あやぶろ/OLD

テレビの中の人による唯一のテレビ論、メディア論ブログ

© あやぶろ/OLD All rights reserved.

20139/3

テレビの未来⑥:テレビ局はメディア・サービス企業へ進化する・前編

これから新たに開発するサービスも含め、数多くのサービスは、ユーザーが次から次へとストレスなく楽しく使えるように、精緻に繋ぎ合わせなければならない。それによって、テレビ局が提供する様々なサービスを複合的有機的に体験してもらい、ユーザーに、楽しい経験や高い満足感=UX(ユーザー体験)を感じてもらわなければならない。そのためには、それぞれのサービスの提供の仕方や使いやすさといったUIはもちろん、多くのサービスをどうやってつなぎ合わせて行くのかが非常に重要になる。これを「サービスデザイン」という。

 

AppleやGoogle、Amazon、任天堂、Facebook、Twitter、LINEなどの先進的企業は、サービスデザインを使ってUXを高めることが大きな利益につながることを理解している。テレビの未来は、これらのネットサービスと競合し、負けないようなUXを提供するサービスデザインができるかにかかっている。

 

 

 

*UX(ユーザーエクスペリエンス)

 

UIという概念は、操作感や使いやすさといった個々の要素に着目して使われるが、UXはより包括的な、製品やサービスの使用・消費・所有などから得られる体験の総体を意味する概念だ。製品やサービスを利用する過程を重視し、ユーザーが真にやりたいこと(本人が意識していない場合もある)を「楽しく」「面白く」「心地よく」行える点を、機能や使いやすさとは別の“提供価値”として考えるコンセプトだ。
このUXをいかに高めるか、いかに独自のUXをユーザーに提供できるかが、今のインターネット企業のサービスの重要な物差しになっている。 テレビに当てはめると、番組を見て笑ったり感動したりすることはUXの領域ではない。

 

サービスとしての現在の地上波テレビに限定すると、UXは、例えば以下のようなものだ。

  • 番組を見る動機付けは十分なものであり連携がとれているか。例えば、新聞のテレビ欄や電子番組表、友人との会話、ソーシャルメディア上での評判等のデータを把握し、効果的なPRを行っているか。
  • その動機付けからどれだけスムースに視聴に結びつけることができるか。
  • 視聴の際、セカンドスクリーンなどを利用した付加サービスはあるのか。
  • 番組を見て感じたことを、すぐにネット上で共有できるようになっているか。
  • 番組を見逃してしまった場合のフォローができているか。
  • 番組視聴中に、ユーザーが興味を持った事柄に関する情報が、ストレスなく得られるような仕組みがあるか。
  • ユーザーを番組の友達にするようなソーシャルメディア上での活動を、普段から実行しているか。
  • いつでも、どこでも見たいというユーザーの欲求に応えているか。

 

 

サービスとしてのテレビを体験した時に、例えば上記の項目でユーザーが感じる満足感がテレビのUXだ。UXが劣っていると、ユーザーは他のサービスに移ってしまう。これが今起きているテレビ離れという現象だ。
サービスデザインによって、使っていてワクワクできるようなUXをユーザーに提供できれば、離れて行ってしまったユーザーを引き戻すことができるし、テレビの未来は明るいものになる。

 

 

 

 

ページ:
1

2

3
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

20146/18

そこに、パースペクティブ=展望はあるか?2014年の論点⑤

停滞する民主主義が進化する途 ワールドカップの中継番組の瞬間最大視聴率が50.8%だったそうです。このニュースを見…

20146/18

そこに、パースペクティブ=展望はあるか?2014年の論点④

ストレンジなリアリティー:ガンダムUC ep7を見て考えたこと 『機動戦士ガンダム』は30年以上前に、フォーマット…

20146/17

情報“系”の中のテレビジョン

6月は、いろんなことがある。 会社社会では6月は大半の会社の株主総会の季節だから、4月の年度初め、12月の年末とともに一つの区切りの季節だ…

20146/16

テレビというコミュニティ。あやブロというコミュニティ。

あやとりブログに文章を書くようになってかれこれ二年以上経ちました。2011年に出した『テレビは生き残れるのか』を読んでくださった氏家編集長か…

20146/13

ワンセグ全番組タイムシフト視聴は視聴率を下げるのか検証してみた〜ガラポンTV視聴ログより

リアルタイムの放送をテレビで視聴する人が増えることは良いことです。 言うまでもなくこれは「視聴率が上がる」ことを意味します。 &nb…

ページ上部へ戻る