テレビの未来⑥:テレビ局はメディア・サービス企業へ進化する・前編
これから新たに開発するサービスも含め、数多くのサービスは、ユーザーが次から次へとストレスなく楽しく使えるように、精緻に繋ぎ合わせなければならない。それによって、テレビ局が提供する様々なサービスを複合的有機的に体験してもらい、ユーザーに、楽しい経験や高い満足感=UX(ユーザー体験)を感じてもらわなければならない。そのためには、それぞれのサービスの提供の仕方や使いやすさといったUIはもちろん、多くのサービスをどうやってつなぎ合わせて行くのかが非常に重要になる。これを「サービスデザイン」という。
AppleやGoogle、Amazon、任天堂、Facebook、Twitter、LINEなどの先進的企業は、サービスデザインを使ってUXを高めることが大きな利益につながることを理解している。テレビの未来は、これらのネットサービスと競合し、負けないようなUXを提供するサービスデザインができるかにかかっている。
*UX(ユーザーエクスペリエンス)
UIという概念は、操作感や使いやすさといった個々の要素に着目して使われるが、UXはより包括的な、製品やサービスの使用・消費・所有などから得られる体験の総体を意味する概念だ。製品やサービスを利用する過程を重視し、ユーザーが真にやりたいこと(本人が意識していない場合もある)を「楽しく」「面白く」「心地よく」行える点を、機能や使いやすさとは別の“提供価値”として考えるコンセプトだ。
このUXをいかに高めるか、いかに独自のUXをユーザーに提供できるかが、今のインターネット企業のサービスの重要な物差しになっている。 テレビに当てはめると、番組を見て笑ったり感動したりすることはUXの領域ではない。
サービスとしての現在の地上波テレビに限定すると、UXは、例えば以下のようなものだ。
- 番組を見る動機付けは十分なものであり連携がとれているか。例えば、新聞のテレビ欄や電子番組表、友人との会話、ソーシャルメディア上での評判等のデータを把握し、効果的なPRを行っているか。
- その動機付けからどれだけスムースに視聴に結びつけることができるか。
- 視聴の際、セカンドスクリーンなどを利用した付加サービスはあるのか。
- 番組を見て感じたことを、すぐにネット上で共有できるようになっているか。
- 番組を見逃してしまった場合のフォローができているか。
- 番組視聴中に、ユーザーが興味を持った事柄に関する情報が、ストレスなく得られるような仕組みがあるか。
- ユーザーを番組の友達にするようなソーシャルメディア上での活動を、普段から実行しているか。
- いつでも、どこでも見たいというユーザーの欲求に応えているか。
サービスとしてのテレビを体験した時に、例えば上記の項目でユーザーが感じる満足感がテレビのUXだ。UXが劣っていると、ユーザーは他のサービスに移ってしまう。これが今起きているテレビ離れという現象だ。
サービスデザインによって、使っていてワクワクできるようなUXをユーザーに提供できれば、離れて行ってしまったユーザーを引き戻すことができるし、テレビの未来は明るいものになる。
コメント
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