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20125/7

5・7せんぱい日記【三つの写真展を見たり、素敵な女性記者たちとの交流が復活したり、かきつばたが咲いたり、なかなか良い春だ】前川英樹 

4/17(火)

昨日から少し喉が痛い。
午前、六本木の眼科で緑内障の視野の定期検査。症状に変化なく、進行は抑止されているとのこと。
その後、元気堂でマッサージ。「シーズン中しっかり滑ったんだから、一度体を休めた方が良いですよ」といわれる。昼は、久しぶりに伊兵衛の蕎麦。
そのうちだんだん風邪の症状を自覚。とはいえ、夜の予定をいまさらキャンセルできず、空いた時間を利用して東京都写真美術館へ。シニア会員更新の手続き。
「幻のモダニスト―写真家 堀野正雄の世界―」、「フェリーチェ・ベアトの東洋」、「生誕100年記念写真展・ロベール・ドアノー」を観る。どれも興味深かった。(「あやブロ」4/26. [テレビに表現形式と言えるものがあるのだろうか-三つの写真展を観て思ったこと-]参照)

 

堀野正雄のことは知らなかった。機械工場や列車、艦船などを素材にした写真はいかにもモダニズムだ。その延長にある組み写真によるモンタージュは1931~2年の時代にしては過激なまでに社会派的(階級的)であり、しかしその手法が翼賛的写真に繋がってしまっているように思えた。戦後カメラマンであることを断念したというが、そのあたりが背景にあるのだろうか。

「フェリーチェ・ベアトの東洋」
ベアトの写真は良く知られているものが多い。記録としては貴重な文化遺産だが、その視線はオリエンタリズムそのものであり、支配者による植民の記録にほかならない・・・と、いうことも含めて興味深かった。

そして、「生誕100年記念写真展 ロベール・ドアノ―」。
ドアノーは過剰なまでに優しい。恋人たちや子供たち、芸術家のポートレートなど。どこまでも、「状況が写真になる」のを待ち続ける。そこには写真家による罠が仕掛けられている。
とはいえ、レジスタンスの断面を切り取った写真など、占領下のパリの逼迫感が静かに伝わってくる。写真集を買ってしまった。

夜、ドイツ料理の店。ホントに風邪だ、まずいな・・・。

4/18(水)
風邪は進行中だけど、外出。TBS診療所眼科で薬の処方。視野検査は診療所では出来ないが、薬は健保の関係で診療所の処方だと経費が効率的。折角だから、内科で風邪薬を出してもらう。鼻、喉など辛い。
午後、放送人の会でブログ更新の打合せ。漸く先が見えてきた。

4/19(木)
終日寝ていた。食事時を除くと20時間。
良く寝られるものだと思うが、これもスキーシーズンの疲れが蓄積されていたのだろうか。スキーからそのままゴルフというのは、もう若くないから一休みせよということか。

4/20(金)
今日も大人しくしているしかない。手をつけるべき原稿があるのだが、集中力がない。FBで遊ぶ気にもならない。
BSで「死刑台のエレベーター」をボーっと観る。
ジャンヌ・モローが好きだった。圧倒的存在感・・・もう一人の好きだった女優、オードリー・ヘップバーンの圧倒的非存在感と対照的だ。この映画では、愛人関係の二人が一緒にいるシーンは一つもない。すれ違いもしない。監督ルイ・マル、音楽マイルス・デイビス。1957年制作というからモダンジャズの全盛期だろう。ぼくは高校生だったから、映画を観たのはもう少し後、大学に入って名画座かなんかで観たに違いない。「アンダンテ・モデラート」というジャンヌ・モローとジャン・ポール・ベルモントが共演した不倫の愛の名画もあったっけ。

木原君から受け取った、ラジオドラマ「鉄になる日」(MBS制作)を聴こうと思ったが、何故かMedia Playerに不具合ありと表示されて再生できない。他のディスクは作動するのに何故だ!小松左京の「日本アパッチ族」を3.11後の日本を舞台にして脚色したという。楽しみにしていたのに。

4/22(日)
やっと少し元気になった。
「BRAIN」の須田さんの広告実現論について「あやブロ」に原稿を書いたが、あまり出来が良くない。TBSメディア総研の年次レポートの原稿も送る。(4/23.「情報社会は多層的・共振的に出来ている-須田さんの『実現クリエイティブ』論を読む」)

4/23(月)
雨。肌寒い。
放送人ブログの新しいソフトについて、ガイダンスを頼りにいじり始める。良く分からないところもあるが、やっているうちに何とかこなせそうな感じがしてきた。面白いかもしれない。ただ、どうしても取り込めない写真がある。何故だろう?

