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201012/6

「共同通信原氏と一献傾け、放送人の会幹事会に出席し、川喜多映画記念館に行って来た」“せんぱい日記”① ― 前川英樹

 あや取りというのは始めて見るとなかなか難しい。名付け親として「あやプロ」が上手くいくように色々考える羽目に陥った。で、取り敢えず少しまとまったコメントとは別に日録風の記事を立ち上げて“せんぱい日記”と名付け、こまめなあや取りという手を考えた。こっちの方がブログ的なような気もする。

11/22(月)
共同通信原真記者と一献。村上久仁子記者も同席。6月に仕事が終了したときに、「では、お疲れ様会をやりましょう」とお誘いを受けていたのが、いろんな事情での延び延びとなりやっと実現。二人とは取材者-被取材者の関係を少し超えた会話をこれまでも交わしてきた。こういう関係はべたべたし過ぎず、と言って儀礼的でもなくなかなか良い。ネットとテレビ・新聞などのことや、最近の民放事情(つまり、ちょっとヒドイよね)、そして情報通信行政のことなど。
この日、「あやプロ」に二人のあや取り手が登場した。一人は志村一隆氏、もう一人は須田和博氏。志村氏の新著「ネットテレビの衝撃」の書評を“GALAC”編集部から頼まれていて、字数との関係でどの手で行こうか悩んでいる。次号“GALAC”を参照して頂きたい。志村氏とはこれまで2度ほど懇談。頭脳明晰で、話も面白い。それだけに、“分かり過ぎの危うさ”を感じる。分からないこと、あるいは自分とは違う分かり方があるから面白いのだ。須田氏はクリエーターだけあって、アナログ的にデジタルに迫っている感じがする。「メディアを語るように、メディアを作れ」って良いけど、でも逆に「メディアを作るように、メディアを語れ」っていうのもありではないか。それが批評というものを成り立たせる唯一の方法のような気がする。29日の須田氏の< あや>は次回にとることにする。

11/26(金)
「放送人の会」幹事会。この会は2年前に入会した。それまでは、なんとなく<200勝投手・2000本安打>の「名球会」みたいな感じがして、やや敬して遠ざけていた気味があった。もちろん、なかなかの名プレイヤー揃いだ。こういう集合を見ていると、組織と個人の関係というのがそれなりに見えて面白いような困惑するような場面に出会う。やる気があって、面白いと思った人が< 何か>をやる、という運動イメージは悪くない。
そういえば、高校時代にサッカー部にいて、都立高校の運動部が下降線に入った時代だったのだが、ある時部室で「俺たち一人一人は上手くないんだからチームプレーで行くしかない」というような話をしていたら、それを聞いていた先輩に「それは違う!下手でも良いからまず個人技を磨け。個人技なくしてチームプレーなし!」と一喝されたことを思い出した。因みに、ぼくは高校卒業時に都の高体連から体育優秀賞で表彰されて、本人がビックリしたのだった(但し、各校一人表彰されたらしい)。
ともあれ、テレビ的表現は組織と個人が葛藤するところに成立する。どうやら最近のテレビが失っているのは、そういう葛藤ではないのか。

11/27(土)
鎌倉の「川喜多映画記念館」に行って来た。理由はいくつかある。まず、小津安二郎の展示がそろそろ終わりそうだということ、この日は小津関係の本の編著者である田中眞澄氏の講演があること、そして鎌倉は4歳から14歳まで暮らした土地で、少年時代の住まいのあたりを久々に訪ねてみたかったこと、などである。
実は小津安二郎はぼくの母の従兄弟であり、そのことを知ったのはずっと後、30も半ばになってからであった。何んでそういうことになってしまったかはチョット入り組んだ事情があり、ぼくの人生の前半戦は結構ドラマチックなのである。
それはともかく、60年前の少年時代の記憶を頼りに「ココに路地があって、それを入るとアレが見えて…」と思って歩いて行くと、確かにそうなのだった。街並みも建物もすっかり変わっても、通りの地形や曲がり具合はほぼそのままでチョット感動した。ぼくが鎌倉で二度目に住んでいた家の裏手に「中井」という表札がかかった家があり、それが俳優佐田啓二(中井貴一の父)の家で、「ああ、ココだった」などと記憶の確認をしながら散策、というより徘徊した。往時茫々というが、幼稚園や小学校への道を辿りつつ、風景と心理のアレコレを反芻した。
いま、メディア論として様々なことを思いつつノートしているが、そのことと少年時代のドラマチックな人生の幕開けとの関係を突き合わせてみたいという思いは強い。「メディア論の原風景」とでもいうべきものを描くことが、ぼくのこれからの“仕事”のような気がしてきた。

今回は少しまとめたので長くなってしまった。次回からは日々を簡略にしようと思う…が、そうなるかなァ。

< あや取りプロガー>ではないのにお名前を登場させてしまった方々、ごめんなさい。これを機会にあや取りに参加して頂けると嬉しいです。

TBSメディア総合研究所“せんぱい” 前川英樹

前川英樹(マエカワ ヒデキ)プロフィール
1964年TBS入社 < アラコキ(古希)>です。TBS人生の前半はドラマなど番組制作。42歳のある日突然メディア企画開発部門に異動。ハイビジョン・BS・地デジというポストアナログ地上波の「王道」(当時はいばらの道?)を歩く。キーワードは”蹴手繰り(ケダグリ)でも出足払いでもいいからNHKに勝とう!”。誰もやってないことが色々出来て面白かった。でも、気がつけばテレビはネットの大波の中でバタバタ。さて、どうしますかね。当面の目標、シーズンに30日スキーを滑ること。

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