」企業のもの「NTTドコモ」の社長インタビューという構成だった。

 

稲井3

 

この東洋経済オンラインの編集長を若くしてつとめる佐々木編集長と千葉県の幕張で対談した。対談と言っても、幕張で開かれていたInterBEEという放送機器展でのことである。
マルチスクリーン型放送研究会が出展していたブースでは、次世代のテレビサービスの有力候補である「マル研モデル」、つまりテレビ放送画面と手元のスマホコンテンツを、共通リモコンアプリを使ってIPデータで連動させる、という技術の開発に取り組んでいる。
メンバーには在阪局中心に、各系列をまたがるローカル局の有志、電通博報堂などの代理店、メーカー、ITベンダーなどが入っている。
東京キー局では唯一、TBSだけがなぜか加入している。

 

この、通称「マル研」の展示ブースではメンバーの皆さんがInter BEEの開催中、開発した技術を紹介するため連日ネット配信を行い、そのついでと言っては語弊があるが、ゲストを招いてメディア論、テレビ論などのテーマでトークイベントを企画した。
その場に佐々木さんに来ていただいて、読売テレビの植村アナウンサーや私も加わって色々とお話を伺ったのだ。

 

稲井1        左が佐々木編集長、右は読売テレビの植村氏

 

佐々木編集長の方針は、その著書を読むと、なかなかチャレンジングだ。
ターゲットを30歳台においたこと。電車の中吊り広告にある週刊誌のようなキャッチーで人目をひくタイトルをつけること。感情を揺さぶる文体にすること。主観的で断定的な書き方をすること。柔らかいネタも載せること。
そして、これからのメディア人は30歳代が中心になるべきであり、修行中の20歳代や中途半端な40代は放っておいて、人事権のある50歳代は30歳代を抜擢せよ、という提言もしている。
もちろん、佐々木さんはこのような刺激的な表現はとっていないが、キャッチーな書き方という教えに基づいていえば、まあ、上のような趣旨のことを主張されている。

 

そして2012年の夏に編集長ポストに就いてわずか8ヵ月後には、東洋経済オンラインのPV数を、月間5,310万とそれまでの5~10倍に増やしてビジネス誌系サイトの第一位に躍り出たのだから、実に的を射た作戦だったことになる。

 

雑誌とテレビの違いはあるが、東洋経済オンラインの手法は、ネットでの存在感を高めたいテレビメディアにも参考になるところがある。
従来の領域にこだわらず、インターネットの分野にオンラインのビジネスモデルを広げていく必然性や、これからの取材記者はテクノロジーやビジネスの知識がなければ第一線で活躍できないという見方は、私も常々思っていたことであり、深く頷くところだ。
そもそも、企業の財務諸表を読めず、最新技術動向も知らないようでは、素人に毛の生えた程度の記事しか書けないのはあたりまえの話だ。

 

 

 

 

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