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20139/2

テレビの未来⑤:メタデータ・プラットフォームの威力

 

■ビッグデータ解析予測による付加価値

 

メタデータは、全テレビ番組で取り上げられる商品、アイテム、ブランド、政党、政治家、タレント、著名人などを全て記録している。これらの膨大なデータ、いわゆるビッグデータを活用すると、ヒット・トレンド・流行等を予測することが可能になる。 これらをまずテレビ自身が利用し、番組企画を立案や、自社の優位な分野を探るなどの、メディア価値向上に利用できる。

 

さらにビッグデータを解析・分析することで、広告クライアントに対し、より高度な営業活動を展開し、マーケティング支援を行うなどの新たな営業モデルを構築できる。

 

これまではリーチのみだったテレビCMの指標に、新たな要素を加えれば、テレビの広告媒体としての価値を大きく向上できる。これからのテレビ営業は、従来の営業方法に加え、ソーシャルメディアと連動させる企画や、スマホのアプリ開発や、インターネットでの連動など様々なメディアを総合的に利用したプランをたて、積極的に提案してゆく営業スタイルに移行せざるをえない。その際、この番組メタデータを活用したビッグデータ解析は、強力な支援ツールとなるだろう。

 

 

■メタデータでテレビの天敵、高機能全録機を味方にする

 

テレビの未来③:[いつでも視聴]×[どこでも視聴]の衝撃・前編で、「高機能全録機はテレビの時間軸編成を崩壊させ、ひいてはテレビ広告という巨額の金を生み出すビジネスモデルに決定的なダメージを与える」と述べた。ユーザーにとってはとても便利な高機能全録機なのだが、テレビ局にとっては致命的なのだ。

 

しかし、テレビ局がメタデータを握ると話は変わる。 全録機は録画される番組量があまりに膨大なため、番組メタデータをベースにした高度な検索システムが必須となる。このため全録機は番組を録画すると同時に、番組メタデータも記録している。
そしてこのメタデータからは簡単にインターネットへ飛べる仕組みを構築できる。テレビ局がメタデータを握っていれば、視聴者が録画視聴からネットへ飛んで何らかの消費を行えば、そこにテレビ局に利益をもたらすタネが仕込まれる。例えば、旅行番組を録画視聴していて、ある温泉宿がいいな!と思い、そこからすぐにリンクを仕込まれている旅行サイトへ飛んで、その宿を予約したとする。そこにマネタイズのチャンスがあるのだ。

 

リアルタイムの視聴からネットへ飛ばれるのは、テレビにとってダメージだが、全録機の場合は、録画視聴から飛ばれるので、現在のテレビ広告ビジネスを傷つけることはない。

 

全録機の中には膨大な番組とそれに付随するメタデータが記録されている。この中の番組が再生されるたびに、メタデータが利用されるチャンスが生じ、それが新たなマネタイズのチャンスになるのだ。
テレビ広告のように一気に巨額のマネーを生み出すことはできないが、少しずつ長期にわたるロングテールのビジネスになる。
テレビの天敵とも言うべき高機能全録機だが、メタデータさえ握っておけば、新たな利益を生み出すチャンスとなるのだ。

 

■■■

『テレビの未来』シリーズ、次回はさいごの総論「テレビ局はメディア・サービス企業へ進化しなければならない」について述べる。テレビ関係者からは最も反発を受けると予想される部分なので、誤解を受けないよう、できるだけ丁寧に書くつもりでいる。

 

 

 

氏家夏彦プロフィール
株式会社TBSメディア総合研究所 代表取締役社長 テクノロジーとソーシャルメディアによる破壊的イノベーションで、テレビが、メディアが、社会が変わろうとしています。その行く末をしっかり見極め、テレビの明るい未来を探っています。
1979年TBS入社。報道(カメラ、社会部、経済部、政治部等)・バラエティ番組・ワイドショー・管理部門を経て、放送外事業(インターネット・モバイル、VOD、CS放送、国内・海外コンテンツ販売、 商品化・通販、DVD制作販売、アニメ制作、映画製作)を担当した後、2010年現職。
Facebook、Twitter(natsu30)

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