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20133/6

「英国のテレビは面白い!」プラスの生態圏とネットメディア化(小林恭子)

2月20日の氏家さんの記事「テレビがつまらなくなった理由」を拝読させていただき、大いに触発された一人である。

 

日本のネット空間で、時としてテレビ=「オワコン」(終わったコンテンツ)という表現を見かける。私が今住む英国では、テレビは数万人、あるいは数百万人を動員できるメディア媒体として、広告主にとっても、利用者にとっても、魅力的な存在だ。決して、終わってはいない。
一人の視聴者としても、英国のテレビは面白いなと単純に思う。

 

どこが日本のテレビと違うのか?

 

業界の構成を見ながら、その理由を考えて見た。


―英国テレビ界の構造

 

まず、英国のテレビはどんな感じだろうか?

 

放送業といえば、真っ先に挙げられるのがBBC(英国放送協会)だ。時々、「国営放送」と表記されている場合があるが、そうではない。NHKのように視聴世帯から受信料(テレビライセンス料)を徴収し、これを国内の放送活動の原資にしている。

 

BBCは英国内で制作される総番組の3分の2を扱い、英国の放送業界で大きな位置を占める(民放が強い日本との大きな違いがここだろう)。

 

主要放送局はBBC(主力チャンネルBBC1とBBC2のチャンネル番号はそれぞれ「1」、「2」)に加え、民放ITV(主力チャンネルITV1は「3」)、チャンネル4(「4」)、チャンネル5(「5」)。それぞれ主力チャンネルに加え、複数の専門チャンネルを持つ。

 

衛星放送の放送局BスカイB(「メディア王」ルパート・マードックの米ニューズ社が39%の株を持つ)は、有料テレビ市場でトップの位置を占める(契約者数約1000万人、英国の人口は日本の約半分の6000万人)。

 

放送・通信業の規制・監督団体「オフコム」(Office of Communications)によれば、英国のテレビチャンネルは400-500に上る。

 

BBC、ITV、チャンネル4、チャンネル・ファイブ、ウエールズ語放送S4Cには「公共サービス放送」(Public Service Broadcasting, PSB)という枠がはめられている。公共の電波を使うから「公共サービス」と呼ぶのではなく、「公益のための放送サービス」という意味である。

 

PSB枠に入ると、ニュース、事実に基づいた番組、児童番組、宗教番組、芸術、教育番組などを放送することが義務化される。質の高さ、オリジナル性(英国内のリソースを使う)、考えさせる内容、誰もが視聴できるように提供されているかなどの条件を満たす必要がある。番組の質の維持にはBBCの場合はBBCトラスト(NHKの経営委員会に相当)が、民放の場合はオフコムが目を光らせる。

 

おそらく、先進国同士の日本と英国は、ネットの普及率、スマートフォンの利用率、ブロードバンドの浸透度などにおいて、あまり大きな違いはないように思う。

 

しかし、私の見るところでは、英国のテレビ界には、日本の「負のスパイラル」を逆にした「プラスの増大現象」が起きている。

 

その理由は、私は構造的なものだと思う。プラスの方向に物事が進むような、独特の生態圏がある。

 

具体的に見てみよう。

 

 

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