あやぶろ

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20151/15

中高生の動画視聴はかなり進んでいる

皆様、今年もよろしくお願いします。
昨年は環境の変化もあり、なかなか原稿をかけませんでしたが、今年は心を入れ替えて、もうちょっと更新頻度をあげていこうと思います。

正月休みの最終日、Yahoo!ニュースに興味深い記事が載りました。
「グラフ化してみる」ジャーナブロガーの不破雷蔵さんの記事です。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/fuwaraizo/20150104-00041957/
「中高生、ネット使って何してる!?」という記事なんですが、昨年12月に発表された、ベネッセ教育総合研究所の調査を取り上げ、独自にグラフ化しています。

私も元の「中高生のICT利用実態調査2014 報告書」にあたって、グラフ化してみました。

調査対象は、東京23区、地方中規模都市、郡部の全日制普通科の中学1年生から高校2年生で、調査時期は2014年2〜3月。

 

ほとんどの中・高生がネット利用

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中学生、高校生のほとんどがインターネットを利用しています。特に高校生はほぼ全員が利用していると言っていいでしょう。このインターネット利用はパソコンやスマートフォンなど、あらゆるデバイスを含みます。高校生にとっては、インターネットはテレビと同様に日常化しています。

 

高校生の利用デバイスはスマートフォン

ではスマートフォンとパソコンの利用割合はどうなっているかというのが次のグラフです。

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中学生は、パソコンからのアクセスの方が多いのですが、高校生になるとスマートフォンが圧倒的に多くなります。この項目の質問は「あなたはふだん、インターネットやメールをする時、何を使っていますか。(複数回答)」で、選択肢は他にも、携帯型音楽プレーヤー、ガラケー、ゲーム機、タブレット端末などありますが、スマートフォンとパソコンが他のものよりずっと多くなっています。インターネットの利用率の高さと合わせて考えると、ネットを使わない人も含めた全ての高校生の少なくとも8割以上がスマートフォンでインターネットを利用をしているのですから、まさに「スマホファースト」時代になっているのがよくわかります。

 

中学生も高校生もおよそ8割がネット動画をよく見ている

次はネットを利用する人に対して、「あなたはふだん、インターネットを使って、次のようなことをどれくらいしていますか」という質問の主な項目をピックアップしたものです。

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LINEなどチャットをする人が多いのは予想通りですが、動画を見るのもおよそ8割とかなり多くなっています。ネット動画を見るという行為は、中高生にとってごく普通のことになっているのがわかります。

そこで気になるのが、どれくらいの時間見ているのかです。1日の時間は限られていますから、テレビを見る時間が奪われている可能性もあります。

 

テレビとネット動画、視聴時間はテレビの方が長いけれど…

下のフラフは、1日にテレビとネット動画を見る時間を比較したものです。

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1時間以上見る人を比べると、中学生ではテレビは82.8%、ネット動画は29.2%。高校生ではテレビは68.3%、ネット動画は24.5%と、中・高生のネット動画を見る時間はテレビのおよそ35%となっていて、テレビはまだ強いメディアであるように見えます。

テレビは「ながら視聴」がやりやすいメディアです。例えばスマホでLINEやTwitterをやりながら見ることも最近は増えているようです。一方ネット動画は、ながら視聴はテレビより難しいでしょう。ですからネット利用が増えても、ながら視聴に支えられてテレビの視聴時間はそれほど減らないかもしれないとも考えられます。テレビの視聴時間が以前と比べてどうなのかが、知りたくなります。ところがこの調査は今年だけのものでした。そこで同じベネッセ教育総合研究所の過去の調査を調べてみたところ、2008年の調査で、テレビ(DVDも含む)視聴時間のデータがありました。

 

テレビの視聴時間はやはり減っている

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基準をそろえるために、テレビ視聴時間の30分以下に「見ない」も含まれています。調査方法はほぼ同じです。

これによりますと中学生のテレビ視聴時間は3時間くらい、4時間以上の長時間視聴がおよそ40%から27%に大きく減っています。高校生は2時間くらい以上がおよそ46%から36%へと減っています。一方、30分以下(「見ない」も含む)は中学生も高校生も増えています。

明らかにテレビの視聴時間は減っています。

 

テレビよりネット動画視聴時間が長い高校生はおよそ17%

また今年の調査は、ネット動画とテレビの視聴時間を比較してどちらが長いかという調査もしています。下のグラフのようになるのです。

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テレビ側からすると、まだまだテレビの視聴時間が長い人がずっと多いから大丈夫と考えるのか、それともネット動画がメディアとしての力をつけてきていると見るのか。インターネット動画とテレビだけを比べると、テレビはまだファーストスクリーンだと言えるでしょう。

しかし中高生はスマートフォンで、LINEなどのチャットもするし、情報も得るし、ゲームもします。ファーストスクリーンは誰のものという議論はさておき、少なくとも放送としてのテレビは、いくつものインターネット・サービスと同列に置かれた、サービスの中の一つになってしまったということは、言えるのではないでしょうか。

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