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20183/31

大坂ブーム到来。「DAZN」の会員数を推計してみた

女子テニスの大坂なおみちゃんの試合が見たいばかりにDAZNに入ってしまいました。ところで会員数はどれくらいなのだろうと思って調べたら公開されたデータがないので推計したら150万人だったことをNewsPicksでコメントしたら、佐々木編集長から記事に書いてくれませんかとのリクエストがありました。という訳でNewsPicksに寄稿した記事をあやぶろにもアップします。

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Jリーグの配信権獲得、大坂なおみ選手の試合の配信などで、会員数を増やす動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」。その会員数と今後のポテンシャルをメディアコンサルタントの氏家夏彦氏が分析する(全2回)。

きっかけは、大坂なおみ選手

3月19日にNTTドコモは「DAZN for docomo」の会員数がサービス開始約1年で100万を突破したと発表しました

スポーツ専門の動画配信サービス、DAZN(ダゾーン)は月額1750円のSVOD(定額制動画配信)ですが、ドコモのユーザーは月額980円で利用できる仕組みになっています。

では、DAZNの会員は、DAZN for docomoの会員も含めて、どれぐらいいるのでしょうか。

DAZNはその数字を公表していませんが、2018年3月下旬でのDAZNの会員数はおよそ150万人と推計します。

今回、こんな推計をすることになったきっかけは大坂なおみ選手です。

テニスの大坂なおみ選手が、米国インディアンウェルズで行われたBNPパリバ・オープンに優勝し大きなニュースになりました。この大会はグランドスラム(4大大会)に次ぐ大きな大会です。

この大会の男子の試合はスカパーのGAORAで見られるのですが、錦織圭選手は大会直前に風邪をこじらせて棄権してしまいました。

ほかに、西岡良仁選手も、杉田祐一選手も1回戦で敗れてしまい、2回戦でジョコビッチに勝利したダニエル太郎選手も3回戦で負けてしまいました。日本人男子はこれで全員敗退です。

となると注目は、初戦で元世界ランク1位のシャラポワにストレート勝ちした大坂なおみ選手です。

もう我慢の限界

ところが、この大会の女子シングルスの試合を見られるのは有料配信のDAZNだけです。我が家では、テニスを見るためにGAORAが入っているケーブルテレビのJ:COMを契約し、グランドスラムを見るためにWOWOWを契約しているのですが、動画配信サービスは、NetflixとAmazonプライム・ビデオだけです。何しろDAZNは月額1750円と高額ですから。

仕方がないので、大坂選手の試合はリアルタイムで更新されるスコアだけをフォローしていました。すると2回戦でなんと元世界ランク2位のラドワンスカをストレートで破ってしまったのです。

その後も大坂選手は快進撃を続け、準々決勝で元世界ランク1位のプリスコバにもストレート勝ちしてしまいました。

そこでもう我慢の限界です。DAZNと契約しました。幸いなことに初月は無料です。この大会だけ見たら有料になる前に解約してしまえばいいと、セコイことを考えていました。

ところが大坂選手は準決勝で、これまで3連敗で一度も勝てなかった現在の世界ランク1位のハレプにストレートで勝利したのです。そして決勝では同じ二十歳で、大会前に股抜きショットを教えてもらった仲の良いカサキナと対戦し、またもやストレートで勝ち、初優勝してしまったのです。この時の爆笑優勝スピーチはテレビでも何度も取り上げられました。

今、テニス界では大坂選手は注目の的です。次はどこまで勝ち進むのか、みんなが固唾を飲んで見守っています。

もう次の大会、マイアミオープンは始まっていますが、女子シングルスはDAZNでしか見られません。大会2日目に大坂選手は、憧れの女王セリーナ・ウィリアムズにストレート勝利しました。2回戦で今大会第4シードのエリナ・スビトリナに敗れましたが、今後に期待を抱かせる内容でした。

