10・4【テレビ草創期の熱さはここに・・・「大炎上生テレビ」(高揚篇)】山脇伸介
「大炎上生テレビ オレにも言わせろ!」
プロデューサー 山脇伸介
9月29日(土)深夜0:45~2:15「大炎上生テレビ オレにも言わせろ!」の怒涛の生放送が終わった。番組には賛否両論のリアクションを頂いているが、個人的には「こんなに熱くて楽しい経験はなかった!」という一言に尽きる。おそらくテレビ草創期の制作現場は、こんな熱気にあふれていたんだろう。
「新しいことに挑戦しているという気概」「放送事故と背中合わせの危機感」そして「みんなでなんとか放送を終えた瞬間の達成感」。正に制作者にとって至福の時であったといっても過言ではなかった。
思えば、本番5日前のリハーサルでまさかのシステムトラブル。システムを担当するバスキュールでは、不眠不休のスタッフに加え、他プロジェクトの人員も緊急動員し、ロールテロップには17人が名を連ねる「非常事態」となった。
そして、本番前日のテストでシステムが動いた時の安堵感。とはいえ、テレビ視聴者が大量にインターネットに殺到した時に、サーバーが持ちこたえられるのか?というリスクはそのままだ。サーバーがダウンした時に出す画面もバスキュールが用意した。
「ツイッターぢゃあるまいし…」笑顔の中にも一抹の不安がよぎる・・・「な~に、命を取られるわけぢゃないんだから!」という吉橋制作プロデューサーの大声に、「あはは」とみんなでうなづく。あとは野となれだ!
9月29日(土)深夜0:15~。一足先に「ニコニコ生放送」の実況配信が、スタジオ前の廊下で始まった。サブ(副調整室)にも、ニコ生用の「俯瞰カメラ」が用意された。お調子者のスタッフがニコ生に乱入してテレビ番組の宣伝をすると、速攻で「弾幕」に書き込みが。「あの楳図かずおは誰?」。これには、サブでスタンバイしているスタッフも爆笑だった。
そのサブだが、4畳半程のスペースに20人以上のスタッフがギューギュー詰め状態。持ち込まれたパソコンは大小15台以上。5日前のテストで、電源が飛ぶというこちらも前代未聞の態勢。サブに入りきれなかったスタッフは、廊下にはみ出していた。
0:43、本番2分前にサブに緊張感が走った。
「このパソコン、動いてないぞ(泣)!」
「あわてるな!すぐにリセットしろ(怒)!!」
祈るような気持ちのまま、生放送が始まった。1分後、パソコンは無事に再起動し、大拍手!!その私たちにかぶさるように、カンニング竹山の切れギャグが聞こえてきた。あんなに心の底から笑ったのは、久しぶり。あのとき、私たちはまちがいなくテレビ草創期の“幸せの絶頂”を追体験していたのだと思う。
ツイートは、放送直前からものすごい量が押し寄せた。ツイッターをチェックするスタッフから悲鳴があがる。スタジオでも、ツイート紹介役の津田大介さんが「流れが速すぎて、読めません」。某公共放送ニュース番組の3倍は来ていたという。
合計4万4527ツィート。意外にも多くが好意的なものだったが、途中の「視聴者になにを聞きたい?」辺りからキビシイ内容が増え、後半は少し勢いが衰えた。
結果的に、番組ホームページで用意したスタンプとツイッターで番組に参加して下さった方は、のべ7万3127人。感謝の気持ちを込めて、5000人分のツイッターアカウントをエンディングで放送した。
一方、スタジオ前の廊下で別番組を配信していた「ニコニコ生放送」は、総来場者数4万9178人。 コメント数 6万513コメント。
ニコ生終了後のアンケートは、とても良かった(41.7%)、まぁまぁ良かった(39.3%)、あまり良くなかった(7.7%)、良くなかった(11.3%)。初回にしては、なかなかの好成績であった。
時に、辛辣な書き込みが先行する「ニコニコ動画」だが、比較的穏便なコメントが並んだ。ドワンゴの方に聞くと「新しいチャレンジには、ニコ動ファンもかなり寛容」なのだそうだ。
後半ちょっとグタグタになってしまったが、大混乱と大興奮の90分は終わった。繰り返すが、こんなにドキドキわくわくのオンエアは、20年を超えるテレビ人生でもめったにない経験だった。
しかし、「スタッフが楽しい番組は、視聴者に受け入れられない」という業界のことわざ(?)もある。次回は、平静に戻って「大反省生テレビ」を書きます・・・
山脇伸介(やまわきしんすけ)
1991年TBS入社。
朝昼の生情報番組やニュース番組のプロデューサーを経て、
2007年8月から1年間、ニューヨーク大学院(NYU)で「テレビとインターネットのこれから」について学ぶ。
帰国後、他局に先駆けてTwitterやFacebookの導入に尽力。
著書「Facebook 世界を征するソーシャルプラットフォーム」(ソフトバンク新書)
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