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201012/13

「ウィキリークスについての<強制的>あやとりと相当にややこしい未知との遭遇」 ― 前川英樹

 「あやプロ」ライターになってしまった志村さんと須田さん、そしてやっぱり氏家さんにも質問です。皆さんは、ウィキリークス問題で一番興味のある論点は何でしょうか?そして、その理由は?

 ウィキリークス問題について取り敢えず思ったことは、第一に「インターネットの自由とは何か」ということだった。
 インターネットが登場した時から、「インターネットの自由」は思想的にもビジネス的にも輝ける旗印だった。旧来のビジネスやメディアの中で仕事をしている人々でさえ、秘かにそれに羨望を覚え、自分たちは古びたものになってしまったと感じたのだった(そこから「テレビに何が可能か」という問い直しが始まる)。だが、インターネットは今漸く「インターネットの自由」、つまり自分の可能性の< 意味>について考えざるを得ない状況に踏み込んだ。ウィキリークス自身が何をどう考えているかはいざ知らず、ウィキリークス問題はそのことを示している。
 第二に、ウィキリークス問題はネット問題であるともに、マスメディア問題であるということだ。ジャーナリズムは政府批判を存在理由としている(とされている)のだから、ウィキリークス批判を全面的に展開することは、自己矛盾に陥るのではないかという抑制が働いていないか。その意味で、マスメディアがウィキリークスについて語ることは、自らを鏡に映すことでもある。これは、尖閣ビデオ問題と共通する。
 結局のところ、インターネットに情報を出すことについて、情報主体は誰に対して、そとしてどのような責任を負うかということに尽きる。そして、それは「知る権利」とどう関係するのか、ということが問われる。「知る権利」とは<19世紀/20世紀>的民主主義に対応した概念だと思われるが、いま時代は21世紀的=ネット/デジタル的政治状況に入っていると考えてよい。そうだとすると、「知る権利」という概念に変化はあるのかないのか。それ自体も考えなければならない。
 私たちは、実は「インターネットの自由」と並走しつつ、相当にややこしい「未知との遭遇」に踏み込んでいるように思うのだが、どうなんだろうか。新しいメディアの思想が必要なのに、状況はそれを放置したまま進行しているようだ。

志村さん、須田さん、氏家さん、どう思います?
「あやブロ」は、こうした難問を適当なフットワークでこなしていく力量を持ちたいものだ。アッ、でもあんまり難しく考えないでね。想像力の乱反射で、全然違うあや取りに展開欲しいというのが本音である。

TBSメディア総合研究所“せんぱい” 前川英樹

前川英樹(マエカワ ヒデキ)プロフィール
1964年TBS入社 < アラコキ(古希)>です。TBS人生の前半はドラマなど番組制作。42歳のある日突然メディア企画開発部門に異動。ハイビジョン・BS・地デジというポストアナログ地上波の「王道」(当時はいばらの道?)を歩く。キーワードは”蹴手繰り(ケダグリ)でも出足払いでもいいからNHKに勝とう!”。誰もやってないことが色々出来て面白かった。でも、気がつけばテレビはネットの大波の中でバタバタ。さて、どうしますかね。当面の目標、シーズンに30日スキーを滑ること。

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