SmartNews社に遊びに行って
SmartNews社に遊びに行って、コンテンツのロジスティクスを考えた
“キュレーション”という概念があります。図書館や美術館のキュレーターのように、情報を選別して紹介する行為のことです。この言葉はたぶんITジャーナリストの佐々木俊尚さんが広めたのだと思います。実際に佐々木さんは毎朝、注目すべきWEBサイトをキュレーションしてtwitterでつぶやいています。『キュレーションの時代』という本を書いたのはもう3年も前ですね。
何しろネットの時代になり膨大な情報が日々流れ込み、ソーシャルメディアでびゅんびゅん情報が飛び交うと、どれを読めばいいのかわからなくなります。信頼できる人物なりの選別が必要になるわけです。
でも佐々木さんが”時代”というほどのことになるのかなあと思っていたら、今やホントに”キュレーションの時代”になりました。その典型がニュースアプリの百花繚乱ぶりです。
いま盛んにテレビCMを打っていて目立っているのが「グノシー」です。でもウルトラマンが出てきて”3分“をキーワードにしたCMは、正直あまりできがいいとは思えません。3分をポイントに使われているわけではないですし、ニーズとしてもピンと来ない。まあでもとにかく勢いは感じますね。
News Picksという、経済ニュースに絞ったキュレーションサービスもあります。これは著名な人をフォローする機能もあって、ソーシャルでつながるニュースサービスです。
そして真打ちはSmartNewsです。ユーザー数300万で断然トップです。CMを打ったわけでもないのに300万はすごいと思います。草分けだから成し遂げた数字でしょう。
先日、そのSmartNews社のオフィスに、あやとりブログ主催の氏家さんが遊びに行くと言うので、ぼくも混ぜてもらうことにしました。SmartNewsには縁があるのです。
最近この会社に参加した冨田憲二さんは、その前はVoyageGroup社にいて、アプリ開発の子会社を作りソーシャルテレビアプリを開発しました。それがTuneTVです。このアプリとの出会いからソーシャルテレビ推進会議という勉強会を起ち上げるに至ったので、冨田さんは勉強会の間接的な生みの親。叔父さんみたいな存在です。
それからもう一人。藤村厚夫さんはネットメディアの草分けITmediaを起ち上げた方で、SmartNewsでは執行役員となられています。ぼくは3年ほど前に藤村さんにお会いしているのですが、SmartNewsで藤村さんに久しぶりにお会いしたかったというのもあります。
というわけで行ってみたSmartNews社は、渋谷に素敵なオフィスを構えていました。
まずはオサレですね。入口だけでもうオサレ。
そして社内はこんな感じ。
カウンターがあって、ちょっとしたバーみたいですね。向こうにはハンモックが見えます。エンジニアの方たちはこんな空間を好き勝手にウロウロしながらコードを書いてるわけです。楽しそうだなあ。
氏家さんたちとテーブルに座り、藤村さん冨田さんのお話を聞きました。藤村さんはブログも書いているし、佐々木さん並みに毎朝WEBサイトをキュレーションしておられます。メディア関連の記事を多く取り上げているので、ぼくも参考にしています。
その藤村さんは確かもう50代後半ですが、熱い熱い。とても熱心にこれからのメディアについて、そしてもちろんSmartNewsについて。
皆さんご存知だと思いますが、SmartNewsはまだマネタイズにとりかかっていません。300万人もゆーざーがいるのに!自分だったらもうほくほく顔で広告を置いたりしてお金を稼ごうと走り回りそうです。でもそうはしない。CM打って見出しの並ぶ中に広告をさりげなくというかまぎらわしく置いているグノシーとは対称的です。
「1000万人をめざしてるんです」と藤村さんは言ってのけました。冨田さんがユーザーを増やす役割の急先鋒だそうです。それまではカンタンにマネタイズに走らないのが方針だと胸を張っておっしゃってました。
「コンテンツが大事なのはまちがいありません。でもコンテンツ至上主義だと意外に難しい。コンテンツのロジスティクスが必要で、我々はそこを担っていくつもりです。」
なるほどー。”コンテンツのロジスティクス“という言い方は初めてで新鮮でした。そして確かに、コンテンツがいいというだけでネット上を流布するかというとそう単純ではない。あるいは、コンテンツも置き方次第で読まれたり読まれなかったりします。
