How とWhat、脱と続(志村一隆)
EBU(European Broadcasting Union)のプレゼン資料(NAB2012にて)
インターネットは「クリエイティブ」の代替手段に
ただ、自分が思うに、インターネットは「伝送路」から「クリエイティブ」の代替の段階に進んでいる。
「HOW」から「WHAT」の進化は、あくまでもプレイヤーと消費者の関係性を静的に捉えた見方である。
作品制作にリソースを投資し、それを時間と地域に分けて販売していくビジネスモデルだけでは、多様化する消費者に合ったものを生み出せない。制作者と消費者の量的なアンマッチを満たすには、消費者が自ら作品制作に参加するしかない。
作り手が複数の物語を用意するマルチエンディングは、ゲームから映像作品にも取り入れ始められている。これも一つの方法。あとは、自ら発信をする消費者のコンテンツがその数のギャップを埋めるだろう。(参照:あやぶろポストマルチエンディング)
ユーザーは自分でニュースを見つけ、作る時代である。クリエイティブも然り。(参照:JBPressの記事ワシントン・ポスト紙の買収)
氏家論文を一歩進めるならば、「視聴者はユーザーになり、その一部はクリエイターになる」そして、「そのとき、テレビはどんな役割を担うのか?」
これが、「未来のテレビ」への本質的な問い掛けであろう。
Screen Digest, Ben Keen氏のプレゼン資料より(NAB2012にて)
オマケ
氏家論文の「ワンセグをインターネットに開放せよ」。
これは、伝送路の進化としていいと思った。
もう半年前、あやぶろAPIMENでも書いたが、ガラポンを基盤に共通APIを作って、デベロッパに開放すれば、面白いことが起きる。
その進化をより早めるためには、全テレビ局が共通APIの価値を理解し、ガラポンTVに出資するぐらいのことをしたらどうか。フジテレビやTBSもベンチャーファンドを作ったのだから、ガラポンTVは有力な投資先ではないか。
ハリウッド・スタジオも、映画のネット配信「ウルトラバイオレット」を作る前に、ネット配信のベンチャーに出資して、実験を繰り返していた。
ガラポンは、新たに得た資金で、サービスをクラウド化して欲しい。ガラポン社がワンセグを受信、ガラポンサーバーから番組を個別に配信する。そうすれば、個人でガラポンの高い機器を買う必要がなくなる。
こうなると、違法判決が出た「まねきTV」とほぼ同じサービスとなる。でも、テレビ局が出資すれば、ガラポンが訴えられることもないだろう。(「まねきTV」判決は影響しない。当研究所のクワバラ後輩曰く、「処分権主義」と言うらしい)
ケーブルテレビだって、その昔広大なアメリカで電波の弱い土地にでっかいアンテナを建て、勝手に配信して儲けようとしたのが、その発祥である。インドに行けば、いまでも違法な勝手ケーブルテレビを見てる人がたくさんいる。それに、メディア界の大物バリー・ディラー氏が出資したアメリカの「Aereo」は倉庫にたくさんアンテナを立て、テレビを受信、それを個人のスマホにインターネット配信してる。「まねきTV」同様、テレビ局に訴えられたが、「Aereo」は合法判決が出た。
時代によって伝送路は移り変わるが、番組を個別に配信するニーズは、もう50年も前から顕在化してる。(録画機の発達も、その文脈に位置づけられる)
ともかく、フルセグ(本放送)でなくワンセグ=セカンド・ブランドだったらネット配信してもいいんじゃない?!っていうテレビ側のメッセージは、面白い。
EBU(European Broadcasting Union)のプレゼン資料(NAB2012にて)
志村一隆(シムラカズタカ)プロフィール
1991年早稲田大学卒業、第1期生としてWOWOWに入社。2001年モバイルコミュニティを広告ビジネスで運営するケータイWOWOWを設立、代表取 締役就任、業界の先駆けとなる。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年エモリー大学で MBA、2005年高知工科大学で博士号
『明日のテレビ-チャンネルが消える日-(朝日新書)』、『ネットテレビの衝撃(東洋経済新報社)』が絶賛発売中。ツイッターは zutaka
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