
快進撃。「DAZN」はどこまで伸びるのか?
NewsPicksに寄稿した記事の後編です。
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Jリーグの配信権獲得、大坂なおみ選手の試合の配信などで、会員数を増やす動画配信サービス「DAZN(ダゾーン)」。その会員数と今後のポテンシャルをメディアコンサルタントの氏家夏彦氏が分析する(全2回)。
前編:大坂なおみ・ブーム到来。「DAZN」の会員数を推計してみた
スポナビライブとの集約効果
後編では、150万程度にまで会員を増やしたと推測できるDAZN(ダゾーン)がどこまで成長できるのか。それを予測してみます。
「どこまで伸びるか」は2つの要因から類推できるはずです。
ひとつは「スポナビライブとの集約効果」であり、もうひとつは「テニスブームの上乗せ効果」です。
1つ目の要因は、ソフトバンクのスポナビライブのスポーツコンテンツが5月からDAZNに集約されることです。
スポナビライブは日本の数少ないスポーツ専門配信サービスとしてDAZNと共に存在していました。
しかし今年2月、スポナビライブで提供するコンテンツをDAZNに集約し、スポナビライブは5月でサービスを終了すると発表されました。全てのコンテンツがDAZNに移されるとすると、DAZNのコンテンツは非常に充実したものになります。
たとえば、両サービスには以下のような違いがありました。
<サッカー>
【DAZN】
・英国のプレミアリーグは各節、最大で5試合
・スペインのリーガ・エスパニョーラは各節、最大で5試合
【スポナビライブ】
・両リーグとも全試合を配信
<日本のプロ野球>
【DAZN】
・横浜DeNAベイスターズ、広島東洋カープのホームゲームのみ
【スポナビライブ】
・読売ジャイアンツ、広島東洋カープを除く、10球団の試合
<テニス>
【DAZN】
・男子テニスATP250シリーズの限られたイベント
・女子テニスWTA Internationalの準々決勝、準決勝、決勝と日本人選手
・WTA Premierの全大会で準々決勝、準決勝、決勝と日本人選手
【スポナビライブ】
・男子テニスATP250シリーズ15大会(全40大会中)
・ATP500シリーズ12大会(全13大会中)
・ATPマスターズ1000を9大会(全大会)
・ATPファイナルズグランドスラム
・全豪オープンテニス
つまり、両サービスが統合されると、サッカーはJリーグに加えて、プレミアリーグ、リーガエスパニョーラが全試合見れるようになる見込みです(さらに来期からは欧州チャンピオンズリーグの配信も始まります)。
プロ野球についてはすでに、今年から読売ジャイアンツを除く11球団の主催試合をライブ中継することを発表しています。
テニスについても、男子、女子ともに、多くの大会がカバーされます。
さらに、スポナビライブで行われていた、バスケットボールのB1リーグ、B2リーグの全試合配信もDAZNで始まります。
こうしてスポナビライブのコンテンツがDAZNに集約されると、DAZNの弱みを一気に補強することになります。会員もスポナビからDAZNに移ってくるので、一気に増えることになるでしょう。
ではスポナビの会員数はどれくらいかというと、明確なデータはありませんが、「App Ape Lab.」というサイトが1年前に「Jリーグとプロ野球、女性ファンが多いのはどっち?Jリーグ独占放送のDAZN(ダゾーン)がスポナビライブの利用者数を抜く」という記事を掲載していました。
この記事によると、2017年の2月にDAZNのMAUがスポナビライブを抜いたというのです。
2月はスポナビライブの得意なプロ野球が始まる前なので、4月以降になれば利用者はもっと増えるはずですが、昨年2月時点でのDAZNの会員数は前述の「DAZN for docomo」のグラフから計算するとおよそ30万人くらいになるでしょう。
この1年間でスポナビライブも会員数獲得に努力してきましたから、現在では最低でも30万人、その後のDAZNの伸びを参考にすれば、ごく少なめに見ても50万人はいるのではないでしょうか。
テニスブームの効果はいかに?