夜、何気なくTBSニュースバードにチャンネルを合わせたら、ニュースの視点で「連合赤軍と現在の私たち」を放送していた。元連合赤軍メンバー植垣康博、新右翼リーダー鈴木邦男。
連合赤軍事件は、日本の左翼運動の終末だった。「戦後の」ではない。党派的運動の構造的欠陥の集約であり、その露呈だったと思う。同時に、それは日本の近代の負の反映だったとも思う。この悲劇的な事件から、自前の思想と自前の運動を組み立てるのがどれほど難しいかということを、私たちは知るべきなのだ。日本という国の立ち位置の難しさがここにもある。少し幅を狭めて考えたとしても、戦後思想はここを避けては通れない。にもかかわらず、回避するか、素通りするか、忘れたことにして、私たちは「いま」を生きている。もちろん、私も・・・というようなことを、考えてしまった。それにしても、司会の彼女は「知らないこと」をそのままに、良く頑張っていて、感心した。

4/24(火)
久々の快晴。
「放送人ブログ」の画像取り込みが何とか解決。ホッ。色々アドバイスしてくれたHさんに感謝。

4/26(木)
午後、民放連研究所で出版企画打合せ。
自分の原稿が長過ぎるとのこと。長い分には結構ですと言っていたか、それにしても長かったらしい。どう切るか悩ましい。

4/27(金)
毎日新聞の中島さんから、パリ出張でフランス大統領選挙見聞記の「あやブロ」原稿(4/29.大統領選直前、サルコジの本拠地・パリ16区で見たものは?) 。先日のジャーナリスト津山恵子さんも大統領選挙に関するエピソードを投稿してくれた(4/24.「自由の国(と思っていた)フランスで、ツイートしたら、罰金をくらったかもしれないという話」 )。いろんな人が書いてくれる、嬉しいことだ。
津山さんも中島さんも、それぞれのプロフィールで、前川せんぱいはかつての取材相手と書いてくれている。確かにメディア企画時代に取材記者として付き合ったけれど、あまり取材されたという印象はない、何だか楽しく話をしてたという感じで、お二人ともぼくの話を聞いたからと言って記事にはならなかったのではないだろうか。それでもこうして優れた女性記者たちとの縁が続いている。嬉しいことだ。

4/28(土)
クローゼットを片付けて、段ボール三箱分の不要物を処分。
腰が痛い。

4/29(日)
朝、庭の雑草取り。かきつばたが咲いた。
「かきつばたが咲いたよ」と家人に行ったら、たまたま来ていた長女が「お母さん大変!お父さんが花の名前覚えたよ!!」だってサ。

 

 

NHK-BS「ようこそ先輩―課外授業―」(再放送)で、メディアジャーナリストの津田大介さんが、母校の中学3年生にツイートによるコミュニケーションを教えていた。ネットがコミュニケーションの場を広げ、そのあり方を変えていることが良く分かった。が、それよりも、同級生の中国人の友人とツイートするときなど、彼らの精神の柔軟さ、健康さに感心した。中学3年生って素敵だ。ロンドン在住の女性の友人が東京に来るたびに、「ダメなのは大人、若い子はとても良いよ」と言っているけど、ほんとにそうなんだと思った。なのに、夜のNHKスペシャルでは、若者たちに新しいタイプの鬱病が増えていて、コミュニケーション能力が身についていないからだという。日本の将来が懸念されるともいう。あの昼間の中学生たちはどうなるのだろうか。

4/30(月)
「月刊民放」5月号が送られて来た。拙稿の地デジ論が掲載。
思えば、放送界人生の最後の10年は地デジだった。ソーシャル時代の今、地デジってなんだという向きもあるが、やっぱり結構大変なことだった・・・が、面白かった。どう大変で、どう面白くて、そしてあれは何だったのかを、今それなりにとらえられるのも、テレビの中にも外にもいる優れた人々と出会ったからだ。とくに、「あやとりブログ」の存在は大きいと思う。


 

前川英樹(マエカワ ヒデキ)プロフィール
1964 年TBS入社 。TBS人生の前半はドラマなど番組制作。42歳の ある日突然メ ディア企画開発部門に異動。ハイビジョン・BS・地デジとい うポストアナログ地上波の「王道」(当時はいばらの道?)を歩く。誰もやってないことが色々出来て面白かった。その後、TBSメディア総研社長。2010 年6月”仕事”終了。でも、ソーシャル・ネットワーク時代のテレビ論への関心は持続している・・・つもり。で、「あやブロ」をとりあえずその<場>にして いる。
「あやブロ」での通称?は“せんぱい”。プロフィール写真は40歳頃(30年程前だ)、ドラマのロケ現場。一番の趣味はスキー。ホームゲレンデは戸隠。

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コメント

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  • コメント (1)

    • Hideki Maekawa
    • 2012年 5月 07日

    季節の変化がチョッとぎくしゃくしている感じで、急に春が進行し​た。温暖化のせいか?気分が前のめりの割には体がついて行ってな​いのかもしれない。古希は思ったより色々対応することがあって、​忙しく進行中!「せんぱい日記」にも、そんな感じがでているようだ。

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