テレビの未来③:[いつでも視聴]×[どこでも視聴]の衝撃・前編
シリーズで書いている『テレビの未来』、前回は、「テレビはサービスとしてみると、ユーザーには不便で時代遅れでダサいと思われている」というテーマで次のように締めくくった。
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すでにテレビの壁は崩壊をはじめ、テレビを取り巻く環境は大きく変化してしまっている。この先、変化がさらに加速してゆく中で、テレビはどこへ向かえばいいのか。少なくともユーザーに不便を強いてでも、自らの利益は守るといったやり方はもはや通用しないのは明らかだ。 それならユーザーの利便性向上が、テレビの利益につながるよう、自らを進化させればいい。
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今回からは「テレビはどこに向かって進化すればいいのか」という壮大なテーマで考察を進める。
シリーズの第1回でも書いたが、このシリーズはTBSメディア総合研究所が本社に提出した提言をベースにしている。この提言のエッセンスは以下の通りだ。
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テレビ局は、視聴者はユーザーになったことを念頭に置き、メディア企業からメディア・サービス企業に進化しなければならない。ユーザーファーストの理念のもと、ユーザーに高いレベルのUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供するために、サービスデザインという革新的アプローチで全体のサービスを精緻に結合し、オープンプラットフォームによる共創という発想で様々なプレーヤーを巻き込み、共栄していかなければならない。
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しかしいきなり「メディア・サービス企業に進化」と言われても、イメージしにくいだろう。そこで提言では、テレビの未来の具体例、いわゆる各論から入る事にした。その具体例のひとつが、今回のテーマ、「[いつでも視聴]×[どこでも視聴]の衝撃」だ。
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インターネットとITによるテクノロジー革命で、コンテンツは「いつでも、どこでも、だれでも」楽しめるようになった。
[どこでも視聴]とは、大量の情報を記録できる機能が格安で使えるようになり、映画、テレビ番組、投稿動画など様々な番組や動画をスマホの中にダウンロードして、電車の中だろうが喫茶店だろうが待合せ場所だろうが、どこでも見られるようになったことを指す。通信キャリアのLTEシフトやWi-Fiの普及などによって通信速度は高速化し、動画をサクサクとストリーミングで視聴できる。
これに慣れてしまったユーザーの目には、家にいるときだけ、リアルタイムでしか視聴できないテレビは、「とても不便で、時代遅れ」なサービスと映っているのは前回述べた通りだ。
一方[いつでも視聴]は、番組を録画していつでも見たいときに視聴するものだ。しかし自宅に帰りテレビのスイッチを入れ、録画機に録画されたリストを立ち上げ再生するという制約の多い視聴形態だ。しかも自宅に帰れば、ゲームをしたり、レンタルした映画を見たり、ネットで動画を探したりなど、他にすることがたくさんある。そうなると録画した番組は、タンスの肥やしならぬ、レコーダーの肥やしになり結局、見られないままとなってしまう。
今の録画視聴は厳密には「いつでも視聴」とは言えない。
しかし、この[いつでも視聴]と[どこでも視聴]が合体すると話はガラッと変わる。
録画した番組を自宅以外で見られるようになると、番組の楽しみ方は一気に広がる。会社や学校の行き帰りや、昼休み、ちょっとした待ち時間、スポーツジムでエアロバイクをこいでいる時、自宅で風呂に入っている間、トイレの中、眠る前のベッドの中など、視聴のチャンスはこれまでにない程、拡大する。
近い将来、このタイム&プレイスシフト視聴=いつでも・どこでも視聴は急激に普及する可能性がある。そのきっかけが全録機だ。
(続きは、「全録機による時間軸編成の崩壊」)
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リアルタイムの放送をテレビで視聴する人が増えることは良いことです。 言うまでもなくこれは「視聴率が上がる」ことを意味します。 &nb…
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