あやぶろ/OLD

テレビの中の人による唯一のテレビ論、メディア論ブログ

© あやぶろ/OLD All rights reserved.

20133/18

● 丸と線(志村一隆)

志村①

プロフェッサー安藤氏とハリー杉山さん。どっかで見たことあるなぁと思ってたら「5時に夢中!」に出てた人だ!(2013年3月14日記者発表会)

志村②

テレビ見てないときも「日本テレビ(番組?)」に関心持ってもらう

志村③

NHK文研春の研究会にて(2013年3月15日千代田会館)

線から丸

日本テレビの「JoinTV」。
新たな展開があると聞いたので発表会に行ってみた。
「OnAir(放送中)」だけでなく「OffAir(放送後)」もファン交流の仕掛けが用意される。
両方とも頭文字が「O」だし、これってバズワード「O2O」のテレビ的解釈?オモシローイ。(「O2O」の説明は省略)
その翌日、今度はNHK文研春のシンポジウムで日本テレビの方が「JoinTV」についてプレゼンしていた。
それを見ていて、そういえば昨日のスライドも「丸」を使ってるなぁ。と気付き、あることを思い出した。
それは、アメリカNBCの360°っていう戦略。「360度」=「丸」です。
彼らは2007年(もう6年も前か)に、「テレビ」が真ん中じゃなくて、人のまわりに「メディア」があるんだよ、っていうコンセプトに自らの戦略を転換した。

 

志村④

写真① NBC2007年6月のIR説明会の資料。

 

 志村⑤

2009年のCESで流れてた「360°」の説明ビデオ。ここにも「Experience」。動画はコチラ

 

上の写真①の左側の図(Fromのほう)を見ると、テレビが真ん中にあって、そこから直線(矢印)が伸びてる。2013年のいまこの図を眺めると、ちょっと威圧的。
右の図(toのほう)は、「人」が真ん中で、メディアが「丸」く繋がってる。テレビは数あるメディアの一部になってる。
なんか仲良さそう。
日本でもテレビとネット融合の資料って、直線で繋がれてたのが多かった気がするけれど気のせいか。サーバーとタブレットとテレビが矢印で結ばれてたり。とりあえずテレビを中心にして。
それで、じゃあ日本テレビのIR資料ってどんなのだっけ?と思って改めて見てみたら、2011年度のアニュアルレポートの表紙は「丸」だった。ワオ。
「線」から「丸」の変化って、なにか象徴的なモノを感じる。

 

丸と中心

こうした「丸」な図は、バズワード的には「エコシステム」な図という。(エコシステムの説明も省略)
そして、その「丸=エコシステム」的な感覚が、いま「テレビ」にとって大事であることには違いない。強圧的でなく仲良しな感じ。
しかし、それはあくまでも「いま」必要な感覚であって、肚のなかは黒いほうがいい。
「エコシステム」=「役割分担」=「みんな平等」って考えは、ビジネス的には綺麗ごとに過ぎない。スタートアップ企業が提供していたサービスを、いきなりアップルが始めてしまうなんてことは日常茶飯事。
結局、親分=ルールメイカーが一番強いのだ。
未来のメディア図は、テレビやネットで構成される「メディア・エコシステム」で描かれるに違いない。
そのとき親分は誰になるのか?利益配分の折り合いは誰がつける?国内だけの問題なの?
どうせなら「JoinTV」がオールメディアのプラットフォームになって欲しい。
でもそのときパワーの源泉は何になるのだろうか?

 

丸いお金

おそらく、それは「ポイント発行権」であろう。バーチャル貨幣。
ネットより「テレビのリーチ力」のほうが100倍くらい大きい。蓄電されたパワーを「視聴率換算」するより、「Joinマネー」に換算したほうが減衰率も小さい気がする。
いまは「JoinTV」で貯めたポイントは「プレゼント応募」に用途を絞っているが、そのうち外部と繋がり始めるんだろうか。
NBCの「360°」戦略は広告メディアの拡張だった。そして、あの「丸」いプレゼン資料を作った2年後にケーブルテレビに買収された。
つまり、「丸」を視聴率換算してもダメだったのだ。
それより「貨幣」の発行権を握ってモノを動かすほうがよさそう。そんな構想があればもっと面白い。
なんだかプレゼン資料の「丸」がお金に見えてきた〜。

 

 

志村一隆(シムラカズタカ)プロフィール
1991年早稲田大学卒業、第1期生としてWOWOWに入社。2001年モバイルコミュニティを広告ビジネスで運営するケータイWOWOWを設立、代表取 締役就任、業界の先駆けとなる。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年エモリー大学で MBA、2005年高知工科大学で博士号
『明日のテレビ-チャンネルが消える日-(朝日新書)』、『ネットテレビの衝撃(東洋経済新報社)』が絶賛発売中。ツイッターは zutaka

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

20146/18

そこに、パースペクティブ=展望はあるか?2014年の論点⑤

停滞する民主主義が進化する途 ワールドカップの中継番組の瞬間最大視聴率が50.8%だったそうです。このニュースを見…

20146/18

そこに、パースペクティブ=展望はあるか?2014年の論点④

ストレンジなリアリティー:ガンダムUC ep7を見て考えたこと 『機動戦士ガンダム』は30年以上前に、フォーマット…

20146/17

情報“系”の中のテレビジョン

6月は、いろんなことがある。 会社社会では6月は大半の会社の株主総会の季節だから、4月の年度初め、12月の年末とともに一つの区切りの季節だ…

20146/16

テレビというコミュニティ。あやブロというコミュニティ。

あやとりブログに文章を書くようになってかれこれ二年以上経ちました。2011年に出した『テレビは生き残れるのか』を読んでくださった氏家編集長か…

20146/13

ワンセグ全番組タイムシフト視聴は視聴率を下げるのか検証してみた〜ガラポンTV視聴ログより

リアルタイムの放送をテレビで視聴する人が増えることは良いことです。 言うまでもなくこれは「視聴率が上がる」ことを意味します。 &nb…

ページ上部へ戻る