あやぶろ/OLD

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20133/19

テレビがネットに繋がる効果は意外に大きい!?

テレビの新しい可能性

 

ソーシャルメディアという双方向のコミュニケーションが極限まで高められた環境の中で、今のテレビの悩みは、番組を視聴者に一方的に送りつけることしかできないというコミュニケーションの欠落だ。視聴者はユーザーとなり、自分の問いかけに何らか応えてくれないと面白いと感じなくなってしまっている。それなのに番組制作者はテレビの向こう側にどんな人がいるのかほとんどわからない。たったひとつの手がかりは視聴率だが、その視聴率からわかるのは、性別・年代別にだいたい何%の人が番組を見ているかだけだ。

 

そんなテレビが今、実現したくてたまらないのは視聴者と仲良くなること。一人一人とのリレーションシップを強くすること。そのため各局は様々なソーシャル連動を実験し、新たなテレビの可能性や、視聴率以外の指標の可能性を探している。

 

そんな折り、ダイレクトマーケティングのセミナーに参加し、大いに触発された。今回もテレビの新たな可能性について書いてみる。

 

 

 

テレビなどのマスにはない、1to1のマーケティングの精緻さ

 

このセミナーでまず驚いたのが、ZOZOTOWNを運営しているスタートトゥデイ社の清水俊明さんの講演だ。

 

ZOZOTOWNのダイレクトマーケティングは、CFM(Customer Friendship Management)と呼ぶのだそうだ。かつてはCRM(Customer Relationship Management)と呼んでいたが、テレビCMを打ったら会員数が急増した時、前澤社長が「数だけ増えてもお客様との強い結びつきがなければだめだ」ということで「顧客との関係」ではなく「顧客との友達関係」という意味で、CFMを2年前に提唱した。
ZOZOTOWNは「ファッション好きの人たちと仲良くなりたい」と思っており、そのために「おもてなし」の感覚を大切にしているそうだ。

 

一人一人の日々の行動や心の変化を見逃さず、もらさず記録するマーケティング用データベースを作り、顧客一人一人に合ったZOZOTOWNならではという気配りや思いやりを創造し「おもてなし」をする、つまり顧客との濃密なコミュニケーションを非常に重視している。
現在500万人いる会員と非常に丁寧な個別のコミュニケーションを確立するために、例えばこちらからのメッセージを、会員が聞きたいタイミングで届けるような工夫をしている。

 

誕生日や結婚記念日などライフサイクルベースのプッシュは一般的だが、ZOZOTOWNは客のイベントによって発生するプッシュのチャンスを生かすのだ。例えば、ユーザーが住所変更した時や、プレゼント用のギフトキットを購入したタイミングを重視する。そして送るメールも単なる「お薦め商品」の紹介だけでなく、ギフトキットを買った会員には、きれいなリボンの結び方、Tシャツを買った会員には、上手なTシャツの荒い方、保存の仕方などをメールでお知らせする。Tシャツが長持ちすれば次の購入の機会が遅くなってしまうが、単なる売上ではなく会員との友達関係の強化を重視している。
また、ユーザーがメールを受け取ってすぐ開封するのか、それとも数日後に開封するのかによって、メールを送る頻度や内容を変える工夫もしている。そして3〜5年かけて、ZOZOTOWNとユーザーの密接な友達関係を築き上げるそうだ。

 

この丁寧すぎるとも思える程のコミュニケーションを、500万人の会員を対象に実現しているシステムが凄い。
従来のダイレクトマーケティングは、できるだけ多くの人にメールを送るという方法だが、これではコンバージョン率(CVR)は0.1%〜5%。しかしZOZOTOWNのきめ細かな手法だと3〜20%と、はるかに向上するそうだ。

 

これをテレビにも応用できたらいいなぁ、などと考えながら聞いていた

 

 

 

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