将来の会員数の伸びを予測するにあたり、もう1つ大事な要因は、女子テニスの盛り上がりです。
錦織選手が2014年9月に全米オープンでマレー、ジョコビッチを破って決勝に進出した時、放送権を持っていたWOWOWの加入者は激増しました。
私もその時にWOWOWに加入したのですが、申し込みの電話がなかなか繋がらず、やっと繋がったと思ったら、オペレーターの男性が激しく疲れ切っている声だったので「大変ですか?」と聞くと「ありがたいことなんですが、ものすごく大変です!」と答えたのをいまだに覚えています。
WOWOWのHPの加入件数推移という資料を見ると、確かに2014年9月の新規加入件数は約15万3000件あまり。その前後合わせて5年の平均は4万8000件あまり。つまり10万件以上がテニスの影響だと考えても良さそうです。また2014年10月以降の解約件数が特に増えている様子もありません。
錦織選手の活躍でWOWOWに起きたようなことが大坂選手の大活躍でDAZNにも起きるとすると、10万人規模の会員増が予測できます。
次のグランドスラムは5〜6月の全仏オープン、6〜7月のウィンブルドン、そして8〜9月の全米オープンです。
今の大坂選手の調子からすると、グランドスラムのどの大会で優勝してもおかしくありませんし、どの大会でも優勝に絡んで来る活躍をするでしょう。
テレビを始め、あらゆるメディアで大盛り上がりします。ものすごいブームが来る可能性も高いと思います。
会員500万人を狙えるのか
そこで最後に、DAZNの会員数がどこまで伸びるかですが、スポナビライブのコンテンツ集約によって増える分と合わせると、現在の150万人の会員数はおそらく軽く200万人を超えるでしょう。
さらに大坂ブームの上乗せ効果です。
グランドスラムはWOWOWが放送権を持っているはずなのですが、グランドスラムの後で大坂選手を応援したいという人は、その他のWTAの大会を見る可能性が高い。これらの大会が見れるのはDAZNだけです。
WOWOWでもGAORAでも、テニスの放送のチャンスは増え、放送時間も長くなっています。
今は男子も女子もマイアミでの大会が繰り広げられていますが、男子についてはGAORAが連日、夜中の0時から午前8時までという長時間放送をしています。これまでのテニスの放送時間より明らかに長くなっています。
これはテニスというコンテンツが新規加入者確保に効果が明らかにあるからです。DAZNでもテニスのライブ配信にさらに力を入れていくのは当然です。
それによる会員数増の上乗せがどれくらいあるでしょう。10万人でしょうか、20万人でしょうか。それを合わせれば200数十万人はいくでしょう。
日経×TECHの昨年11月に「100万人が同時視聴 「DAZN」に見るネット配信の未来」という記事の中で、DAZNを運営する英国Perform Group CTO(最高技術責任者)はこう述べています。
「2019年には日本でラグビーW杯が開催される。DAZNは日本のトップリーグやワールドラグビーセブンズ(7人制の国際大会)などラグビーの試合をかなり扱っており、現在よりラグビーに興味を持つ人は増えると見ている。同時視聴者で数百万人への拡張は、当社だけでなくAkamai社にも共通した課題と考えている」と述べています。
確かにこれからラグビーWカップや東京オリンピックなどスポーツの盛り上がりは確実に来ると予想できます。インタビューにある「同時視聴で数百万人」となるためには、少なくとも会員数はそれよりかなり多いと予想していると思われます。
結論としては、DAZNの会員数は数年の間に300万人を超えていくのではないでしょうか。
そして冬季オリンピックで一躍話題になったカーリングなど、これまでマイナーだったスポーツも取り込んで、DAZNへのスポーツコンテンツの集約がさらに進むことも予想できます。
これはユーザーとしてみれば、とてもありがたいことです。他をやめてDAZNだけにすればいいのですから。
月額1750円は高いですが、それさえ払えばあらゆるスポーツコンテンツが楽しめるとなると、ますます会員は増えるでしょう。となると400万人、500万人と増えていく可能性もないとは言い切れません。
日本の多くの世帯にDAZNが入っているのが当たり前になる――そんな時代がやってくるのかもしれません。

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