猿は退化して人類になった
友人に頼んでニューヨークメトロポリタン美術館のカタログを持って来てもらった。一生のうちにもう一度パリと北京に行ってみたいのだが、ニューヨークまでは寿命が足りそうもないので美術館のカタログで我慢することにしました。
ニューヨークと言えばもう一つ、メトロポリタン歌劇場も行きたい所ですが、こちらは夏以降東劇でやる舞台撮影の映画で我慢します。
(去年も盛夏にニーベルングの指輪の4夜連続を見に行って、よくぞ生き延びたと自分を褒めたものです。ちなみにこのオペラ映画は歌手も演奏も超一流で字幕も流れるし舞台では見られないアップもふんだんに出て来ます。その上安いですから興味が有るけどニューヨークに行かれない人または、オペラは見たことないというような方にはお勧めです。)
さて美術館のカタログですが、開いてみると古代メソポタミアやエジプト文明の高度さに改めて心を打たれます。
「ヤマネコのリュトン」とか「座る牛」とか「頭は人、胴はライオン、尾は牛の像」等々くるも出てくるもの夫々意匠やデザインや造形のすばらしさは素人の僕が見てもぞくぞくします。
またエジプトは皆さんご存知のように「棺桶のカバー」の極彩色精巧な模様、「モノを運ぶ少女」の衣装や均整の素晴らしさは今更言うまでもないでしょう。
エルメスやシャネルやベネトンも絶対にかなわないです。
メソポタミアもエジプトも精神の高さを感じさせます。
ピラミッドやスフィンクスは今の超一流の建築会社でも作れないという話を以前聞いたことがありますが、頷けます。
しかしページをめくっているうちにある考えに憑りつかれました。
と言うのはメソポタミアもエジプトも今から5000年から3000年前のものですが、この地域はどこも今や戦乱の真っ只中です。
エジプトは「アラブの春」とかいう一時の熱気の時期を過ごしたあと軍の独裁に戻りました。
メソポタミアは今のシリア、イラク、イランあたりが中心の文明ですからご存知の泥沼の殺し合いです。華々しい古代文明の故地は現在は破壊ばかりで創造はゼロです。もうどの陣営もリーダーまで含めて、なんのために戦っているかも忘れてしまって唯憎しみや復讐と言う負の精神に支配されているように見えます。
(もう一つの重要な精神文化の発祥地パレスチナとイスラエルも同じです)
(独裁を倒す勢力なら何でも応援してしまうという、アメリカの愚かなダッチロール外交政策が混乱に輪をかけています。シリアで応援した勢力がイラクでは敵となるなど、おそらく敵味方とも米製の兵器で戦っているのではないでしょうか。)
そこで僕が憑りつかれたある観念と言うのは「人類は退化している」と言う事です。
宗教的または芸術的精神や技量の退化だけでなく、同じ種の中で殺しあうという現実も種としての退化を思わせます。古代文明より前から種の退化は始まっていたのです。
確かにホモサピエンスは70億人にもなり、猿類または霊長類の中では勝利者に見えます。ダーウィンは旺盛に繁殖したものが進化の勝者だと考えたようです。
でも数だけなら蟻など昆虫はもっと居ます。魚ももっと居るでしょう。ウィルスや細菌ももっと居ます
猿も他の動物も仲間内で殺しあうことが皆無とは言えないそうです。
しかし人類程「同種殺しのDNA」を沢山持っている生物はいません。
古代エジプトでもメソポタミアでも戦争はあり、殺しあったり捕虜にしたりしあいました。絵画や彫り物にも戦争は出てきます。オペラのアイーダだって古代の戦争です。
しかしこの頃はまだ殺すより捕虜を得ることが大切だったのではないでしょうか。
どこかで同種殺しの遺伝子が猿か霊長類かホモサピエンスのどこかの段階で大量に組み込まれたか、レトロだったものが活性化したのではないでしょうか。
(今科学に詳しい博覧強記の友人二人にいつからこうなったのか調べてくれと頼んでいますが返事がないです。きっと難しいテーマなのですね)
しかし広島長崎の無差別殲滅や旧メソポタミア領域の国々やパレスチナ・イスラエルの終わりなき殺し合いは、種としての退化を表しています。
古代エジプトやメソポタミアの技術美術や精神の昇華の高度さに比べて現代が退化したというだけではなく、もっと人類総体として猿だったころに比べても我々は退化しているのです。ネアンデルタール人を殲滅したころから退化は始まったのではないかと僕は思っています。
猿が進化して人類になったのではなく、猿は退化して人類になってしまったのです。
(この頃文字を手で書く機会が増えて、PCで何気なく選択して済ませていた漢字が書けないです。これも文明の進歩などと思われがちですが実はきっと脳の退化なのですよ。騙されないように気を付けましょうね)
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