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201212/29

12・29【NEXUS7、Kindle Fire、そしてKindle Paperwhite 買ってみた】志村一隆

ワンクリック

 友人の池田敬二さんが「タブレット」をポンポン買ってるのを、フェイスブックで見ていたら、気付かないうちにKindle Fireを購入してしまった。ワンクリック。数秒。
しかも、翌日届いた。はやッ。
なぜかスイッチが入り、PaperwhiteとNexus7もビックカメラに行って買ってしまった。。

 

タブレット+クラウド

この3つを使ってみて「クラウド」の読書体験ってこういうことなんだなぁってことをいちばん感じた。
今まで通り、パソコンからアマゾンで本を買う。すると、あっという間にFireとPaperwhite、両方で読めるようになっている。
Fireで読み終わった場所から、Paperwhiteで読める。
FireからもPaperwhiteからも本が買える。
インターネットに大きな自分の本棚(ゲームや音楽もあるからオモチャ箱?)があり、FireやPaperwhiteで探して、楽しむ感覚だ。
iPhoneでは小さ過ぎて、本や記事を読む気がしなかった。その代わり、ソーシャルメディアを見てしまっていた。
7インチのタブレットなら、本でも見やすい。これで、ソーシャル地獄から抜け出せる。もうiPhoneも要らないかも。

 

検索とレコメンド

Kindleはつねにレコメンドが表示される。
Kindleのホーム画面は、アプリが陳列されるスマホ的なのと雰囲気が少し違う。さっきまで使っていたコンテンツが、順番に表示される。
そして、その下に、レコメンド商品がズラッと並ぶ。「テルマエ・ロマエ」を読んでたら、その第2巻、3巻。レーシング・ゲームだと、シューティング・ゲームがレコメンドされる。

スクリーンショット 2012-12-28 16.30.45

 NEXUS7では、どうだろう。
レコメンドが表示されるのは、コンテンツの購入時だけ。
その代わり、Nexus7は、検索のときに、過去の検索履歴が表示される。
Kindleでは、検索画面には、何の履歴も出ない。
グーグルの「検索」とアマゾンの「レコメンド」の違いがこんなところに現れている。ユーザーの「行動履歴」のどの部分に特化してきたかで、サービスの思想も違う。

 スクリーンショット 2012-12-28 16.31.58

 左:Nexus7の検索(履歴が表示される)右:Kindle Fireで「ayablog」と検索(履歴は出ない)もちろん、検索結果は表示される。


商売上手なアマゾン

コンテンツ好き(自分が属するコミュニティにいると誰もが映画や本好きと思ってしまうが、それは大いなる勘違いだ)なら、Nexus7よりKindleのほうが心地よい。心地よく買って(買わされて)しまう。
実際、アマゾンにレコメンドされるまま3日間で、本9冊、ゲーム1個、音楽アルバム1個、合計1万円近く使ってしまった。
Nexus7ではまだ何も買ってない。なぜか、あまり買う気が起きなかった。
「検索」より「レコメンド」のほうがモノって売れるのか。
ちなみに、Kindleは、届いたときには自分の名前でセットアップが終わっている。なぜか、「志村一隆さんのKindle」と表示される。
気持ち悪いとも言えるし、おもてなしとも言える。

 

ゆらぎレコメンド

おもてなしといえば、昔、早稲田の馬場下にある「あゆみBooks」に、「入口脇の本棚にあった本欲しいのですが、タイトルを忘れてしまって」と問い合わせをしたら、スグに調べてくれて返事が来たことがある。
あいまいな問い合わせに応えてくれるのがリアルのいいところ。
アマゾンが商売上手なら、そのうち曖昧な問い掛けにも答えてくれたり、たまにワザと「購入履歴」と関係ないものを混ぜてオススメしたりするかもしれない。新発見を促すのだ。
リアルのおもてなしをデジタルに変える試みはこれからも模索される。機械のオススメが上手くなると、リアル店舗のサービスも上がって「答えかねます」的なことを言われなくて済むようになるんだろうか。
eコマースも便利さだけの提供が終わり、心地よさの追求段階に入っている。

