5・14【遅ればせながら「ニコニコ超会議に行って来た」を書いてみた②】 氏家夏彦
『遅ればせながら「ニコニコ超会議に行って来た」を書いてみた①』の続きです
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次は「踊ってみた」ジャンル。初期のニコニコ動画では、アニメのエンディングで主人公などのキャラが楽曲に合わせて踊るのをコピーし、自分たちで踊る様子をアップする人たちが現れた。例えば「ゾンビーズ」や「47」というユーザーネームの投稿者だ。アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」のエンディング曲「ハレ晴レユカイ」や、アニメ「らき☆すた」のエンディング曲「もってけセーラー服」の動画が人気を呼んだ。ゾンビーズはニコニコ動画で有名になり、早稲田大学の学園祭にも呼ばれたりした。
(ゾンビーズの「ハレ晴レユカイ」動画http://www.nicovideo.jp/watch/sm158909)
(47の動画再生数は147万回!http://www.nicovideo.jp/watch/sm1709519 )
(ゾンビーズが早稲田祭に登場した動画http://www.nicovideo.jp/watch/sm1469246)
今では、ゾンビーズの「もってけセーラー服」はニコニコ動画には存在しない。(ユーチューブで発見http://www.youtube.com/watch?v=B0AxIPuY_Gk )
これらの動画はもう4〜5年前のものなので今では神話扱いをされている。
さて超会議の「踊ってみた」では、今、ニコニコ動画で人気のあるタレントさん(?)たちが高さ50センチほどの舞台の上で踊り方をレクチャー、何百人かの「踊ってみた」大好きなユーザーたちがそれを覚え、最後に一緒に曲とともに踊るという催しが行われていた。この踊りがかなり難しそうにも関わらずユーザー達はとても上手。おそらく動画を見て練習しているのだろう。
この「踊ってみた」から数十メートルしか離れていないところに「歌ってみた」のコーナーが設置されている。これはサイバー空間で行われていた素人のど自慢を、リアルの世界に移した・・・つまりただの全員飛び入りの素人のど自慢だ。コンテンツがリアルからネット(ニコニコ動画)に移りまたリアルに戻ってくる…しかしその過程でパワーは何倍にも増加している。また考えなければならない事ができたような気がする。
さて次は「言論コロシアム」というコーナー。あるテーマを皆で議論しようというもの。この時は「クールジャパン作戦会議」というテーマで枝野大臣を交え、津田大介氏が司会、ドワンゴ川上会長も加わった。内容は、、、あまりありませんでした。時間も40分程しかなかったし。それより、川上会長がつけていた猫耳が面白そうだった。
(右から3番目が枝野大臣、その右がネコミミを付けた川上会長)
装着した人の脳波を感じて、猫の耳が動くというもの。何の役にも全く立たないが面白い、というか、経済産業大臣の前でそれをつけていることも面白い。ニコニコ動画で売っている。
http://nicoshop.nicovideo.jp/necomimi/
言論コロシアム、次のプログラムは「激論!メディアのジレンマ」で、出演は田原総一郎、池田信夫、佐々木俊尚、津田大介、土屋敏男、茂木健一郎、川上量生、夏野剛、他。こちらの方が面白そうだった。
この言論コロシアムのブースはニコニコ動画のカオスぶりを象徴している。大臣を交え議論しているすぐ脇では(すぐ脇というよりほぼ同じ場所と言った方が正しい)、「超あぶない!ニコ生ナックルズ」というアンダーグラウンドなブースで、こちらのトークの方が聴衆が盛り上がっていた。
HALL7に入ると、そこではロックコンサートが開かれていた。
コンサートの大音量とぎっしり埋まった聴衆の大歓声の脇では自衛隊がブースを出していた。この組み合わせが、いかにもニコニコ動画だ。軽装甲機動車というのも展示されていた。
結局4時間近く見て回った訳だが、これはニコ厨(ニコニコ動画ファン)にはたまらないイベントだろう。だが知らない人は、何が面白いのか全くわからない。「踊ってみた」や「歌ってみた」、「ゲーム実況」など細分化されたジャンルでユーザーがここまで盛り上がる事は、ニコニコ動画以外ではあり得ない。超会議に来る前は、この盛り上がりもあくまでネットの世界でのこと、あくまでバーチャル空間でのことだと思っていた。しかしこれがリアルでも盛り上がる事がわかってしまった。それがニコニコ超会議で判明してしまった。
ニコニコ動画の中ではジャンルがどんどん細分化され、新しいジャンルが次々生まれ(「例のアレ」、「絵師」http://www.nicovideo.jp/watch/sm2837818 など何だかわからないものもある)それぞれに根強いファンがついている。ユーザー自身がニコニコ動画の中でその世界を拡大させ進化させ成長させてきた。興味、関心は狭くニッチになり、自分の好きな範囲から外れると関心をもたない。インターネットの世界では、ユーザーが、ニッチな自分の好みにフィットし楽しめるバーチャル空間を次々生み出し領土を拡大している。ネットは無限だ。
一方、マスを対象にするしかないテレビは、数百人、数千万人が見たいと思うようなコンテンツを作ろうとして、もがき苦しんでいる。しかしネットで自分の我が儘な興味が満たされるのに慣れてしまったユーザーは、一般受けするコンテンツにはあまり惹かれない。
ニコニコ動画が誕生した時点で、テレビはそのコンテンツをどんどん流して席巻してしまえばよかった。しかしテレビは、違法動画を流すサイトとして、自らのコンテンツを駆除してしまった。それが逆に功を奏して、ニコニコ動画ではテレビに頼らないコンテンツが次々生まれ、それを楽しむユーザーが急激に増え独自の文化・世界がどんどん広がっている。ニコ厨と呼ばれるファンは、最初は少人数だった。しかし今は、登録されたユーザー数は2700万人を超え、毎月525円を払うプレミアム会員は162万人に達している。さらに20代のカバー率では75%がニコニコ動画を利用しているそうだ。今回のニコニコ超会議の意義は、ニコニコ動画の持つ世界の巨大さとパワーの凄さを誇示し、もはやマニアックな違法動画投稿サイトではない、しかもネットの中だけでなくリアルの世界でも強い影響力を発揮できる社会の中にしっかりと根を生やしたソーシャルエリアだ!と宣言する事にあったのではないだろうか。
テレビを見るよりニコニコ動画の方がいいという10代20代は既に珍しくもない。テレビはもうかなりの時間を奪われ影響力を失ってしまった。しかし全てを失ったのではない。まだ力あるうちに影響力の低下を少しでも遅らせねばならない。
お土産に頂いた湯呑み。ニコニコ動画で流行っているたくさんのタグ(ジャンル)が書かれている。このタグは今後どんどん増えて行くだろう。そしてさらに時間を奪っていくだろう。
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『遅ればせながら「ニコニコ超会議に行って来た」を書いてみた①』はこちら
氏家夏彦プロフィール
1979年TBS入社。報道・バラエティ・情報・管理部門を経て、放送外事業(インターネット・モバイル、VOD、CS放送、国内・海外コンテンツ販売、 商品化・通販、DVD制作販売、アニメ制作、映画製作)を担当した後、2010年TBSメディア総合研究所代表。フルマラソンでサブ4を続けるのが目標で す。
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