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20131/24

1・24【まとまんないけど、CES2013報告 第1回 新しいマントラは、モバイルとコネクト!】山脇伸介

今年も1月8日~11日にラスベガスで世界最大の家電見本市CES(Consumer Electronics Show)が開かれた。念願かなって休暇が取れ、私も初めて参加することができた。
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3000人の聴衆が集まるキーノート・スピーチには、人気ロックバンドのマルーン5やビル・クリントン元大統領がサプライズ・ゲストで登場するなど華やかな演出の一方で、「今年のCESには目玉がない」「ハード家電見本市の役割は終わった」という冷めた評価も飛び交ったCES。しかし、初心者の私には実に刺激的なイベントだった。

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(サプライズで登場した、マイクロソフト社CEOのスティーブ・バルマー)

なによりも強調されていたのは、これからはスマートフォンとタブレットの時代であるということだ。あやブロでもお馴染みの志村一隆さんに連れてってもらったCESを主催するCEA(Consumer Electronics Association)チーフエコノミストのShawn DuBravac氏の基調講演では「CES2013のトレンド」として、以下の4つがあがった。

① スマートフォン&タブレット時代の幕開け
② オススメ機能は、さらに進化する
③ すべての電化製品は、リアルタイム・データでつながる
④ そして人々の生活が変わる

④については、志村さんがあやブロ「分解する人」で、鮮やかに人々の「変化」について描いている。

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(プレスセンターで必死に原稿を書く志村さん)

テレビ屋として聞き捨てならなかったのは、DuBravac氏が「セカンドスクリーン」というトレンド用語を一切使わず、テレビ受像機のことを単に「ビッグスクリーン」と呼んでいたことだ。
細かいことのようだが昨年11月、境さんのソーシャルテレビ推進会議でも、同じパネルディスカッションに立った日テレの方が「セカンドスクリーン」と言い、バスキュールの方が「ダブルスクリーン」と慎重に呼び分けていたことが思い出された。
果たしてテレビ受像機は「ファーストスクリーン」なのか?それとも、数ある「スクリーン」の一つに過ぎないのか?

CESではいくつかカンファレンスもハシゴしたのだが、ネットワークテレビ関係者はおしなべて「セカンドスクリーン」という言葉を使っていた(ただ、意識的に使い分けているというよりは、「そういうもんでしょう」みたいな不勉強な印象が強かったけど)。
一方で、ケーブルテレビやネット関係者は「マルチスクリーン」だの「スモールスクリーン」だの、極めて意図的に使い分けているように見えた。これについては次回以降に書ければ書きます。

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DuBravac氏の続き。②のオススメ機能の進化について。ブロードバンドの普及が、ソーシャルメディアが発展するベースになったように、音声認識と様々なセンサーによる認識機能の進化が、より精緻なオススメ機能を発展させる。たとえば、テレビ受像機に取り付けられたセンサーが、視聴者の姿形から誰が見ているのかを特定し、その人向けのオススメ番組を画面表示する。既にハード家電には、ユーザーが誰なのか認識させることは可能だ。問題は、いかに精緻なオススメ情報を作ることができるのか?というソフトの問題になってくる。
その一方で、センサーの進化によって「デジタル技術で、アナログものが復権」という話には、かなりワクワクした。私たちの生活そのものがデータ化され、つながっていく。もちろんプライバシー保護みたいなこともいろいろ起きるのだろうが、この流れは止まらない。

そしてモバイルと並んで、2大テーマとなっていた③のコネクト。スマホ&タブレットを中心にすべての家電がリアルタイム・データでつながっていく。
例えば、スーパーボウルで活躍した背番号55番の選手のグッズを、タッチダウンした瞬間に売る!これまでインタラクティブ(双方向)といえば、テレビドラマに登場した洋服など、あらかじめ入力された商品がデータ放送に表示されたり、スマホで検索できたりというものだった。しかしリアルタイム・コマースは、消費者が「欲しい!」と思った瞬間を逃さず、その商品の「購入ボタン」をさっとスマホ&タブレットに出すというイメージ。
もちろん腕時計で測った血圧などのデータが、瞬時に病院などに送られ、健康チェックや食事のオススメやどの交通機関を利用した方がいいのかオススメ(きょうは疲れてるから、満員電車は見送れとか)が送られてくるという例も紹介された。

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(スマホとタブレットが、2013年も伸びる)

続いて登壇したCEA産業アナリストSteve Koenig氏は、あらゆるデバイスの中で、スマホ&タブレットだけが売り上げを順調に伸ばしていることを紹介し、ジェネレーションY(Y世代:1975年~89年生まれ)にとって、スマホ&タブレットが醸し出す「特別な共感」こそが、マーケティングのカギである。しかも、消費者がカンタンに買うことができることが重要だと語った。

という訳で、「スマホ&タブレットが、すべての家電のコントローラーとなっていく」というほぼ予想通りの展開だったのだが、肝心のテレビ受像機はどうなっちゃっていたのか?次回に続きます、イヒヒ。

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山脇伸介(やまわきしんすけ)
1991年TBS入社。
朝昼の生情報番組やニュース番組のプロデューサーを経て、
2007年8月から1年間、ニューヨーク大学院(NYU)で「テレビとインターネットのこれから」について学ぶ。
帰国後、他局に先駆けてTwitterやFacebookの導入に尽力。
著書「Facebook 世界を征するソーシャルプラットフォーム」(ソフトバンク新書)
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