モーメント・テレビジョン(志村一隆)
「リアルタイム」のコモディティ化
いろんな人がいろんな形の「共有」をする。
新たな共有装置「ケータイ電話(スマートフォン)」は、「リアルタイム」な共有がその性格であろう。
テレビの共有性は、翌日の職場からエア茶の間に移った。ゲームもそう。営業成績も、広告出稿も、販売も。。。この仕組みをコンセプトとして体現しているのがゲーミフィケーションである。
リアルタイムなフィードバックは、スマホにおける「共有の実現ノウハウ」であり、それは人をよりのめりませる。(参考:JBPressに書いた記事、ゲーミフィケーションとクリエイティブ)
テレビ広告売上の低下は、テレビの外部で「リアルタイム・フィードバック」装置が登場したことで、相対的に魅力が落ちた結果と言える。
じゃあどうしたらいいんだろう。(参考:「なう」について、河尻さんの「僕らはただのなうにすぎない?」)
PLAYとモーメント
自分の提案のひとつは、テレビは「リアルタイム」じゃなくて「モーメント」に昇華すべきではないかという点。つまり、商売的には有料にトライする。(これも、先日「Playするテレビ」で書いたし、今谷テレビ論の「フリーミアム」と同じ考えだろう。
それと「PLAYさせる」こと。
昔、テレビで博士論文を書くときには、『関与(INVOLVEMENT)』という言葉を使った。PLAYさせるとは関与度を増やすということだ。
関与が増すと番組の視聴者数が増え、解約が減るというストーリーで、実際にケータイWOWOWって会社をやってみて、効果を実感していた。
論文を書いた10年前は、SNSはグリーが出たくらいのときで、ケータイの掲示板を番組コミュニティとして利用していた。(参考:ネットコミュニティを用いた、新たなテレビ局ビジネスモデルの構築とケータイWOWOW創業によるその実践)
完成品をWATCHしながら、ケータイでPLAYさせていた。これは、ネットの第一の波であろう。
いまPLAYは「表現」にまで入り込んでいるというのが、自分の見立てである。そのひとつがマルチエンディング。(参考:マルチエンディング – デジタル化で我々の手に戻った「物語」)
今谷さんに「PLAYは気ままで習慣にならないんじゃないですか?」と問われた。
まず、客はそもそも気ままなもので、売り手がそれを習慣づけるなんてのを、自分の口から言うのは、ちょっとおこがましい。その意味では、視聴者はユーザーになったとたん、もっと気ままになるんではないか。(参考:氏家さんの視聴者が「視聴者」でなく「ユーザー」になった)
第2に、PLAYは「遊ぶ=気まま」って意味じゃなくて、「参加」する的なニュアンスで使った。
つまり「のめりこませる」ための第一段階である。
PLAYさせリアルタイムにフィードバックする、そうすれば「のめりこませる=習慣?」られるのでは?という提案だ。(参考①:のめりこませる技術、参考②情報社会は多層的・共振的に出来ている-須田さんの「実現クリエイティブ」論を読む-)
ということで、『テレビ』の価値の確認は、あやぶろでは随分としてきたと思う。そろそろ、テレビと外部環境の関係性についての話に踏み出すべきじゃないだろうか。
志村一隆(シムラカズタカ)プロフィール
1991年早稲田大学卒業、第1期生としてWOWOWに入社。2001年モバイルコミュニティを広告ビジネスで運営するケータイWOWOWを設立、代表取 締役就任、業界の先駆けとなる。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年エモリー大学で MBA、2005年高知工科大学で博士号
『明日のテレビ-チャンネルが消える日-(朝日新書)』、『ネットテレビの衝撃(東洋経済新報社)』が絶賛発売中。ツイッターは zutaka
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