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201110/12

「モテキ」面白かったヨ!!  ―若い友人を持つこと良いことだ― 前川英樹

「あやブロ」に公開されていないけれど、あやとり手の諸兄、阿部、須田、志村君たち(今回は< さん>ではなく< 君>というのががいい)に薦められて映画「モテキ」を見てきた。
志村君の「あやブロ」を読んで、何だがシュールな世界に連れて行かれるのかと思ったが、そんなことはなかった。とはいえ、もちろん彼らや、あるいは本当の「モテキ」ファンであろうもっと若い人たちと同じように見られるはずもない。彼らがどう見たのかは、僕の知るところではない。
それにしても、結構楽しんだ。
敢えて、何の予備知識も持たずに見た。ネットで調べることも、上映前にパンフレットを読むこともしなかった。モテキというコトバも知らなかったが、それも調べなかった。時間丁度にシネコンの座席に座り、ほどなく始まった。最初の20分くらいだろうか、どういう仕掛けで来るんだろうかという、監督と客の探りあいの間、ちょっとした途惑いもあったけどそれを過ぎれば、なんてことはない。
で、これって、ストーリーとしては純愛もののパターンのうちだろう。わかりやすいけど、でも切なくて、とてもよく出来てる。演出のテンポも切れがいい。映像もイイ感じだ。
何よりも、サウンドがいい。ある時期から、流行りの< 音>を聞かなくなった。テレビで音楽番組が減った時期だろうか。それは音楽業界の業態の変化と関係あるだろうし、何よりも「何を歌ってんだか、(歌詞が)わからない」と思ったことにもよる。しかし、「モテキ」を見ていて、字幕に出てくる歌詞を見ながら聞いていれば、まことに自然に分かりやすく自分たちの< 気持>を歌っている。何だ、みんな素直なんだ、と納得した。メロディーも、リズムもそのまま入ってきた。もちろん、志村君のように「耳について離れない」なんてことはなくて、どんどん通り過ぎてしまったのはしょうがない。ダンスも含めて、かつて日本のミュージカルはひどいなぁと思ったけど、やればチャンとできるじゃないかとも思った。それと、飛び蹴りのシーンは秀逸だった。彼女、イイネ!
何よりも、映画に登場する若者たちが少し眩しく感じられ、羨ましいも思った。
ぼくのもっとも長い付き合いの女友達がロンドンで暮らしていて、ときどき日本に帰ってくる。そのとき、「ねぇ、あなたたちは”いまの日本の若い人たちはほんとにダメだ”と思ってるだろうけど、たまに戻ってきて私が思うのは、大人のほうがもっとダメよ。若い子たち、結構チャンとしてるわよ」というのだ。「モテキ」をみて、そんなこともふと思ったりした。

で、それなりに楽しんで映画館を出てみれば、「それまでのこと」なのだが、そういう映画として受け止められたのは、ぼくにとって大成功だと思う。見てよかった。と、ぼくが思ったということは、大成功の映画からみればささやかな一つの小成功だろう。
もしも、不満ということを言うならば、こういうことだろう。
実は、たとえ拒否感を伴うものでも、もっとシュールなもの、過戟なものをどこかで期待してた(らしい)のは、こちらの思い過ごしだったのか。それとも、ひょっとして「モテキ」はやっぱり本当はシュールで過激だったのか、そこはよくわからない。かつて、< 過激な映像>といえば、西のゴダール、東の清順(鈴木)だったけどね。

ついでに、「幸世クンでは、あたし成長しない」といっていたみゆきが、彼の愛を受け入れたということは、成長より愛が大事っていうことか。愛より成長を選ぶ物語りだと、一瞬思わせるほど、その前の別れのシーンは良かった。客をだますのだから、良くできた映画なのだ。でも最後に「物語はまだ終わっていない」と言ってたように思ったのだけど、それは聞き違いか・・・。聞き間違いでなければ、次の物語が始まっているはずだ。

阿部、須田、志村、そして河尻、の諸君、そして(若くはないけど)氏家君、君たちがいなければ、この映画は見なかっただろう。見てよかった、と思えたのは君たちのおかげだ。世界というか世間というか、それが少しでも広がるのはいいことだ。仮に、それが誤解であるにせよ、誤解も理解のうちなのだから、それでいいのだ。若い友人を持つことは良いことだ。サンキュー!!!

ついでに、上映後にパンフレットを買って読みだしだか、どうしてこんなに字が小さいんだ、目の良い人だったらみにくいだろう。読ませたくないのだろうか。まことに不親切だ。

(写真 「ぼくの中のモテキ」)

 

 

 

 

 

 

 

前川英樹(マエカワ ヒデキ)プロフィール
1964年TBS入社 <アラコキ(古希)>です。TBS人生の前半はドラマなど番組制作。42歳のある日突然メディア企画開発部門に異動。ハイビジョン・BS・地デジというポストアナログ地上波の「王道」(当時はいばらの道?)を歩く。キーワードは“蹴手繰り(ケダグリ)でも出足払いでもいいから NHKに勝とう!”。誰もやってないことが色々出来て面白かった。でも、気がつけばテレビはネットの大波の中でバタバタ。さて、どうしますかね。当面の目標、シーズンに30日スキーを滑ること。

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