今年、テレビ局は大きく変わる
今までとは違う去年一年のテレビ各社の動き
「民放5社の番組見放題パック」も「Mデータ社との共同資本提携」も、これまでのテレビ局の発想や行動から見ると、非常に大きく飛躍しているが、テレビ局の変化はそれだけではない。
この1年間の各局のネット連動番組の取り組みを見ると、かつてとは明らかに違って、えらく本腰が入っているのだ。
これまでのネットとテレビの連動番組は、深夜枠で申し訳程度に行われてきた。それも局の方針というより、面白がり好きの制作者が、テレビとネットの連動に批判的な様々な障害をすり抜ける形で何とか成立させた、ゲリラ的な番組がほとんどだった。
しかし昨年は、TBSでは、『リアル脱出ゲームTV』というセカンドスクリーンを利用した視聴者参加型ドラマ形式のクイズ番組を4回放送した。また昨年暮れには『マッチング・ラブ』という史上初の視聴者参加型恋愛マッチング番組を放送した。
フジテレビは、『テラスハウス』というインターネットと全面的に連動させたレギュラー番組を放送している。
日テレは、JoinTVという、テレビとSNSを組み合わせたソーシャルエンターテインメントサービスを開始し、『金曜ロードショー』など様々な番組で利用している。
ここまで大きな動きは組織的にしっかり方向付けされない限り実現できない。つまりテレビ局の経営判断として、明確に認識されたチャレンジなのだ。
先を行く日テレ
そしてさらに日テレでは、1月11日から「いつでもどこでもキャンペーン」と称して、新作ドラマやミニ番組の放送後1週間無料配信サービスを開始した。
各テレビ局にとっては、放送直後の有料ドラマ配信は、既に重要な収入源となっている。それを無料でやってしまおうというのだから、非常に大胆な決断だと言える。
考え方は、「ドラマを一度見逃した人が、そのまま見なくなってしまうより、無料配信で見てもらい、再びリアル放送に戻ってきてもらう」ことを狙ったものだろう。
これについても「あやとりブログ」では、境治さんがそのままのことを提案しているのをはじめ、いろいろな方が論じてこられた。
特に、在英ジャーナリストの小林恭子(ぎんこ)さんによる『英国の大手テレビ局のデジタル化とは』では、ネットを使ったテレビ局のサービスとして、日本の未来をいち早く実現しているような英国の現状が報告されている。BBCや民放全局が、無料の見逃し番組配信サービスを実施しており、日本もいずれ・・・という予感を感じさせた。
それがたとえ1局だけで番組数は少ないとはいえ、遂に日本でも実現されたことの意義は大きい。
こうした各局の新しいチャレンジによっては、すぐに視聴率が上がるなどという訳ではないが、視聴率と単純に結びつけて考えること自体が間違いだし、かつてと同じ発想、価値観で視聴率がどうのこうのという前に、むしろテレビ離れという現象を深刻に受止めるべきだ。
このテレビ離れ現象については、未だに懐疑的な意見も見受けられるので、これをテーマにして別のポストを書こうと思っている。
今年、テレビ局は大きく変わる
テレビ局が今までとは明らかに次元の異なる積極さで新たな試みに次々乗り出しているのは、テレビ離れという現象や、視聴率では捉えきれないテレビ環境の変化、そしてテレビもネットも含めたメディア全体が新たな時代に急激な速度で移行しようとしている事実を、テレビ局の経営レベルが正面から認識し、それに対する危機感を持ったことの現れだと解釈したい。
この解釈が正しいとすると、このポストのタイトル「今年、テレビ局は大きく変わる」は実現されことになる。
テレビ局が「明るい未来」を実現するために大きく変わるのを、期待する(し、尽力もしたい)。
氏家夏彦プロフィール
TBSメディア総合研究所代表、「あやとりブログ」の編集長です。
テクノロジーとソーシャルメディアによる破壊的イノベーションで、テレビが、メディアが、社会が変わろうとしています。その未来をしっかり見極め、テレビが生き残る道を探っています。
1979年TBS入社。報道(カメラ、社会部、経済部、政治部、夕方ニュースの副編集長)・バラエティ番組、情報番組のディレクター&プロデューサー・管理部門・経営企画局長・コンテンツ事業局長(放送外事業…インターネット・モバイル、VOD、CS放送、国内・海外コンテンツ販売、商品化・通販、DVD制作販売、アニメ制作、映画製作)
2010年現職(株式会社TBSメディア総合研究所 代表取締役社長)
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