あやぶろ/OLD

テレビの中の人による唯一のテレビ論、メディア論ブログ

© あやぶろ/OLD All rights reserved.

20133/6

「英国のテレビは面白い!」プラスの生態圏とネットメディア化(小林恭子)

―創造性を重視している、あるいはそう謳っている

 

4月から、BBCには新しい経営トップ(現ロイヤル・オペラハウスの最高経営責任者トニー・ホール)が就任する。

 

就任前のガーディアン紙によるインタビュー(3月2日付)で、ホールはBBC経営陣の仕事として、「番組制作者、脚本家、演出家が創造性を発揮できるような環境づくりをすること」と真っ先に答えている。

 

「BBCは公共放送だから、民放とは違って広告主を呼び寄せる必要はない、だから、そんなことが言える」・・・と思われるだろうか?それにしても、制作サイドから見たら、うらやましいような言葉ではないか。

 

創造性云々は、実は一種のプロパガンダでもある。

 

英国の放送業界で、収入規模から行くと衛星放送BスカイBとBBCは二大巨頭の存在だ。放送業界の雄として、BBC経営陣には大きなビジョンを語ることが期待されている。二ケタ台の予算削減策を実行中のBBCは、財政的にかなり苦しい状況にあるが、夢を語ることは大切なのだ。

 

もう一つの例である。

 

テレビでBBCを見ていると、時々、制作中の番組の宣伝が入る。例えば、複数の番組の短い動画を入れながら、「この春からこんな面白いオリジナルのドラマが放送されます、お楽しみに」というナレーションが入る。

 

番組の予告という主目的のほかに、外国(特に米国)からの輸入ではなく、原作があってそれをドラマ化したのでもなく、「オリジナルの」、一から作ったドラマであることをアピールしている。「安易に番組を作っていない」、「ほかのどこでもやっていないオリジナルのコンテンツ」、「あなたが払ってくれた受信料を質の高い番組に使っている」というメッセージを伝えたいのだ。

 

日本ではわざわざ「オリジナルのドラマです」なんていう必要はないだろう。英国でこの点を強調するのは、先の経営陣の夢の話同様、宣伝・プロパガンダともいえよう。

 

でも、実際に、まったくのゼロから(つまり作家の頭から)ひねり出すアイデアをテレビのドラマにするなんて、ものすごく大変なことではないだろうか?「誰もやっていなかったこと」を形にする、これは究極の創造性発揮の一例だろう。

 

だとしたら、「これは、すごいぞ!」と宣伝しても、いいわけである。

 

つまるところ、「テレビ=創造性が高いコンテンツが出る場所だ」ということをアピールしているわけだ。

 

創造性が重要だということが、テレビ界の、そして社会全体の暗黙の了解になっていることが分かるーどれほど実現できているかは別としても、である。

 

 

ページ:
1

2

3 4 5 6 7 8
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

20146/18

そこに、パースペクティブ=展望はあるか?2014年の論点⑤

停滞する民主主義が進化する途 ワールドカップの中継番組の瞬間最大視聴率が50.8%だったそうです。このニュースを見…

20146/18

そこに、パースペクティブ=展望はあるか?2014年の論点④

ストレンジなリアリティー:ガンダムUC ep7を見て考えたこと 『機動戦士ガンダム』は30年以上前に、フォーマット…

20146/17

情報“系”の中のテレビジョン

6月は、いろんなことがある。 会社社会では6月は大半の会社の株主総会の季節だから、4月の年度初め、12月の年末とともに一つの区切りの季節だ…

20146/16

テレビというコミュニティ。あやブロというコミュニティ。

あやとりブログに文章を書くようになってかれこれ二年以上経ちました。2011年に出した『テレビは生き残れるのか』を読んでくださった氏家編集長か…

20146/13

ワンセグ全番組タイムシフト視聴は視聴率を下げるのか検証してみた〜ガラポンTV視聴ログより

リアルタイムの放送をテレビで視聴する人が増えることは良いことです。 言うまでもなくこれは「視聴率が上がる」ことを意味します。 &nb…

ページ上部へ戻る