「アイス・バケツ・チャレンジ」現象を読み解く(笑)
ボストン大学出身のALS患者ピート・フェイツさん(29歳)の父親ジョンさんが7月30日にフェイスブックに載せた「アイス・バケツ・チャレンジ」が世界で大騒ぎになっている。
ルールは簡単で、氷水をかぶった人は、次にかぶって欲しい人を3人指名する。その3人は、24時間以内にALS協会に寄付をするか?氷水をかぶるか?選ばなければならない。多くの人は、氷水をかぶった上にALS協会に寄付するという選択をしているようだ。おとといは、ブッシュ前大統領が氷水をかぶった。
https://www.youtube.com/watch?v=DepakUSDtQE
「ブッシュ前大統領のチャレンジ。夫人も登場」
私がこの動きを知ったのは、FBでフォローしているマーク・ザッカーバーグが氷水をかぶったからだ。8月14日のことだった。マークは、よりによってビル・ゲイツを指名。洒落のわかるアメリカ人とはいえ、あのビル・ゲイツがどうするか?誰もが固唾を呑んで見守っていたところ、翌日「自ら『氷水かけ器』を設計する」という予想以上のウイットに富んだ氷水かぶり映像が発表され「さすが!」と思った人も多かったに違いない。
https://www.youtube.com/watch?v=XS6ysDFTbLU
「こったビル・ゲイツのチャレンジ」
こうして、ITセレブを中心に広がった「アイス・バケツ・チャレンジ」はスポーツ選手やアーチストにも広がり、日本でも孫正義さんや秋元康さん、そして氏家編集長まで氷水をかぶる事態となっている。
「アイス・バケツ・チャレンジ」は、一体なぜこんなに広がったのか?いくつか理由は考えられるが、主なものは以下の3つではないだろうか?
① バイラルのネットワーク
②チェーンレター(ネズミ講)の輪
③チャリティという善意の目的
まずは、SNSを中心とした動画をシェアするという「バイラルのネットワーク」が、インターネット内に既に出来上がっているということだ。これまでも、日本発の「恋するフォーチュン・クッキー」。アメリカ発ならファレル・ウィリアムズの「ハッピー」で、実証済み。
同じ音楽に乗って、様々な人たちが様々に踊っている動画が、ユーチューブなどのSNSに投稿されものすごい勢いで拡散されている。ただこれまでのケースでは、AKBやファレルの音楽をシェアしているということもあり、彼ら以外の有名人やアーチストが参加することはほとんどなかった。
ところが、今回はIT業界を皮切りに各界の有名人が次々に参加し、このムーブメントを爆発的に広げている。なぜか?これに効いているのが②と③だ。
チェーンレター(ネズミ講)は昔ながらの拡散システムである。もちろん一般人にもこのルールは適用されるが、なんといっても今回は有名人の参加に大きく寄与している。
マーク・ザッカーバーグがビル・ゲイツを指名したように。クリスチャーノ・ロナウドがビヨンセやジェニファー・ロペスを指名したように。この有名人の「友達の輪」ならぬ「チェーンレターの輪」は、いわば「セレブの証明」である。しかも、難病支援という錦の御旗もある。こうして各界の有名人が、ネズミ講式に我も我もと参加することになった。「自分たちのPRになっている」というイジワルな見方もできないことはない。そういう意味では、無言で氷水をかぶったレディー・ガガには、ちょっとゾクゾクしたけれど。
https://www.youtube.com/watch?v=ZvlwTP_RDCo
「無言でかぶるレディー・ガガ」
つまり「アイス・バケツ・チャレンジ」では、一般人の「バイラルのネットワーク」の広がりをベースに、有名人が「チェーンレターの輪」でネズミ講式に増えるという二重構造であり、それらが複合的にからみあってさらに拡散するという新しいバイラルの形だと思われる。
その他にも、「氷水かぶり」があっという間に終わる短い尺であること。24時間という時限が切られているので拡散の展開が速いこと。マスメディアが後追いして、爆発的に拡散させていることなどが考えられる。
でも、個人的には「氷水かぶり」というアクションが、真夏の暑い盛りにマッチしたことが大きい気もする。実際、南半球からの参加者はほとんど見かけないですもんね(笑)。
山脇伸介(やまわきしんすけ)プロフィール
1991年テレビ局入社。
朝昼の生情報番組やニュース番組のプロデューサーを経て、
2007年8月から1年間、ニューヨーク大学院(NYU)で「テレビとインターネットのこれから」について学ぶ。
帰国後、他局に先駆けてTwitterやFacebookの導入に尽力。
著書「Facebook世界を征するソーシャルプラットフォーム」(ソフトバンク新書)
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