テレビの未来⑥:テレビ局はメディア・サービス企業へ進化する・前編
*重要なのは、サービスデザインによる地上波テレビの再活性化
テレビ局は基幹となる地上波テレビの番組という価値の高いコンテンツを元に様々なサービスを展開しており、それらは「放送外事業」と分類されている。しかし、高いUXをユーザーに提供するという視点で開発してゆく新たなネットサービスを、放送外事業の中の一つと位置づけてはいけない。地上波テレビと同様、テレビ局の中核として、社内のリソースを集中させなければならない。
なぜなら最も重要なのは、衰弱しつつある地上波テレビを再び元気にすることだからだ。そのために必要なのが、サービスデザインだ。サービスデザインによって、基幹事業である地上波テレビをハブに、ソーシャルメディアやスマートテレビと密接に連携したメタデータ・プラットフォームや、簡易型全録機を利用した見逃し視聴サービスなど、様々なサービスを結合させるのだ。
番組の2次利用だけではなく、番組とネットを複合的に連動させることにより、新たなUXを生み出し、テレビから離れつつあるユーザーをもう一度、地上波テレビに引き戻す。サービスデザインによって、最も効率の良いビジネスである地上波テレビを再活性化し、広告媒体としての価値を高めることで大きな利益を生み出すのだ。
サービス化するのは番組だけではない。当然、CMの在り方も変わってくる。これまでの視聴者が見て聞くだけのCMから、ユーザーに使ってもらえるCMへ、ユーザーに楽しんで遊んでもらえるCMへと変化して行く。CMすらもサービス化し、サービスデザインの対象となる。
CMのサービス化は、スマホやタブレットなどセカンドスクリーンとテレビ放送との連動や、スマートテレビの普及によって、ある時点から急激に拡大すると思われる。キャズムを超えるのは、意外に近い未来ではないだろうか。
視聴者はユーザーとなり、テレビはサービスとなり、テレビ局はサービスデザインによって地上波放送を中核にした様々なサービスをシームレスに結合させ、ユーザーに高度なUXを提供するメディア・サービス企業へと進化してゆかねばならない。
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「テレビ局はメディア・サービス企業へ進化する」前編はここまで。
後編の『テレビの未来⑦』では
*インターネット企業の経営戦略を利用する
*テレビしか知らない人には、未来のテレビは作れない
*オープンプラットフォームによる共創の思想
について述べる。
氏家夏彦プロフィール
株式会社TBSメディア総合研究所 代表取締役社長 テクノロジーとソーシャルメディアによる破壊的イノベーションで、テレビが、メディアが、社会が変わろうとしています。その行く末をしっかり見極め、テレビの明るい未来を探っています。
1979年TBS入社。報道(カメラ、社会部、経済部、政治部等)・バラエティ番組・ワイドショー・管理部門を経て、放送外事業(インターネット・モバイル、VOD、CS放送、国内・海外コンテンツ販売、 商品化・通販、DVD制作販売、アニメ制作、映画製作)を担当した後、2010年現職。
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コメント
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