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20129/3

9・3【せんぱい日記】「一色に染められてはたまらない」-山田風太郎・John.Lennon.などなど-前川英樹

 

 

8/17(金)
ひたすら眠い。
・・・と思っていたら、長女の旦那の親戚から花咲蟹が届いたので昼に食べようというお誘い。蟹好きなので遠慮なく御馳走になりに行く・・・といっても、100mも離れていない。久々に旨い蟹を堪能した。
花咲蟹は毛蟹などに比べて鮮度が落ちやすく、かつては東京には出てこなかった。芸祭ドラマのロケハンで根室に行ったときに、花咲港の近くで漁協のおばさん達だろうか、ドラム缶で蟹を茹でて新聞紙にくるんで売ってくれた。値段は忘れたけど、それを港の岸壁に腰掛けて缶ビールとともに楽しんだ。今まで食べたなかで一番の蟹だった。
だが、ロケの交渉ごとから仕上げ、精算に至るまで、あの仕事はAP(アシスタント・プロデューサー)としては最もきつい仕事だった。花咲蟹のおかげでそんなことも思い出した。

NHKオンデマンドでNHKスペシャル「終戦 何故もっと早く決められなかったのか」(8.15.OA)を観る。

8/18(土)
別冊太陽「山田風太郎」。
この人がいま生きていたら、この世の中をなんというだろう。
戦後は虚妄だったと呵々大笑するだろうか。

 8/20(月)
“LENNON LEGEND”(The Very Best Of John Lennon)を聴いている。
ジョン・レノンがいたら、いまやっぱりイマジンを歌うだろう。そして、現実はジョン・レノンを裏切るだろう。それでも、彼は歌い続けるに違いない。
時代は相当悪いところに来ている。

8/21(月)
Walking再開。
暑い!けど、しっかり歩いた後は気持ちが良い。
オリンピック・メダリストの銀座パレードに50万人!
少し怖い。
それだけ何かがたまっているのだ。

 8/22(火)
境治さんの<クリエイティブビジネス論>「ソーシャルメディアは、ぼくらとオリンピックの関係を変えようとしている(のかもね)」読む。
「ところで、素朴な質問です(・・・志村さんにも)。『ソーシャルメディアは、常にあるいは必ず<鎖>をほどくように機能するのでしょうか。ひょっとしたら誰が意図するということではなく、結果として<鎖>になってしまうことはないのでしょうか?』これから私たちが直面するかもしれないのは、そういうことではないかと思うのです。」と書き込む。

午後、民放連研究所。出版企画の再校。
その後、TBS診療所。所長の岩男先生に人間ドックの結果についての所見をお願いする。
「まあ、大きな問題はありませんね」との由。

8/23(水)
「『草枕』の那美と辛亥革命」(安住恭子 白水社)。なかなか面白かった。
明治維新後の上級武士一族の没落の物語と、地方の民権運動のドラマと、漱石との出会いや「草枕」の背景と、辛亥革命を担う中国人留学生の日本での活動と、全てに関わっている話で、下手に書けばばらばらになりそうなところをちゃんと読ませる。前田卓(つな)という女性はそれだけ魅力的だったということだろう。調査力も筆力もなかなか。

8/24(金)
「放送人の会」事務局。
上半期番組批評座談会。終戦関連ドキュメントの話題から、「日本は負け方を間違えた」という話になり、天皇制論に発展した。議論としてありうべき展開がしかるべく展開された、といったところだ。
途中で退席し、「放送人の会」の法人化のための定款作成作業打合せ。テレビマンユニオンで今野さん、工藤さん。終わって赤坂でドイツビールの店。「10月の日韓中テレビ制作者フォーラムで、領土問題とメディアって話は避けられない。韓国のメンバーだってだってそう思ってる。どうやるか。それと中国は嫌がるだろうから、そこをどうするか。」などと会話。23時ころ帰宅。

8/26(日)
朝、掃除をしていてふとしたはずみで左の人差し指をドアに挟んでしまった。結構深い傷で、肉が見えて血が止まらない。年で体の反応が鈍くなったのではなくて、これは生来の粗忽のせいだ。不覚だ。しばらくPCなど不自由しそう。

NHK-BSで「巨大戦艦 大和」の再放送。再現ドラマが冗長の印象があるが、今ではそれも必要な情報であり、方法でもあるのだろう。
見ながら、日韓・日中の昨今の情勢などを思いつつ、突然「人の命、一人の人生を国家の一色に染められては堪らない」と激しく思った。若者たちがアジアの近代史をちゃんと知るとともに、「一色」から解放された生き方をしてほしいと思う。それだけがこの国の希望だ。若しかしたら、この国は「国のために命をささげるなんてヤナこった」と若者たちが“軟派的に”言い出す最初の近代国家になるかもしれない。ポストモダンとはこのことか・・・(硬派的にはアメリカのベトナム反戦運動?)。

8/27(月)
FBを眺めていたら報道特集の金平君がニュースバードの“ニュースの視点”で「シリアで死亡したジャーナリスト山本さんのことなどを議論しました」と再放送予告をしていた。21時からの「戦争ジャーナリストの倫理と限界」をみる。“伝えることで変わる=変えられる可能性”、“構図あるいは文脈の中で映像の意味を読み解く”、“誰が撮った映像か、その責任性=署名性?が大事”、“ジャーナリズムは国籍を超えられるか” などの論点指摘は鋭いがもう少し踏み込んで欲しかった。重信メイさんの骨太率直なコメントをもっと聞きたかった。

 8/28(火)
友人高橋徹と明治記念館ビアガーデン。
黄昏、薄暮、宵闇と変わりゆく空の下でのビールは美味い。
昨今の情勢から酒の品定めまで、友人との放談は良いものだ。

8/30(木)
朝日新聞「論壇 新しいデモ 変える楽しみ社会は変わる」で高橋源一郎が書いている。
「報道ステーション」に出演していて、尖閣問題にコメントを求められたので「そんなことは、どうでもいい問題のように思う。『領土』という国家が持ちだした問題のために、もっと大切な事柄が放っておかれることがもっと心配だ」と答えて、帰宅したら、ツィッタ―のアカウントに「非国民」「国賊」など罵倒と否定の言葉が躍っていた、そうだ。そしてこう書いている、「国家と国民は同じ声を持つ必要はないし、そんな義務もない。『国民』である前に『人間』なのだ。」と。
強く共感する。それにしても高橋源一郎という人は骨太で繊細で度胸もある。感心した。

「あやとりブログ」に「国家・メディア・<鎖>」についての論点整理/未整理とあれこれ思ったこと」を投稿 。

8/31(金)
8月も今日で終わる。
残暑は厳しいが、朝晩は風も雲もどこか秋の気配。
気がつけば陽が短くなっている。

本文と関係ないけど、ぼくのデスクダイニング・テーブルを仕事机にしている。

 前川英樹(マエカワ ヒデキ)プロフィール
1964 年TBS入社 。TBS人生の前半はドラマなど番組制作。42歳の ある日突然メ ディア企画開発部門に異動。ハイビジョン・BS・地デジとい うポストアナログ地上波の「王道」(当時はいばらの道?)を歩く。誰もやってないことが色々出来て面白かった。その後、TBSメディア総研社長。2010 年6月”仕事”終了。でも、ソーシャル・ネットワーク時代のテレビ論への関心は持続している・・・つもり。で、「あやブロ」をとりあえずその<場>にして いる。
「あやブロ」での通称?は“せんぱい”。プロフィール写真は40歳頃(30年程前だ)、ドラマのロケ現場。一番の趣味はスキー。ホームゲレンデは戸隠。

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