この大会はなんとか無料期間中に終わりますが、またすぐに次の大会が始まります。このままいくと月額1750円を払うことになってしまいそうです。

凄まじい財力

今回の記事はここまでがイントロです。

今回、初めてDAZNの恐ろしさを感じました。1年半前にDAZNがサービスを開始した時、「どうせ大したことはないだろう」と思っていました。

DAZNを運営するパフォーム・グループはスポーツ賭博用の動画配信プラットフォームで安定収入を得ているとのことで、賭博に厳しい日本ではそんなに流行らないだろうと高をくくっていたのです。

しかしNetflixと同じで、グローバル・プラットフォーム企業の財力は凄まじいものがあります。日本での赤字などではビクともしません。そういえばNetflixもお金に糸目はつけず、日本の良質アニメの独占配信権を買いまくり、オリジナル作品にもどんどん投資していました。

DAZNはWTA(女子テニス協会)の女子テニスの大会で、10年間5億ドルの契約をしているそうですから、大坂選手を応援するのであれば、DAZNの契約は止めるわけにはいきません。

でも私のような立場に立たされた人間はそうはいないだろう、DAZNの会員数もどうせ数十万人程度だろうと思い、調べてみました。ところが断片的な情報ばかりで現在の会員数がよくわからないのです。

同じような疑問を持った方がいて、「DAZNの契約者数について(もちろん調べてみた)」というブログを書いていました。

これを参考に現在の会員数を推計してみました。

会員は150万突破か

現時点で判明している情報は以下のとおりです。

・DAZNのサービススタートは2016年8月23日。ドコモのユーザー向けのDAZN for docomoは2017年2月15日に始まっている。

・3月17日に、ロイターが「DAZNが順調に加入者数を伸ばしている。起爆剤となったのはNTTドコモとの提携で、加入者は30万件を突破したもようだ」と報じている。

・ドコモの2016年度決算説明会資料で、「3月末時点で36万契約」と発表。

・2017年4月27日のJリーグの理事会後に村井満チェアマンが記者会見で、「全体の数字については非公表ですが、ドコモ経由だけで45万人」と話す(Jウォッチャー記事より)

・2017年6月30日、村井チェアマンとNTTドコモの吉澤社長の会見で、吉澤社長が「会員数も55万を超えまして、大変人気のサービスになっています」と発言(Jウォッチャー記事より)。

・2017年8月29日、DAZNのラシュトンCEOが記者会見で、日本でのサービス開始から1年で会員数が100万人を超えたことを発表。ここで初めてDAZN全体の会員数情報が判明した。

・直近の2018年3月19日、ドコモが、DAZN for docomoの会員数が100万人を突破したと発表。

以上のデータから現在の会員数を推計します。

8月29日のドコモの会員数を推計できれば、3月19日現在のトータル会員数が推計できます。まず、ドコモの会員数の推移をグラフにしました。

次に8月29日にどんな数字を入れればスムースなラインが引けるか、いくつか数字を試したところ、65万人あたりがちょうど良さそうでした。

昨年8月29日時点で、トータル100万人のうちDAZN for docomo の会員数は65万人と推計されます。この割合で今年3月19日のトータル会員数を計算すると、「100万人×(100万人÷65万人)=153.8万人」となります。

 

スタートして1年半で有料会員数150万人はかなりの勢いです。改めてスポーツのキラーコンテンツぶりに驚きました。

それにしても月1750円は高い。今、auユーザーの私は、DAZNの割引プランに入るために、ドコモへの乗り換えを考え始めています。弱みに付け込まれた感じはしますが、仕方ありません。J:COMをやめることも考えたほうがよさそうです。

私の推測によると、150万ユーザーに達したとみられるDAZN。では今後、どこまで伸びるポテンシャルがあるのか?明日の原稿では、DAZNのこれからと課題、ライバルについて考えたいと思います。

※後編の「DAZNはどこまで伸びるのか?」に続く

 

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