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20136/19

● せんぱい日記【『てんで凌ぎ』、「TBS調査情報」受賞、現代史の力学と放送局、など】(前川英樹)

6/1(土)
長野カントリーでゴルフ。SBC(信越放送)の知人たちと。梅雨入りしたが、うす曇りでプレーに支障なし。前にも書いたと思うが、このゴルフ場は一番好きなゴルフ場だ。飯縄山の麓にあって、自然のタフさが活かしてあるのが良い。苦戦するけど嫌になることはない。
ぼくは制作畑出身で、営業・報道・編成の経験がないので、ローカルの人たちとの接点が少ない。メディア企画担当になって、BS時代の地方局経営や地デジ対応が大きなテーマになってからあちこちに出かけるようになった。SBCはそうした系列ローカル局の中ではかなり接点の多い局だった。他には、HBC(北海道放送)、RCC(中国放送・広島)、MBC(南日本放送・鹿児島)、SBS(静岡放送)そしてMBS(毎日放送・大阪)などには何度か足を運んでいる。
BS戦略のころだから、もう20年以上前のことだっただろうか、とある系列担当者の会議で「これからは、キー局頼りではなく、各局が自力で生き延びる時代になります。各局が“てんでに凌ぐ”力をつけましょう。」というようなことを発言した。この“てんでに凌ぐ”というのは、NHKのドラマ「夢千代日記」で吉永小百合の台詞として登場する“てんで凌ぎ”がネタだった。「冬の日本海は厳しくて、漁に出た船は荒れた海で“てんで凌き”です」というような台詞で、夫々が自力で何とか頑張るといった意味だった。夢千代日記の舞台は、山陰の湯村温泉で日本海が近い。山田風太郎さんの郷里八鹿の傍で、去年「風太郎祭」に出かけたときに一泊した。
その“てんで凌き”という言葉は、スキー仲間で優れた番組構成者だった和泉二郎さんが、吹雪のゲレンデで「今日は“てんで凌き”で行きましょう」と言ったのが結構受けて、記憶に残っていた。
で、系列会議でそう発言したら、しばしの沈黙の後「TBSはもうローカルを捨てるというのですか」などの発言があったが、なんとなく“そういう時代になるのだ”という受け止め方が多かったようだった。今、キー局でさえ“てんで凌き”で悪戦苦闘している。ローカル局が地方情報・地方文化の発信基地として経営を成り立たせるのは益々容易ではないだろう。だが、民放の原点は地域性にある。そのことは変わらない。テレビ・ラジオの可能性は、ネット/ソーシャルメディアとの組合せにある。そのことは確かなのだが、それをどう経営として成り立たせるか、それが見えてこないもどかしさの中に、ローカル民放はいる。

 

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