● 東京家族と東京物語(志村一隆)
実家の近所。東京家族と同じ東京近郊。
劇場で見て、スグHuluで検索する
「東京家族」見て来た。いいぃ映画でした。見終わって、子供欲しくなった。嫁は「ジブリの実写版」みたいといって号泣してました。
あの小津安二郎「東京物語」を下敷きにしてるというので、帰ってHuluで検索。まさかと思ったが、あった。Huluスゲェ。
こちらも2時間見入ってしまった。
サバサバしてる「東京物語」
同じセリフ、シーンがたくさんあるのに「東京物語」のほうは全く泣かなかった。なぜだろう。「東京物語」は60年前の作品。あまりに時代が違いすぎていて、感情移入できなかったからだろうか。
たしかに「東京家族」は「東京物語」より、母の優しさや人情の動きが描かれていた。小津作品は、話があまりにタンタンと進みすぎる。最後に言いたいことをまとめてる感じ。
それにサバサバしてる。
「東京物語」に、戦争で死んだ息子の話題になったとき「悲しんでばかりはいられない。サッ、前向きに行こう」的なセリフがある。
今の日本では、悲しい事件は悲しさを強調する視点でしか語れない。なんか自分も被害者でなければ語れない雰囲気がある。悲しさを笑い飛ばす意見は書きにくい。
しかし、どこの社会、いつの時代も、物事に前向きな人と感傷的な人の両方の人種がいる。
その2種類の人種のどちらに、こうした映画やメディアがスポットライトを当てているかで、その時代の空気が感じられて面白い。
身の回りのことを掘り下げる凄み
ともかく「東京家族」は、日本で生活してないと作れない作品だ。身の廻りにクリエイティブの題材ってたくさんあるんだということを気付かされる。そして、世界に出て行くには、こうした身近な話題を深く掘り下げることが必要なんだと思った。
どんどんフラットに情報が入ってくるなかで、リアルに感じたものだけが、最後に残る。クリエイターはそこを掘り下げるべきなんだろう。
そんな作り手の使命を真っ当に担った感がビシビシ伝わってきた。リスペクト。
過去を引き継ぐ系譜
「東京家族」は過去作品の再評価という意味でもとても意義がある。日本の伝統を取り入れるとなると、歌舞伎、浮世絵、相撲みたいなことになってしまう。それもいいけれど、実生活と少しかけ離れ過ぎていて実感が湧かない。自分の作る作品と繋がりが思い浮かばない。
そういう意味で60年前というはちょうどいい期間ではないか。こうした身近な文化の再発見・再構築という作業もクリエイターの使命なんだろう。
東京家族は、今の空気と過去との繋がりという空間と時間、両軸で凄みがある作品ではにないか。
デジタル温故知新
「和風」で世界に出ようと思うと、どうしても外国人が見た「和風」をなぞってしまう。僕が海外に出品するアート作品もそうだ。外国人が作る「和風」イメージを日本人が再生産する。それも1つの方法。
しかし、「東京家族」を見て、もっと身近にテーマはあるし、その掘り下げ方も全然足りないことを痛感した。
ともかく、こういう映画は日本でしか作れないだろうから、日本映画っていいなぁと思った。そして、ここまで深く考えないと自分たちの良さ、可能性は引き出されないのかとも感じた。
あやぶろに関わって、TBSオンデマンドで60年代のドキュメンタリーを見たり、センパイの「悪魔のようなあいつ」を見る機会に恵まれた。それに、Kindle買って、昭和初期の文章をよく読むようになった。
こうした時代の文化を引き継ぎ発展させるのが、僕らの役割なんだろう。
オマケ
70歳以上の映画監督対象に、オマージュ基金を創設。自分が子供の頃、影響を受けた作品のリメイクをしてもらう。50年単位で日本映画の再生産が行われ、大きな映画の歴史を紡いでいくことになると思うのだけど、どうだろう。
志村一隆(シムラカズタカ)プロフィール
1991年早稲田大学卒業、第1期生としてWOWOWに入社。2001年モバイルコミュニティを広告ビジネスで運営するケータイWOWOWを設立、代表取 締役就任、業界の先駆けとなる。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年エモリー大学で MBA、2005年高知工科大学で博士号
『明日のテレビ-チャンネルが消える日-(朝日新書)』、『ネットテレビの衝撃(東洋経済新報社)』が絶賛発売中。ツイッターは zutaka
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