● HDTV覚書「表現とは<何を見せないか>ということだ。4K/8Kから新『捻じ曲げ族』が生れるだろうか?」(前川英樹)
そんなことを積み重ねながら、ぼくたちは「何を見せるか」ではなく「何を見せないかが表現の鍵だ」ということに思い至り、そこからさらに様々な工夫を試みた・・・というより遊んでみた。映像作品における照明効果(影とは何か!)を再確認したり、フレームの外の音響の意味や美術の重要性とコストの問題を議論したりした。それに付き合ってくれた(面白がってくれた)スタッフがいて、例えば純技術的にいえば「情報量の多さを目一杯引き出すべき」なのに、制作技術的には映像表現のあり方、例えば平面的精細性より奥行き感を如何に見せるかなどの実験に一緒に挑戦してくれた。
「より良く映るのは当たり前(再現力)なのだから、それだけでは表現力にならない」というわけだ。「“何を見せないか”=捻じ曲げ効果」(Bending Effect)という言葉を使ったのは安藤紘平だった。彼の制作と技術の交点を探る発想は貴重だった。なにしろ、TBSのVE(ビデオ・エンジニア)で、劇団「天井桟敷」のメンバーという不思議な才能の持ち主だった。
また、ぼくたちを「捻じ曲げ族」と呼ぶ人たちもいた。当時、ソニーPCLの前沢哲爾さんが「映像新聞」に連載していた記事などに「捻じ曲げ族は元気だ」などと書かれている。誰もやってないことを色々やってみた。「良い時代だった。面白い時代゛だった。
あの異才、故宮田義雄が「前川チャン、おれにもハイビジョンやらせてよ」と現れた時のことは忘れられない。傑作にして怪作「芸術家の食卓」と「陰翳礼讃」はこのようにして生れたのだった。
「陰翳礼讃 IN PRASE OF SHDOWS」(1990年)パンフレット
HD画像から印刷変換した絵葉書
HDTVは葉書サイズなら印刷と同程度の情報量があるという事例として作成した
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