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20139/10

あらゆるコミュニケーションが<Presented by ・・・・・>になる時代 須田和博さんレポを読む(前川英樹)

あやブロメンバーの須田和博さんが、[AD STUDIES]vol.45(吉田秀雄記念事業財団)SUMMER2013“特集 もう一度マス広告を考え直す”に「最古×最新 マスからソーシャルデバイスへ。時代が変わっても変わらない、広告の原点」という1万字のレポートを書いている。

前川1

[マーカーのラインは前川]

最初に須田さんはこう書きだしている。
今自分がメインフィールドにしているWebインタラクティブ領域では、「広告はユーザー能動アクセスしてもらうことが最重要」であって「(その)反応はすべて可視化されるので常に『ウケたorスベった』がハッキリと衆目にさらされる。マス広告との大きな違いはそこだ」という職業的経験則を提示する。この発見は「人間は何に反応するんだろう?ということにデリケートにならざるを得ない」という認識につながり、それは「人間行動の原理原則」に関わることであって、そこから「変わらない日常、人類の本質、そして、広告の原点と歴史を」考えるべきであり、一言でいえば、「メディアは進化するが人間は進化しない」のであり、だからこそ、広告を近代史としてではなく人類史的にとらえたいという。

 

広告=人間の普遍的な心理や欲求へのアプローチ×その時代の旬なメディア

 

だから、様々な歴史的イノベーションもある段階に至るとそれは「当り前」になるのであって、そこには「変わらないもの」が下絵のように塗りこめられている・・・というのが須田レポートについての前川的読み解きだ。
「広告は、いつの時代もメディアの似姿を借りる」というテーゼが広告というものについての須田さんの基本テーゼである。このことを、今年のカンヌ・ライオンズ参加作品の“ダム・ウェイズ・トゥ・ダイ くだらない死に方”(オーストラリア・メトロの転落防止キャンペーン)の事例などを引きつつ、YouTubeにおける「似姿」のあり方を解説している(このキャンペーン映像はとぼけたかわいいキャラクターによるしんみり感が良いとされているが、私の感想では、それだけにかなりこわい不気味な印象を受けた)。

 

ところで、須田さんはこのレポートを書くにあたって荒俣宏のインタビュー記事「メディアと広告の関係について」(「広告批評」1999・6・7合併号:特集・広告20世紀part2「20世紀の広告は何をしたか掲載」)を読んで、そこに語られている例えば、「大量メディアの出現によって、それまでとは違う、新しい広告の手法を考え出さなくてはならなくなった。そうやって、広告はスタートしたんです」という発言に触発されて、「似姿論」のバージョンアップの必要に気づいたという(下線は前川)。
そして、須田さんはこう書く。
「近代広告においては、『広告』がメディアの後からやってきて、メディアの『似姿』を借りたのではなく、メディアの誕生に随伴し同じタイミングでそれを支えるべく『一心同体』の似姿をつくりだした、ということ。何と言う高等テクニックだろうか」

 

 

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