テレビの未来⑤:メタデータ・プラットフォームの威力
シリーズで書いている『テレビの未来』、「テレビはどこに向かって進化すればいいのか」という大きなテーマで考察を進めているが、その具体例として前回の『テレビの未来④』で次の様に述べた。
「いつでも視聴」×「どこでも視聴」がテレビビジネス崩壊の危機をもたらす。しかし簡易型全録機と、テレビ局主導「見逃し視聴サービス」が、テレビの危機を先延ばしし、テレビと疎遠になってしまったユーザーに、これまでにないUX(ユーザー体験)を提供できるようになる。不便で、時代遅れで、ダサいと思われているテレビが、劇的な進化を遂げるのだ。
今回は、別の具体例「メタデータ・プラットフォーム」について述べる。
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メタデータに関しては、これまでも「あやとりブログ」での様々な提言の中で、重要性を繰り返し述べてきた。
●テレビの今と未来は?何をするべきか?…今年を振り返って考える②
●発想の大転換で大ピンチをチャンスに変える〜問題提起編
●発想の大転換で大ピンチをチャンスに変える〜大胆提言編
● Googleにもできなかったメタデータ作成の現場を見た
今回は、要点のみを記す。
現在、テレビ局が対外的に提供しているメタデータ(番組・放送内容に関わるあらゆる情報)は、新聞のテレビ欄情報と電子番組表のみといっていい。番組によっては、データ放送を使って何らかの番組情報を提供している場合もあるが、それは少数であり利用もあまりされていない。
一方、テレビ局以外のサードパーティーがメタデータを提供するケースもある。これはいわゆる「後付け」メタデータというもので、放送されている番組内容や、全てのCMについての情報を、人間の目と耳で確認し手入力で作成されている。
■スマートテレビに必要不可欠なメタデータ
メタデータはスマートテレビにとって不可欠だ。スマートテレビの基本的な機能であるテレビ番組とネットの連動は、メタデータなどの補助的情報を介して初めてできると言ってもいい。
スマートテレビは、ネットとつながり多彩なサービスを提供する。つまりテレビ局にとってはリアルタイム視聴の減少につながる困った事態であるが、スマートテレビが普及する事は、もはや避けられない状況だ。そのときメタデータに対する需要は急激に高まる。このメタデータをどこが握るのかはテレビにとって重要な焦点となる。
また日本のメタデータ作成を握れば、グローバルビジネスに打って出られる潜在力を手に入れる事になる。世界を見渡しても、テレビメタデータ作成を本格的に実施しているのは日本だけといってもよく、作成には高度なノウハウやシステムが必要なので、一朝一夕に真似できるものではないからだ。
メタデータを提供するタイミングは、メタデータ・ビジネスで重要な要素だ。 最も価値が高いのは、放送と同時にメタデータを提供するリアルタイム・メタデータであり、これを提供できるのは、放送するテレビ番組情報を事前に把握しているテレビ局だけだ。
このリアルタイム・メタデータと、詳細で膨大な後付けメタデータを組み合わせると、商品価値の高いハイブリッド・メタデータになる。ハイブリッド・メタデータを提供できるようになれば、スマートテレビ構想を進めている家電メーカーや、通信キャリア、ケーブルテレビ業者だけでなく、スマートテレビでも事業拡大を狙っているEC事業者、通販事業者、旅行サイトなどWeb企業、各種小売業者などに対し、大きなイニシアチブを獲得できる。
次はメタデータ・プラットフォームによるビジネスモデルについて述べる。
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