CES2013報告 第3回 ビッグスクリーン戦争の外憂内患…
「皆さんはパナソニックをテレビのメーカーだと思ってるでしょう?でもね・・・」
キーノート・スピーチに立ったパナソニックの津賀一弘社長は、にこやかに語った。
90分を英語で、しかも3000人以上の聴衆を相手にプレゼンするのは容易なことではない。巨大なプロンプターがいくつも並んでいたが、津賀さんはほぼ暗記していたように見受けられた。スピーチの合間には、モデルのようなカッコイイ男女が、スマートライフの素晴らしさを語るVTRが流れた。
一部では「脱テレビ宣言」と伝えられたこのスピーチだが、私には「テレビだけではない」宣言に聞こえた。なぜなら、このスピーチのハイライトはやっぱり4K有機ELテレビの発表だったように思われたからだ。
ちなみに、津賀さんのスピーチで一番盛り上がったのは、‘80年代にUCLAサンタバーバラ校に留学していた当時の写真だった。それは津賀夫妻が愛車のフォード・ムスタングのオープンカーに乗っているもので、会場には笑いが起き、一気に津賀さんに対する親近感が高まった。惜しむらくは、この演出がもっと前半にあればなあ…というのはさておき。
そして翌日には同じ会場で、サムスンのStephen Woo氏がスピーチに立った。すごかったのは、Woo氏登場と同時に会場にいる韓国人スタッフとメディアが「ウ~!」と大歓声をあげたことだ。2日前のLG電子の発表会でも、間違えて関係者席に案内された私は、周りの韓国人スタッフが発表のたびに歓声をあげるのに面喰っていたのだが。
他愛のないことでも大歓声があがるので、一瞬しらけムードも漂った会場だったが、そこはサムスンもハンパではない。パナソニックと決定的に違うのは、サムスンはスマートフォンを持っているということだ。「モバイルの可能性」というテーマは、CES2013のマントラである。
そしてスピーチの合間に登場したのが、少女時代を思わせる女性ダンサーチーム。続いて、スピーチの中ほどで「私たちが見たいものは・・・!?」で、流されたVTRはご存じYouTubeの「面白ネコ映像集」。ここで、一気に会場の共感をさらった。
クライマックスは折り曲げることの出来るディスプレイ。これは圧巻だったが、見本市会場には出品されていなかった。会場で流された「かっこいいデバイスは、女の子にもてる」CMがこちら。
http://www.youtube.com/watch?v=6OYTyl3ipgk
で、ラストに登場したのが、クリントン元大統領。ほとんど自分の話しかしなかったが、一部の聴衆はスタンディングで迎えた・・・
さて、見本市会場である。ここでも、韓国メーカーの気合の入れようは尋常ではなかった。テレビ屋でありながら、美しい映像はもう十分と思っているダメダメな私は、有機ELテレビよりも、テレビ受像機の薄さの方が気になった。
まず、目を奪われたのはサムスンのダンシングTVである。
http://www.youtube.com/watch?v=5P0NXlTL2Nk
横から見ると、さらに薄さが際立つ。なんだろう?ハードというより、演出で完璧にやられてしまっている
LG電子のテレビはさらに薄かったのだが、どういう訳か警備の人がつきっきりで、本体に触れることはできなかった。そして、家人がLG電子のガス台やスマホ連携の冷蔵庫にビタッとくっついて離れない・・・。
実は、パナソニックのテレビもかなり薄くてカッコよかった。でも、見せ方が地味すぐる。
また、ソニーのビデオカメラは小さくてものすごく欲しいと思ったけど、もうスマホでもいいのかな?
うまく言えないのだが、CES2013のあちこちで聞いた「Customerは何を求めているのか?」という言葉。スマホを中心に、SNSを使いこなすという新しいライフスタイルに対する目のつけどころ(マーケティング)で、韓国メーカーにやられてるなあ、と感じないわけには行かなかった。
2007年当時、NY郊外の大型スーパーでテレビが(たたき)売られているのを見てびっくりしたものだ。299ドルとか399ドルで売られていた小さなテレビ。NYの友人が「テレビを、ショッピングカートに乗りやすいように小さくしたら、売り上げが上がった」と語っていたのを思い出す。高くて長持ちするモノより、すぐ壊れても安いモノ・・・。そういうCustomerは求められていないのだろうか???
メーカーだけじゃなくて、テレビ屋もそうだ。どんな映像がアメリカ人に受けるのか?その研究も足りない気がした。
UGC(User Generated Contents)が面白いといわれて久しいが、YouTube映像をそのまま持ってきたサムスンの感覚は、実にかゆいところに手が届いている。エコとか大上段のテーマ設定よりも、「女の子にもてるCM」の方がしっくり来る。
韓国は必死だ。国も企業もメディアも、みなで必死に外国に売ろうとしている。そんななかで「成熟した」日本は、日本市場の大きさにあぐらをかき、国として連携することもなく、世界に取り残されるという「ガラパゴス化」が止まらない印象。極論だが、「都市」だったイタリアがどんなに洗練していても、後進のスペインやフランスという「国家」に飲み込まれてしまった絵図が目に浮かんだ・・・。
それにしても、どのメーカーのテレビを見ても、ユーチューブは標準装備で、スマートテレビ、インターネットテレビと呼び名は違っていても、もはやストレスフリーで地上波もBSもCSもユーチューブも見ることが出来る。
どのビッグスクリーンで見るか?という外憂を目の当たりにしながら、ビッグスクリーンでなにを見てもらえるのか?という内患に思いをはせたベガスの夜だった・・・。
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