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201311/12

“Presented by…”vs“平場論”―何処にメディア変革の眼/芽があるか―

「あやブロナイト」第2回が開かれる。
前回が好評だったのは何よりだ。第2回は、今年のメディア状況の総括という意味も込められるだろう。そこで、私なりの「第1回の論点整理」のためにも、今年の「メディア<論>体験(メディア体験ではない!)」を集約しておこう。前後篇で行こう。

 

この夏、三つのメディア<論>体験をした。
時系列ではなく、「メディア<論>体験」論を展開し易い順に書く。

 

(1) まず最初は「カンヌライオンズ ブック プロジェクト2013」で、これについては「あやブロ」(9/4)に書いた(http://ayablog.com/old/archives/23880)
一言でいえば、これはとても「平場的」プロジェクトであり、そしてそれは「表現と行為の同時進行」だということだ。

 

前川1

 

「カンヌライオンズ」という「クリエイティビティーを集約し公開する場」の報告とそれをブック化する(最終的には「缶」にパックするという行為になった)という企画だったのだが、リーダーの河尻さんのお誘いもあり、企画進捗を同時進行形で情報フォローをするという関係になってしまい、代官山TSUTAYAさんでの発表にも参加することになった。それはそれで面白かった。
ただ面白かっただけではなく、平場感のある企画の実行がとても良かったと思ったし、こういう平場感が、例えば<3.11>などのヴォランティアにスッと入って行く感性なんだろうということも心に残った。意義とか理由とか論理ではなく、感性が先行し表現と行為が同時に進行する。敢えて言うならば、今の日本に希望というものがあるとすれば、そういう人たち(「若者」という風に限定するのではなく)の存在だろうと思った。
そこから、「平場論」とくに「メディアにおける平場論」ということを思ったのだった。河尻君に「平場論」を書いたらと薦めたけど、「あれは論ではなくて行為です」ということだった。これも「あやブロ」に書いてある。

 

 

(2)次は、須田和博さんの[AD STUDIES]vol.45(吉田秀雄記念事業財団)SUMMER 2013“特集もう一度マス広告を考え直す”に「最古×最新 マスからソーシャルデバイスへ。時代が変わっても変わらない、広告の原点」という論考についてである。
この須田さんの論考そのものも大変興味深いので、これについても「あやブロ」(9/10)に書いたので(http://ayablog.com/old/archives/23967)参照して頂けると嬉しい。
何よりも、そこで紹介されている荒俣宏の情報に関する認識が刺戟的だった。
荒俣宏は「やがて日常のコミュニケーションが、すべてスポンサードされる時代がくる」という。つまり、一言しゃべるたびに、あるいは書くたびに、それは「Presented by ・・・」という時代がくるというのだ。荒俣宏は1999年、いまから15年近くも前に見抜いていたのだ。

 

前川2

 

では、“・・・”とは何者か。メディアも広告も人々も“・・・”とどう関係するのだろうか。
9.15.の「朝日新聞」書評欄で梶山寿子は「アップル帝国の正体」(後藤直義・森川潤 文藝春秋)についてこう書いている。
「(略)日本のものづくり全体がアップルに高性能部品を供給する“下請け”と化した実態」、「製造業と同様、家電量販店もキャリアも音楽産業も『アップル帝国』に呑み込まれ、翻弄されている。“勝者総取り”の経済では、最先端技術があっても使用者に利用されるだけ。」
「アップル帝国の正体」を読んでいないので、この評が妥当かどうかの判断は差し控えるが、そしてまた荒俣宏の“Presented by ・・・”の“・・・”がアップルだ言い切るのは些か短絡であろうが、しかし“Presented by ・・・”が構造的にはこういうことであろうということは言えるのではなかろうか。

 

 

 

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