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20183/26

J-WAVEに出演しました

先週3月22日木曜、ラジオのJ-WAVE、STEP ONEという番組のPICK ONEというコーナーに出演しました。昨年の8月以来、2回目です。

今回とりあげた記事は、3月6日にトラベルボイスというサイトに載った「動画アプリの利用時間が2年間で1.4倍に」という記事です。

この記事は、ジャストシステムという会社が調査したデータの紹介記事です。
これが記事の中に出ていたグラフです。

今日は、ラジオでグラフを説明するという難しいことに挑戦します。

いろんなスマホのアプリの利用時間が2年間でどれくらい増えたかを調べたものです。ゲームや動画、SNS、ショッピングなどジャンル別に、去年の12月と2年前の利用時間が棒グラフになって並んでいますが、いまいち見にくいですよね。

そこでちょっと手を入れたのがこっちのグラフです。

 

それぞれのジャンルが2年間で何倍になったかを付け加えました。
すると動画アプリが1.4倍、次がショッピングアプリで1.37倍、ゲームアプリが1.3倍などとなっています。
どのアプリも伸びているのですが、動画アプリが一番増えています。NetflixやAmazonプライム・ビデオがスタートしたのが2年ちょっと前ですから、増えて当然ですね。

この調査では他にも、どんな動画配信サービスがどれくらい使われているかという調査もしています。それがこれですが、数字がぎっしり並んでいるのでなんだかよくわかりませんよね。

そこで、この中から重要な数字だけを抜き出してグラフにしたのがこれです。

Amazonプライム・ビデオ、GyaO!、Hulu、Netflixの利用率を、男女別、年代別に調べたものです。
Amazonが一番使われていますが、どのサービスも男性の方がよく使っているのがわかります。
Amazonは、10代から60代までほぼ20%の人が使っています。

女性は10%前後です。GyaO!も世代によるばらつきが少ないのですが、HuluとNetflixは世代によって使われ方が全然違います。
両者とも男性は10代が飛び抜けて高く、次が20代、それ以上はどんどん減っています。
女性はHuluもNetflixもなぜか10代が少なく20代が多くそれ以上は少ないという形です。

使われ方は随分違うし、意外に多くの人が動画配信サービスを使っているので驚きました。

Q:これだけネット動画が見られていると、テレビは厳しいのではないですか?

確かに非常に厳しいですね。実はこの10年以上の間、テレビの視聴率は下がり続けています。

これは前回、去年の8月にこの番組でちょっと話したことでもあるのですが、それをグラフで見てみましょう。このグラフを見てください。

2005年度から2017年度の第3Qつまり12月末までの12年間の、NHKと民放5局のゴールデンタイムの局別の年度平均視聴率の推移です。

赤の点線が全局平均ですが、12.1%が9.7%まで下がっています。下落率は2割です。全体的に下がっていますが、特にオレンジ色のフジテレビの下落率は45%と、半分近くまで下がっています。

ただ今年度は少なくとも12月末まではフジテレビは健闘していて、残り3ヶ月で頑張れば、下げ止まるかもしれません。まもなく4月2日(月)には判明します。

絶好調と言われている日テレも、下がっていないだけで、上がってはいません。
一時期、好調だったテレ朝はこの5年ほど下がり続けていて、今年度はTBSに抜かれるかもしれません。

視聴率が下がり続けるというきつい状況の中で、さらに最近ではネットに繋いだテレビで動画を見る人が増えてきました。
直近のデータでは、家庭のテレビの3台に1台がネットに繋がっていて、今もそういうテレビが増え続けています。
東京オリンピックまでには、7割くらいのテレビがネットにつながるのではないかとも言われています。
ですからこれからも視聴率は下がり続けていくのをテレビ局は覚悟しなければいけないでしょう。

 Q:視聴率がこんなに下がるとテレビ局の経営も苦しくなるのではないですか?

そう思われるのは当然ですが、実は視聴率は下がっているのに、テレビ局のCM収入は増えているという不思議な現象があります。

このグラフは、在京キー局5社のCM収入の合計と全日視聴率の合計が、2005年度を1として、どのように変化しているのかを表したものです。

グレーの棒グラフがCM収入、黄色の折れ線が視聴率です。
CM収入は、2008年に起きたリーマンショックの影響で、ガクッと下がり、2009年度には0.8近くまで下がりました。
しかしそこで踏みとどまって、そのあとはジワジワと増えています。ここ数年はほぼ同じ水準ですが、一方、視聴率は下がりっぱなしです。
これは不思議ですよね。

そこで次のグラフです。

視聴率1%あたりのCM収入の変化を、グラフに加えました。
これは言い換えれば、CMの値段の変化です。

この赤いラインが視聴率1%あたりのCM収入です。

2006年度のピークから2009年度まで一気に落ち込んだあと、V字回復して上昇を続けていますね。そして2014年度には2006年度のピークに並び、その後も上昇しています。

視聴率は下がり続け、動画配信サービスには押され、若い人はテレビよりスマホを使うようになっていて、テレビはオワコンだなどと何年も前から言われているのに、CMの値段は上がり続けています。

Q:なぜ、視聴率は落ちているのに、広告費は上がっている?

理由は、幾つもの要因が複合的に絡んでいて、単純ではないと思いますが、一つには、企業の広告費が景気に連動しているからだと思います。

次のグラフを見てください。

名目GDPを、2005年度を1としてその変化を加えたものです。
青いラインが名目GDPの変化です。

視聴率1%あたりのCM収入の変化と、ほぼ同じように動いています。CM収入の方が、下がるときは大きく下がり、上がるときは大きく上がる、つまり変動が激しいですが、上下のタイミングはほぼ同じです。

それなら視聴率が下がっても大丈夫かというと、そんなことはありません。
2020年の東京オリンピックの後に、景気の崖がくると言われています。その時、バブル状態になったテレビCMの値段はどうなるでしょう。視聴率は下がるし、CM収入も下がるという最悪の状態になるかもしれません。

Q:ネット動画には押されるし、視聴率は下がり続けるし、TVはどうすればいい

大きく分けると、2種類の対処の仕方があります。

一つは媒体価値を上げることです。テレビはCMを売っている、つまり時間を売っていることになります。だから単位時間あたりの広告の価値が高まるような工夫をすればいいのです。

もう一つは、コンテンツ制作力を活かすことです。

それぞれ具体的には色々あるのですが、今日は時間がありませんからまたの機会にお話ししましょう。

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