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20137/19

●ドラマの魅力を倍返しする「平衡破却」(稲井英一郎)

二元的対立

 

実は「あまちゃん」には二元的対立がほかにも数多くビルトインされている。

 

・地方回帰と東京一極集中
・方言と標準語
・生産者(ウニを採る人)と消費者(ウニを食べる人)
・芸能プロダクション(アイドルを創る人)とオタク(アイドルを消費する人)
・元アイドルと現アイドル
・親であることと子であること

 

こうした対立が数多くドラマの芯を構成し、自然な形で混ざり合い、あるいは予期せぬ変化をうみ、物語が進んでいく。

 

「半沢直樹」にも二元的対立がある。

 

主人公は普段は論理立てて行動する冷静沈着な銀行員だが、いざという時には上司に派手な啖呵をきり、力ずくで決着をつけることも厭わぬ荒事の猛者。
原作「オレたち花のバブル組」の著者、池井戸潤さんは半沢を「ダーティーヒーロー」だと言っている
物語は全編、騙す者と騙される者、罠に嵌める者と嵌められる者のせめぎあいで進んでいく。

 

そんなこと当たり前だよ。面白いドラマや映画には必ず悪い奴と正義の味方がいて、文字通りドラマチックに盛り上げていくんだよ。
皆さん、そうおっしゃるだろう。

 

でも、ちょっと待ってほしい。
単純な正邪の争い、善悪の闘いだったら、あなたは登場人物にどれほど魅力を感じるだろうか?
人間には二面性があり、単純じゃないところがある。それを認めて初めて、物語に登場する人物の造形に奥行きがつくられ、読む人、見る人、が魅力を感じてくれるのではないか。

 

またまた江戸文化の話になって恐縮だが、以前に紹介したことがある明治から昭和にかけての哲学者、九鬼周造氏の「いき」に関する研究を借りて考察してみたい。(6・7【いきと野暮のメディア論】

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