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201310/21

モーメント・テレビジョン(志村一隆)

志村1

 

テレビの売り物=共有性

 

今谷さんのテレビ論、とても面白く読んだ。違うことを言ってるようで、同じ考えなのか?ってことに気づいたり。そんな発見があるのが、「あや」を取りながら考えるあやぶろの醍醐味だろう。

 

今谷さんの論を自分的に解釈するとこうなる。

 

テレビ=共有性であり、その実現ノウハウが時間編成である。テレビは、その「共有性」を大手メーカーに売り、視聴者に提供する。

マーケティングの授業で習った「客はドリルが欲しいのではない。壁の穴が欲しいのだ」流をマネると、「視聴者は番組を見たいんじゃない。共有したいんだ」ってことになるだろうか。
ちょうど、前回ちょっと書いた家電メーカーの方とも、同じような話が出た。
「人は写真を撮りたくてカメラを買うんじゃない。撮った写真を共有したいんだ」
半沢直樹は「みんなが見てるから見る」のだ。この現象がテレビと映像、番組とコンテンツの分岐点なのだろう。

 

 

 

共有性の担保 -> 習慣性

 

テレビの共有力は、習慣性に担保される。これも、その通りでしょう。
ただ、気になったのは「誰の習慣性なの?」っていう点。
「テレビの習慣性」なのか?「視聴者の習慣性」なのか?どっちもなのか?どっちでもないのか?
自分は、最初読んで「視聴者の習慣性」ととった。そして、ちょっと違和感を抱いた。
送り手が客(ユーザーでも視聴者でもいいが)の習慣を決めるのは、ちょっと傲慢な気がする。
テレビは曜日時間で習慣的に番組編成をし、視聴者も渾然一体となって「テレビ」が出来ているのだ。というならわかる。それはそうだろう。(参考:前川センパイのメディアの時間性と番組(コンテンツ)の時間構造

 

 

 

多様な共有装置

 

志村2

 

「若者がリモコンを押さない」(今谷論文より)
テレビがONされなければ、共有性も習慣性もへったくれもない。
ちなみに。
テレビがONされなくても、『テレビ』の『共有性』は無くならない。
アフリカのビクトリアの滝は、「ビクトリア」という英語の名前が付けられる前から「滝」なわけだし、これから人類が滅んでも、その崖に水が流れる限り「滝」だろう。
それと同じで『テレビ』の『共有性』を強いる仕組みは無くならないだろう。
けれど、問題は、水の流れが変わったら?どうなるの?ってとこだ。
『テレビ』がその一部であると思っていた『視聴者』はどこに行ってしまうのか。
テレビの共有性を奪うものとして、あやぶろでもいろいろ議論してきた。インターネット、ソーシャルメディアなどなど。
けれど、他にも共有装置はたくさんある。
たとえば電話。1996年固定電話が約6,000万件だった。一家に一台。いまは、ケータイ電話が1億3000万件普及している。
そのケータイでチャットする人。LINEゲームでスコアを共有する人。家を出て、バッキー山脇さんのように走った距離を他人と共有する人。
テレビが時間を刻んでいる間にも、個人がいろんな「共有」をしている。
それが、「想像の共同体」が縮小する、という議論もした。統一国家というより、都市国家がゆるやかに連携するイメージになるんだろうか。
いま、あやぶろで議論すべきは、このテレビの外部世界との関係性であって、完成されたテレビの固有価値では無いと思うがどうだろうか。(参考:メディアの<鎖>化を巡って考えた-それぞれのメディアは何を問うのか- 前川センパイ)

 

 

 

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