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201012/10

「出自の物語とメディア論の原風景、そして村木良彦の『ぼくのテレビジョン』」 せんぱい日記② ― 前川英樹

11月29日(月)
「GALAC」に書評原稿送る。
「我的日本語」(リービ英雄/筑摩選書)読了。日本人は漢字という外国語文字に出会い、その外国語で日本語を表現した…そうか、そうなんだよな、それは結構大変なことなんだ…。それって、ぼくたちの思考と表現にどのような痕跡を残しているのだろうか。そして「純」日本的というのは何なのか、それがあるとしてそれはオリジナルではなくてブレンド能力なのかもしれない。それで何か不都合があるかといえば、何もないであろうとも思った。そういえば、ガラパゴスという商品が出るという。

11月3日(火)
「演出部OBの喜寿を祝う会」(略称「演出部OB会」)に出席。喜寿を迎える人がどんどん増えて珍しくなくなったので、会の名前を変えようかという話題になる。
終了後、今野勉さんと近くのバーで歓談。今野さんにおける< 秋田から北海道の炭鉱への移住>とぼくの< 鎌倉と旧中間層の没落>とは相当に違う世界なのだが、夫々に自分の出自についての拘りということで色んな会話をした。自分の出自に< 物語>を発見すること、それが表現者=メディア論の”原風景”であるように思うのだ。

12月1日(水)
「それでもテレビは終わらない」(今野勉・是枝裕和・境真理子・音好宏/岩波ブックレット)を読む。村木良彦についての思いは、メディアノートに書いた(No.91,92,93.及び110.また、「おまえはただの現在にすぎない」再刊についてはNo.108,109.を夫々クリック)。村木さんについて、色んな人が夫々の目線で発言している。それだけの存在感のある人だったということだ。村木さんと短いけれど強い緊張関係の時期を経験したぼくは、こうした発言を聴いたり読んだりして、その存在感を改めて受け止めている。ただ、そこに一つだけ物足りなさがあるとすれば、村木さんの思考が最も直截的に籠められている「ぼくのテレビジョン」(田端書店/1971年)のことが触れられていないことだ。テレビマンユニオン設立直後に出版されたこの本には、村木さんがテレビについて語り始めた原点からTBS闘争を経てテレビマンユニオン結成に至る時期に、村木さんが疾走しながら感じたたこと、考え抜いたことが同時代的考察として記録されている。この本=記録は村木良彦を語るためには欠かせないのだが、これについて誰も発言していない。ネットで調べると古書店にもない。復刊は難しいだろう。だが、村木さんのメディア論を語り継ぐためにも図書館ででも見つけて読みこなしてほしい。

12月火4(土)
TBSの先輩でスキーの師匠でもある村上望(通称ホープさん)さん宅で、“リホーム3周年&村上さんの喜寿を祝う”パーティーに参加。TBSの社情や報道番組の構成を長く担当した和泉次郎さんやNHKのディレクターOB、児童文学の翻訳家、元女優、染色デザイナー、など今年還暦が最年少という顔ぶれだった。繋がりは、ホープさんやぼくが40年通っている戸隠の樅の木山荘。ゆったりして、取りとめのない時間が過ぎて行く良い集まりだった。ホープさん宅のリホームを担当した女性スタッフばかりの設計事務所が、世話役。

12月5日(日)
明日から自宅の内装工事のため、書棚や食器棚の整理。ここ(鶴川)に住んでもう15年経つ。

須田さんの「コンテンツはメディアを選ぶ」のあや取りを忘れてしまった。次回。

TBSメディア総合研究所“せんぱい” 前川英樹

前川英樹(マエカワ ヒデキ)プロフィール
1964年TBS入社 < アラコキ(古希)>です。TBS人生の前半はドラマなど番組制作。42歳のある日突然メディア企画開発部門に異動。ハイビジョン・BS・地デジというポストアナログ地上波の「王道」(当時はいばらの道?)を歩く。キーワードは”蹴手繰り(ケダグリ)でも出足払いでもいいからNHKに勝とう!”。誰もやってないことが色々出来て面白かった。でも、気がつけばテレビはネットの大波の中でバタバタ。さて、どうしますかね。当面の目標、シーズンに30日スキーを滑ること。

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