ぼくはこれをこのところ強く実感しているところなので、何度も何度もうなずきました。
ぼくはブログ「クリエイティブビジネス論」に日々記事を書いています。それが去年からは、BLOGOSとHuffingtonPostに転載されるようになりました。
そもそもはメディア論を中心に記事を書いてきたのですが、転載を意識してこのところもう少し広げたテーマでも書くようになりました。1月に「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない」と題した記事を書いたのですが、それがHuffingtonPostの方でものすごく多くの人に読まれて16万いいね!がついたのですね。これにはびっくりしました。
ちょうどニュースサイトとして急成長していた上に、対象としているのが団塊ジュニアを中心にした子育て世代だったから、ということのようです。それにしても16万いいね!は奇跡のような数字ですが。
同じ記事はもちろん、もともとのぼくのブログにも載っていますし、BLOGOSにも転載されています。ぼくのブログの方は、いつもよりずっとアクセス数は多かったです。でも、ハフィントンの比ではないです。それから、BLOGOSの方では大したアクセス数にはなりませんでした。
不思議です。ネットなんだから、どのサイトにあっても関係ないんじゃないかと思うのですが、やはりそのサイトに合う記事合わない記事があるんですね。これはソーシャルメディアを通じて記事に接することが多いせいもあるでしょう。ハフィントンに記事が載るとそのFacebookページで告知してくれます。ハフィントンのFacebookページにいいね!してる人に、ぼくの記事が伝わりやすいわけです。
その記事は赤ちゃんが題材なので、お母さんたちの間ですごい勢いで拡散したようです。記事を読んだお母さんは「ママ友から回ってきた」と言ってました。
ふだんのメディア論を読んでくれてる人は、ぼくのブログの存在を知っていますが、ママ友ネットワークで流通した時、ママたちはぼくのことはあまり知らないわけです。なんかブログ書いてるおっさん、ぐらいの認識。
だからママたちは「ハフィントンポストに書いてる方ですね」と認識したりする。「SmartNewsに載ってたので読みました」とか「Facebookで読みました」とか「auニュースで読みました」という人もいました。
コンテンツのもともとの居場所はもう見えなくなってるんですね。その人なりの場で、ぼくの記事と出会うわけです。それこそが、コンテンツのロジスティクスですね。
キュレーションはこれから、あらゆる分野で行われるようになると思います。そうすると、コンテンツのロジスティクスがあちこちで問われるのでしょう。どこにどう置かれるのか。読んで欲しい人とどんな接点になるのか。”出会い方“を考えないといけません。
実際ぼくは、ハフィントンやBLOGOSに転載されるようになってから書き方が変わりました。メディア論の境、を知らない人も読む前提で書かねばならない。それから、時にはハフィントンを強く意識して書き、BLOGOSには転載しないでくださいとお願いすることもある。
ロジスティクスを考えることはテレビ番組の場合、どうとらえればいいのか。それはまだまったくわかりません。番組はまだネット上に登場してないですから。でもまちがいなく、考えざるを得ませんよ。
少なくともこれから、少し頭に入れておいてください。絶対にいずれ意識せざるを得なくなりますから。
最後にみんなで写真を撮りました。左から2番目が藤村さんです。
SmartNewsの今後は、ひとりのユーザーとして、そしてこれからのコンテンツがどう読まれていくかの興味として、楽しみに見つめていきたいと思います。皆さんもぜひ、注目してみてください。サイトはこちらです。
境 治 プロフィール
フリーランスのコピーライターとして長年活動したのち、映像製作会社ロボット経営企画室長・広告代理店ビデオプロモーション企画推進部長を経て再びフリーランスに。2011年7月に『テレビは生き残れるのか』を出版。
ブログ「クリエイティブビジネス論」:www.sakaiosamu.com
ツイッターアカウント:@sakaiosamu
Facebookアカウント:www.facebook.com/sakaiosamu
メールアドレス:sakaiosamu62@gmail.com
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