『ウォーキングデッド』に見る放送と配信の幸福な共存
それにしても、この話は放送と配信の幸福な共存事例です。そして放送と配信、それぞれのよさを感じさせてくれました。
huluにはもう何万もの番組が置いてあります。だからこそ、ゾンビものに限って見放題を娘は堪能しました。そしてだからこそ、『ウォーキングデッド』というゾンビドラマ史上最高の人間ドラマと巡り合えたのです。この作品を彼女が“発見”できたのは、配信サービスならではと言えるでしょう。
一方、『ウォーキングデッド』の最新シリーズは放送で楽しんでいます。毎週毎週、楽しみにしていて、残酷度が強い回には「今日のは面白かった」と大いに満足しています。毎週、決まった時間を待つ楽しさ、生活の中にもたらさせるうるおいのリズムが放送の醍醐味です。
放送後はhuluに蓄積されていき、もう一度見直したり、前のシーズンを確認できたりします。最新回では一番最後にシーズン3で最大の敵だった人物がちらりと登場し、huluで彼が登場するエピソードを確認したくなりました。
聞くところでは、アメリカに限らず、番組のネットでの配信は多くの国で普通のことになっているそうです。その方が視聴者にとって便利だし、番組を送り出す側にとってもコンタクトポイントを増やすチャンスとなるので、やった方がいいわけですね。
放送は何曜日の何時とサイクルが決まってるのがいいところですが、だから逆に発見されにくいデメリットもあります。その曜日その日時にそのチャンネルに回す機会がないと、番組と出会うことはありません。その欠点を配信は埋めてくれる可能性がある。少なくともわが家ではhuluがないとFOX TVで『ウォーキングデッド』を見るようにならなかったでしょう。地上波はもう少し出会いやすいでしょうが、大きく見れば同じだと思います。とくに若い人はぼくらの世代のように一日中テレビをつけておくなんてしませんから、番組と出会う機会は我々の世代よりずっと少ないでしょう。
日本では鉄道網が敷かれていて便利とは言え、やはりクルマと組み合わせた方がもっともっと便利。鉄道的で放送が強い国、日本でも、映像のモータリゼーション、配信サービスの普及はどんどん進めるといいと思います。
境 治 プロフィール
フリーランスのコピーライターとして長年活動したのち、映像製作会社ロボット経営企画室長・広告代理店ビデオプロモーション企画推進部長を経て再びフリーランスに。2011年7月に『テレビは生き残れるのか』を出版。
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コメント
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