ローカル局には、視聴率より大事なミッションがある。
地域メディアということは、RKBのように地元制作の番組で頑張らねばなりません。大変です。手間もお金もかかります。その上、視聴率がとれるとは限りません。キー局の番組をそのまま流した方が視聴率はとれるかもしれない。あるいは過去にヒットした番組でも安く購入して流した方がいいのかも。でもそれだと地域メディアとは言えません。ケーブルテレビの再送信と大してちがわない。
旧友は言います。地元制作の番組は重要だ、なぜならば地元スポンサーの信頼が得られるからだ。そう言われて、ハッとしました。『チャンネルはそのまま』のHHTVと蝦夷屋デパートの関係そのままです。
地元の信頼。それこそが、ローカル局が地域メディアになれるかどうかの尺度です。視聴率ではないのです。もちろん視聴率のように測定はできません。強いて言えば、蝦夷屋デパートのように「ありがとう」と何度言ってもらえるか、なのでしょう。
地域メディアが持つべき地元の信頼は、スポンサーだけではないでしょう。みんなです。地元に住むみんなからの信頼を得なければ地域メディアとは言えない。でもそれが得られれば、視聴率の何倍も価値あるものが持てるはずなのです。そうすれば、CM枠がセールスできなくてもいい。いや、信頼があればCM枠も売れるはずなのです。
地域メディアであろう、というのは、考えてみると当たり前のことです。だってテレビとは、いやメディアとは、コミュニティのために存在するものなのです。
メディアについてぼくたちは長い間勘違いしていたかもしれません。表現者という特別な立場にある者が、コンテンツを普通の人びとに送りとどける。それがメディアというもの。そんな解釈はもう通用しません。もはや普通の人びとが、驚くような感性と才能でいとも簡単にコンテンツを産み出すことをぼくたちは知っています。
それでもなお、メディアとそこで働く人たちに使命があるとしたら、コミュニティのために伝えるべきことを探してきちんと伝えることです。その中に表現が盛り込まれるにせよ、その表現が熟練と能力で産み出されるにせよ、特権的な立場としてではなく、人びとへのサービスとして行うべきものなのです。そのことにやっといま、みんな気づきつつあります。
『チャンネルはそのまま!』はまだ第三巻までしか読んでません。六巻まで出ているそうなので続きを読むのが楽しみです。人間味あふれるHHTVはその後どうなるのでしょうか。バカ枠入社の主人公は何かやらかすのでしょうか。そしてひぐまテレビとの姿勢の違いはこれから、2つの局に何をもたらすのでしょうか。それは現実のローカル局の今後にも、関係するかもしれませんよ。
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境 治 プロフィール
フリーランスのコピーライターとして長年活動したのち、映像製作会社ロボット経営企画室長・広告代理店ビデオプロモーション企画推進部長を経て再びフリーランスに。2011年7月に『テレビは生き残れるのか』を出版。
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コメント
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