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201012/10

「“リア充”って言葉を知ってますか?」― 氏家夏彦

前川先輩が、また面白い事を始めました。「せんぱい日記」…なかなか思うように更新頻度が上がらない中で、日記というそれ程構えないで書ける形式で、うまく“あや”をとってやろうじゃないかという心遣い、ありがたいです。

ところで今回のタイトルにある「リア充」、私は既に普通に使われる言葉になっていると思い込んでいました。ところが先日、テレビの現場で働く若手から中堅の人たちと飲む機会があり、会話の中で「リア充」という言葉を出したところ、中堅から「それ、なんすか?」と言われ驚き、周りに聞いてみると若手も含め知らない方がずっと多いという信じられない事態となったのです。同席していた若い女性スタッフ数人は当然知っており、顔を見合わせて「ホントに知らないんだ・・・」と驚いていました。

テレビの現場は想像以上に忙しく厳しいもので、仕事以外に何かをする時間も余裕もないのが普通です。私も昔、流行っている歌を知らなくて外の人から呆れられたことがあります。テレビの仕事をしている人は誰でも同じような経験をしているはずです。
だから今回の事も別に驚くようなことではないのかもしれません。単に一つのコトバを知らないというだけですから。しかし私は「これはヤバイ」と感じてしまうのです。案の定「リア充」を知らない人はSNSもツイッターもネトゲーもしたことがありませんでした。

インターネットとパソコン・携帯など様々なデバイスの革命的な進化・発達によって、従来のテレビが苦しい状況に追い込まれているのは明らかです。テレビを見る時間を削って、パソコンや携帯で動画を見る、ソーシャルネットワークゲームを楽しみ、SNSでコミュニケーションをとるという人は確実に増えている…というより、もう普通になっています。
メディアという環境が激変している中で、視聴者(=ユーザー)の生態系も大きく変化しています。視聴者、特にメインターゲットであるTeen、F1、M1層がどのようにインターネット・携帯上のサービスを使いこなし、楽しんでいるか。その変化の様子を知らずにテレビ番組を作るというのはとても危険な気がするのです。本来テレビの制作者は最先端の時代感覚を必要とします。ところが、作り手側の感じる面白さと、視る側が感じる面白さがどんどん乖離していってしまう、そんな危険に直面しているのではないでしょうか。流行歌を知ってる知らないとは次元の違う問題です。

テレビの現場の人たちが皆、ネットや携帯のサービスに疎いという訳ではありません。もちろん、ツイッターもフェイスブックも使いこなし番組と連動させている人だってたくさんいます。ただ同じメディアで仕事をしていても、テレビに対して抱く危機感は人によって大きな落差があるのも事実です。

10年後、どのような世界になっているのか想像もつきません。しかしどうなっているにせよきっと「あの頃がターニングポイントだったんだ」と思い返すような時代の真ん中にいるような気がするのです。

氏家夏彦プロフィール
1979年TBS入社。報道・バラエティ・情報・管理部門を経て、放送外事業(インターネット・モバイル、VOD、CS放送、国内・海外コンテンツ販売、商品化・通販、DVD制作販売、アニメ制作、映画製作)を担当した後、2010年TBSメディア総合研究所社長。月に150km走るのが目標です。週末はセーリングに出てます。はっきり言ってゲーム・アニメは大好きです。ツイッターぼちぼちやってます。

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