 

何で儲けるのか DNAと画面遷移

機器で儲けるアップル、コンテンツを買わせて儲けるアマゾン、広告で儲けてきたグーグル。揃ってデジタル機器を発売したが、それぞれのDNAが「画面遷移」に反映されている。
コンテンツホルダーにとって、どのプラットフォーム(Kindleは機器を指すだけではなく「クラウド+機器」のプラットフォーム?)がいちばん売れるのか?を見極めるのは大事だろうが、いまのところNexusよりKindleのほうがいい感じ。
こうした機器の製造コストは安くなっているのだから、買わせるテクを持っている会社がタブレット販売に乗り出しても面白い。

 

オマケ(使ってみて感じたことのメモ)

  1. 電子書籍はとてもよい。読みやすく、買うのも便利。
  2. 洋書でわからない単語があっても、長押しすると辞書が出てくる。
  3. マンガはもう一工夫必要だ。アナログ版をそのままスキャンしただけでは、ちょっと読みづらい。
  4. マンガは、PaperwhiteよりKindle Fireのほうが画面が明るく読みやすい。
  5. ただ、書籍は前から持っていたSONY ReaderとPaperwhiteで読んでいる。eインクのほうが目が疲れないのではと思ってるが、まだ実験中。
  6. 自分のSONY Readerは、ページめくりがタッチパネルではなくボタン式。タッチのほうが力を使わないので便利。
  7. 無料本もたくさん購入?してみた。漱石、鴎外、泉鏡花、宮沢賢治とか、こんな人も無料本なの?って人もいて、粛々とダウンロード。初めて知った正岡容(いるると読む)という方の寄席に関する本はとても面白い。最新のデジタル機器で、古い本を再発見するって素敵。
  8. それは、TBSオンデマンドで60年代のドキュメンタリを見たときと同じ感覚だ。
  9. インターネットでこうした旧作に触れる機会が増えると、新たな創作表現が生まれるのではないか。
  10. 海外ドラマ見るのに、テレビよりもhuluのほうが見やすいと思ったように、書籍も紙よりもKindleのほうが読みやすく感じた。
  11. それは今回の7インチタブレットたちが、今までの「機器」のみ段階から「機器+クラウド」段階に進んでいるからである。
  12. 「クラウド」が今回のポイントだ。
  13. であれば、アマゾンはKindleの廉価版を続々と出すだろう。来年のクリスマスは1万円を切るのではないか。
  14. Kindle本(Kindleだけで発売されるデジタル本。ワードで書いてアップロード。数時間でKindleで発売されるらしい)も買ってみた。15ページくらいで100円のものが多い。
  15. Kindleがたくさん普及すれば、ブログに無料で書くより、少しでも有料な仕組みを利用する人が大量に増えるかも。
  16. Nexus7は、Kindleより軽くてスタイリッシュで格好いい。
  17. いま、自分が持っているコンテンツをGoogle Playで楽しむ機器。新たなコンテンツ消費を促すまでには行ってない感じがした。
  18. ネットサーフィン、ソーシャル活動にはいいかも。
  19.  SONY Readerで文芸春秋を買ってみた。ソフトウェアをアップロードしていなくて、まだ見れていない。
  20. アマゾンサイトに掲載されているiPad miniとKindle Fireの比較はコチラ

志村一隆(シムラカズタカ)プロフィール
1991年早稲田大学卒業、第1期生としてWOWOWに入社。2001年モバイルコミュニティを広告ビジネスで運営するケータイWOWOWを設立、代表取 締役就任、業界の先駆けとなる。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年エモリー大学で MBA、2005年高知工科大学で博士号
『明日のテレビ-チャンネルが消える日-(朝日新書)』、『ネットテレビの衝撃(東洋経済新報社)』が絶賛発売中。ツイッターは zutaka
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