1・22【EXPERIENCE体験2】志村一隆
電車にマンガ週刊誌を分解して読むオジサンがいた
久しぶりの “experience”
前回のポストで、英語の “experience” が意味するところは、どうやら「○○化」ではないかという話をした。「デジタル化」は「電化」以来、久しぶりの “experience” である。
でも、なんで米国はこの「デジタル化」が進むのだろう。
「分解」する人
欧米人と話していると、彼らがやたらトピックを「分解」することに気付く。
「その質問は、2つに分解できるね。まず1つめから答えよう」なんてことを言う。
とにかく「分解」好きなのだ。
これって、彼らが「実存」「認識」「二元論」といった物事を「分解」して考える思考法を教え込まれているから?(推測)
小説を「分解」すると、「紙」と「字の塊=アイデア」になる。「紙」は小説を読者に届ける手段だから、実は何でもいい。
この「アイデア」と「手段」に分解する思考法が、新しいものを取り入れるときに柔軟に働くんだろう。
手段は時代に合わせてどんどん変化する。
「分解」しない人
身の回りで電子書籍の話をすると、「やっぱり紙をめくるのがいいんだよね」って人が必ずいる。紙の本がデジタルになった瞬間、これはもう小説ではないと考えている。
「分解」しない人だ。
「分解」しないとどうなるか。モノや自然をそのまま受け入れる。モノを愛でる精神は、そのモノを高度に洗練させる。
そういった技術を磨くのは職人やアーティストの仕事。日本人は職人が大好きだ。「ものづくり日本」「ものづくり大学」モノを作るのが好きなのだ。
たしかに日本の文庫本は素晴らしい。
『薄くてサラサラした紙はページめくりを快適に、印刷も見やすく、綺麗に裁断され、コンパクトにポケットに収まる』
「紙」であることを除けば、Kindleの宣伝文句とほとんど一緒。
こんな読みやすいのに、「なんでわざわざデジタルで?ねぇ」ってことになる。
しかし、「ものづくり日本」と言った瞬間に、日本では新たな “experience” は起きない。
なぜなら、「ものづくり」は既に起きた「○○化」の枠内にあるからだ。
ぶ厚い教科書や、紙がガサガサのペーパーバックしかない米国人にとって、Kindleは衝撃だ。それは「iPhone」のときと同じ。日本人は「みんな『iモード』じゃん」って思った。でも、そのとき米国のケータイは一世代前のままだった。
“experience” の10年後
日本のように目の前にあるモノを受け入れる文化と米国の新たなモノに気軽に乗り換える文化、どちらが優れているとか、遅れているという話ではない。そういうもんなんだろう。
ここ10年なぜ米国でインターネットのイノベーションが進むのか?なんでソニーがアップルの地位にいないのか?答えのヒントはそこにある。
日本人は「電化」後、「電化製品」をずっと改良し続けてきた。日本メーカーが「電器」の時代に成長したとき、米国のメーカーはもういなかった。
だから、いまから10年後日本メーカーが改良し続けた「デジタル化製品」で復活しているかもしれない。
志村一隆(シムラカズタカ)プロフィール
1991年早稲田大学卒業、第1期生としてWOWOWに入社。2001年モバイルコミュニティを広告ビジネスで運営するケータイWOWOWを設立、代表取 締役就任、業界の先駆けとなる。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年エモリー大学で MBA、2005年高知工科大学で博士号
『明日のテレビ-チャンネルが消える日-(朝日新書)』、『ネットテレビの衝撃(東洋経済新報社)』が絶賛発売中。ツイッターは zutaka
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