テレビは何のためにあるのか?
志村さんへの反論
最後に志村さんポスト「Playするテレビ」への反論。
志村さんは最後に私の名前を出して締め括っているので、私への批判なのかどうかよく分からないが、次の点は事実として指摘しておく。
▲「テレビは3メートル、パソコンは30センチのメディア」という言葉を引用して、ネットとテレビは融合しないとする「テレビの言い訳」がそこにあったと指摘している。
残念ながら、この“テレビ=後傾姿勢、PC=前傾姿勢”という分類は、PC革命の勃興期にIT業界がいい始めたことだ。PCというデバイスに価値を吹き込む考え方で、テレビ業界が言い訳を始めたわけではない。事実関係は正確に引用してほしい。
ただし、この分類は今でも一定の本質を言い当てていると思っている。
またテレビ・ネットの「融合論」という表現にテレビ局が良くも悪くも神経質になったのはテレビ局へのM&A論が賑やかになってからのことだ。
志村さんの意見は両者を混同した議論だろう。
▲「半沢直樹」の有料配信で800万人の視聴者が購入してくれて4億円売り上げるというありがたい試算を拝見したが、よくて0.3%~2%程度という「ポスティング」や「クリックレート率」というネットでよく使われる概念からみても、残念ながら視聴者総数の20%の人が有料課金に応じてくれることはありえないだろう。
それにタイムスポット収入の単純日割り金額である4.72億円と比べて悪くない、との話だが、「半沢」はのべ10日間にわたって放送されている。また「半沢」のようなお化け番組は滅多にないから、比較するなら日割り金額の10日分、47億円である。
おまけに平成22年国勢調査で全国の世帯数は5,195万世帯である。テレビ視聴可能世帯はそれよりは少ないかも知れないから、まあ多くて5,000万世帯前後としよう。
番組視聴は世帯単位での購入であろうから、志村さんの仮定通り4割の購入としても2,000万世帯だから売上は半分の2億円となる。
47億円対2億円。どっちが効率的だろう。
需要の過大見積もりは瀬戸大橋の例をみるまでもなく事業運営には禁物だ。
▲ターゲティング、もしくはリターゲティング広告を確かに活用できればと考えているテレビ・代理店関係者は確かに一部にいる。そして、その人たちは欠点も同時に知っている。
セカンドスクリーンなどを使って今のテレビ広告収入にアドオンできれば、などと研究しているアイデア段階であり、それを「古い」と揶揄するだけでは反発を呼ぶだけだろう。
ちなみに多くの放送関係者は「放送は放送」といまだに思っている。
そしてテレビ放送事業継続のためのキャッシュフローを全額新たな分野に投資するのは今の事業から撤退するということになる。現実の企業経営としてはありえない選択だ。
▲映像をみんなで遊ぶ時代になるというご指摘だが、まったく賛成だ。Playするテレビ。悪くない、それもありだと思う。
しかし、残念ながら、誰もがビートルズの演奏のコピーはできても、誰もビートルズにはなれない。その映像が大好きでも、宮崎駿監督や是枝監督にはなれないのだ。
プロとアマの差は天地の差ほどある。楽器の才能がなかった自分には身にしみてわかる。プロをなめてはいけない。
▲最後のオマケは、正直志村さんの言いたいことがちょっと分からなかった。「仁義なき戦い」見たことないが「半沢直樹」と似ているのだろうか…?
ごめんなさい。
稲井英一郎(いない えいいちろう) プロフィール
TBS入社後、報道局の取材記者として様々な省庁・政党を担当。ワシントン支局赴任中に9/11に遭遇。その後はIR部門で投資家との交渉にあたったほか、グループ会社でインターネット系新規事業の立ち上げに奔走。
趣味は自転車・ギター・ヨット、浮世絵など日本文化研究。新しいメディア経営のあり方模索中。
コメント
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