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20147/15

ついに公表された録画視聴率で遊んでみた

ビデオリサーチが、6月14日、録画視聴率を発表しました。厳密に言えば「タイムシフト視聴が多い番組一覧」です。
このようなデータは今まで出た事がないので、早速いろいろいじって遊んでみました。

プレスリリース
http://www.videor.co.jp/press/2014/140714.htm

主な調査結果
http://www.videor.co.jp/press/2014/140714_data.htm

調査エリアは、関東地区視聴率調査と同じエリアで、調査対象はテレビがある300世帯と4歳以上の家族全員(800人)。
ただし、そのうちタイムシフト視聴可能世帯は約78%です。つまりある番組を全世帯が録画し、全世帯が視聴したとしても100%にはならず、78%が上限ということになります。これらの世帯や家族が放送後7日以内に録画視聴した割合を調べています。

公開されたデータはこのような感じです。

スクリーンショット 2014-07-15 16.59.30

表が大きくて全部ではないのですが、番組名、放送局、放送曜日、放送開始時間、放送分数、放送回数、番組平均7日以内再生率(%)とデータが並んでいます。これを元に、いろいろいじって遊んでみました。

まず最初に全部で53番組が並んでいますが、これをドラマ、バラエティ、アニメ、映画、海外ドラマ、スポーツ、その他にジャンル分けして、どのジャンルが多く録画視聴されているか見てみました。
ただし、例えば単発ドラマは1本、レギュラードラマは放送回数が11回だったとしても1本と数えています。

スクリーンショット 2014-07-15 16.44.17

やはりドラマが4割以上と多く、次にバラエティ、アニメ、映画と続きます。放送されたドラマの本数とバラエティ番組の本数では、圧倒的にバラエティの方が多いので、ドラマがいかに多く録画視聴されているかわかります。

次に、各ジャンルの上位4番組の再生率(録画視聴率)の平均を比較してみました。

スクリーンショット 2014-07-15 17.14.36

ご覧のようにドラマが他のジャンルの2倍もあり、ドラマがいかに強いコンテンツかわかります。各局が展開中のオンデマンドサービスやパッケージビジネスでは、ドラマがキラーコンテンツだということがわかります。つまりドラマ枠が多い局、フジテレビやTBSにメリットが大きくなる訳です。

ではこの各ドラマの録画視聴率とリアルタイム視聴率はどうなっているのか、表にしてみました。

スクリーンショット 2014-07-15 17.24.04

小さくて見にくいのですが、クリックすれば拡大されます。眺めているだけでもなかなか面白いものがあります。
特徴と言えば、やはり単発ドラマは録画視聴率が低いこと。
放送視聴率に対し録画視聴がどれくらい行われているかを一番右の欄に加えてみました。
放送時間が遅いドラマの方が録画視聴されやすいという傾向があるようです。
それ以外にもいろいろポイントはありますが、大人の事情で自粛です。

ただ少なくとも、録画視聴のパワーは意外に高いことは一目瞭然です。
なにしろ今までは世論調査などで漠然としかわからなかった録画視聴の実態が明瞭に可視化されたことは、非常に意義深いものがあります。

また、朝日新聞デジタルに大変興味深い情報が載っていました。

ビデオリサーチによれば、録画再生中にCMを見ている割合は5割弱だという。

のです。
これは公表されたプレスリリースには出ていないので、独自取材によるものでしょうが、私はNHKの調査を元に、録画視聴をする人のうちCMを飛ばす人は7〜8割だと思っていました。この5割弱が、全体の5割弱だとすると、全体には100-78=22%の録画機を持っていない人も含まれるので、録画視聴をする人のうち、5割弱÷0.78=64%がCMを飛ばしていることになります。これまでよりCMは飛ばされていないことになり、テレビ局に関係するものとしてはうれしいデータです。

それにしても録画視聴、けっこうボディーブローみたいに、地上波テレビのビジネスモデルに効いてきてますね。何しろ今のところ、テレビ局はこの録画視聴から一銭もお金を稼げないでいるのですから。
そして逆に言えば、テレビ局がこのタイムシフト視聴の領域に乗り出せば、様々な可能性が一気に広がる事になります。これからのビジネスとしてのテレビからは目が離せませんよ。

氏家夏彦プロフィール
「あやぶろ」の編集長です。
テクノロジーとソーシャルメディアによる破壊的イノベーションで、テレビが、メディアが、社会が変わろうとしています。その未来をしっかり見極め、テレビが生き残る道を探っています。
1979年テレビ局入社。報道(カメラ、社会部、経済部、政治部、夕方ニュース副編集長)、バラエティ番組、情報番組のディレクター、プロデューサー、管理部門、経営企画局長、コンテンツ事業局長(インターネット・モバイル、VOD、CS放送、国内・海外コンテンツ販売、商品化・通販、DVD制作販売、アニメ制作、映画製作)、テレビ局系メディア総合研究所代表を経て2014年6月現職
テレビ局系関連企業2社の社長
放送批評懇談会機関誌「GALAC」編集委員

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