今年、テレビ局は大きく変わる
いきなりだが、今年、テレビ局が大きく変わるような予感がする。
年明け早々、各テレビ局はこれまでになかった画期的な動きを見せた。
民放5社の配信番組、見放題パック
あやぶろ執筆者の境治さんもご自身のプログや「あやとりブログ」で書かれているが、1月7日、民放5社とNHKの番組を配信するサービス「もっとTV」が、月額900円で番組見放題パックという新たなサービスを開始した。
これまでのオンデマンドサービスは局ごとに別々のサイトで提供されており、まとまってサービスを提供している「もっとTV」でも、局をまたいでのサブスクライブは存在しなかった。
まだこのサービスを受けられるデバイスは限られているし、各局が提供している番組も、局のVODサイトと比べると数ははるかに少ないが、どの局の番組を見ても月に900円というのは、ありそうでなかった画期的なサービスなのだ。
これまでこの「あやとりブログ」の『テレビの未来』シリーズで何度も書いてきたが、どのテレビ局であっても、単独では多くのユーザーを集められるようなサービスを提供できる力はない。
もちろんテレビのリーチ力(多くの人に一気に情報を伝達する力)は、ネットを含めたどんなメディアより圧倒的に優れている。しかし多くのユーザーを集めることは全く別問題だ。各局はこれまでにも様々なネット連動番組を試してきた。しかしインターネット・サービスサイトとしてビジネスが成立するようなユーザー数は集められなかった。私自身もいくつかのネット連動番組で独自サイトを作りユーザーを誘導しようとしたが、ことごとく失敗した。
唯一、事業として成立しているのは、番組を有料配信するオンデマンドだが、今回は述べないが実はこれにもいろいろな問題がある。
改めて強調するが、テレビ番組を視聴するという行為と、インターネット・サービスを利用するという行為は、全く別物だ。
インターネット上のサービスとして圧倒的に魅力的であり、ちょっと覗いてみたい程度ではなく、是非使いたい!とユーザーに思わせるようなサービスは、各テレビ局が足並みをそろえて、同じプラットフォーム上で大展開する程のインパクトがないと成立しない。
しかしテレビ局同士は半世紀以上もの間、テレビ広告費というパイを奪い合う熾烈な競争を繰り広げてきた。他局との協調など、本能的に最も嫌ってしまう。だからこれがどんなに必要でも、そう簡単には実現しないだろうと思っていた。ところが、動画配信という新たな市場で意外にも早く「同一プラットフォーム上での全局の動画配信」が実現した。恐らくこの程度の規模、品揃えでは多くのユーザーを集めるのは難しいだろうが、協調するのが苦手な民放キー局が足並みをそろえて、サービスを提供したことに大きな意義があるのだ。
これによってテレビの未来は、明るい方に向かって確かな一歩を踏み出した。
メタデータで民放5社がMデータ社と資本提携
さらに先週、こんなニュースも飛び込んできた。
在京キー局5社と2大広告代理店が、テレビメタデータを事業としているMデータ社と資本提携した。
http://www.mdata.tv/release/20140116mdata_release.pdf
テレビのメタデータの重要性については、「あやとりブログ」でも何度も書いてきた。よく読んでおられるユーザーにとっては、耳たこだろうと思うので、詳しくは省略し、あやとりブログに掲載した関連のあるポストへのリンク集を書いておく。
http://ayablog.com/old/?s=%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF
実はこのメタデータも各局が足並みをそろえなければ、本当の威力は全く発揮できない。
メタデータはこれから確実に普及するスマートテレビや、全番組録画機にとって必要不可欠なものだ。テレビとインターネットを繋ぐ最も重要な情報だからだ。ところがこのメタデータも、一つの放送局が単独で提供しても利用価値は極めて少ない。
これは当然のことだ。メタデータは新聞のテレビ欄に例えられる。テレビ欄がテレビ局ごとに別々のページに掲載されたとしたらどうだろう。不便どころか、とても使えたものではない。全局が一覧できるからこそテレビ欄には価値がある。メタデータも同様で一つのプラットフォーム上で、全局のデータが同じ仕様(UI)で使えてこそ、利用価値がある。
Mデータ社との資本提携についても、どこかのテレビ局が単独でやっても、ほとんど意味はない。
協調が苦手な各キー局がよくぞ足並みを揃えたものだと感心する。1年以上前から、メタデータの重要性と、テレビ各局が合同でプラットフォームを構築する必要性について何度も書いてきた自分としては、それがどれだけ大変なことかをわかっているからこそ、本当に素晴らしいことだと感じている。
ところが、テレビ局が変わる兆しはこれだけではないのだ。
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