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20133/25

● 発見の発見(志村一隆)

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  海沿いのレストランで食べたパエリア。カタルーニャ人のアルベルトと。

 

海を渡って「発見」する

バルセロナで開かれるモバイルのCES的イベント。
今年も何か書いてみよう。去年は16世紀の大航海時代とその後の文化の発展について書いてた。(バルセロナ紀行その①その②
バルセロナの海沿いの通りに、コロンブスがアメリカを指差す大きな銅像が建ってる。16世紀の大航海時代。冒険者たちが、赤道を超えインドや南米から持ち帰った「発見」が新たな科学や文化の礎になった。ルネサンス?
21世紀、もはや未開の地ってほとんど無い。グーグルアースを使えば、今度泊まるホテルってどんな建物なのか、パソコンでわかってしまう時代だ。
だったら、ネットのなかを航海すればいいんじゃないか。

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 アマゾンの講演から。(2013年2月27日モバイル・ワールド・コングレスにて)

 

データ大航海時代の「発見」

今年のイベントでは「アマゾン」の話が面白かった。
あのKindleのアマゾン。相変わらずバンバン買い続けてる。カモです。
アマゾンは本だけでなく、アプリも売ってる。iPhoneやグーグルPlayと同じ。アマゾンがひと味違うのは「売れた」データを分析してコンテンツ制作者にコンサルする点だ。
たとえば「アプリを買った人がアイテムを買う」この買い物行動には周期性がある。24時間毎だそうだ。
そこで、「今ならポイント5倍!」的な販促メールを、購入時刻から24時間毎に配信する。
やみくもに宣伝しない。
ほかにもアイテム購入は、アプリ価格の1.6倍までという「法則」もあるらしい。(なんか氏家さんのこのポストに似てきた)
アマゾンの会員は2億人。毎日生み出される購買の履歴。21世紀の冒険者はこのデータの大海原で、新たな「発見」するんだろう。

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 アドタイ・デイズのセッション「人を動かす・世の中を動かす言葉」(2013年3月14日東京国際フォーラム)

 

組み合わせる「発見」

前回書いたJoinTV記者発表が終わってスグ「人を動かす・世の中を動かす言葉」というライブトークを聞きに行った。これはとても面白かった〜。
壇上にはコピーライターや放送作家の方々3人。
なかでも倉本美津留さんが発していたメッセージ「言葉を自由に作ろう」が良かった。
トークで紹介していたEテレ「シャキーン」を早速見てみた。(毎朝7時放送)
彼はこの番組を「子供に『もっと自由に発想していい』ってことを教えて、彼らが大きくなったとき日本は変わる」っていう意識で作ってるそうだ。
「シャキーン」の「おもしりとり」は、言葉を2つ組合わせ、なんか意味を考えて口にするというコーナー。頭の体操になる。毎日やってたら「スゲェ」って興奮してしまうのが見つかりそう。
新たな「発見」は無くても、新たな「組み合わせ」は無数にある。

 

デジタルで古きを「発見」

倉本さんが最近気になる言葉として「ルネサンス」を挙げていた。昔の芸術や知識を自分のアイデアと組み合わせる。いまの行き詰まり感を打破するのはそんな感覚ではないかという。
これって自分の感覚と同じ。
Kindleやhulu、YouTubeでいちばん何が楽しいかというと、何十年も前の小説や映画、ドキュメンタリー。初めて見るものは、新旧関係なく面白い。
「デジタル?なんかわからねぇ。紙の匂いが好き」なんて言う人もいるけど、僕は古いものをデジタルで見るのが好き。「鬼平犯科帳」はKindleが無かったら一生読まずに終わってた。
いまや地平線の向こうに「発見」は無い。だったら、「過去」を遡るのも楽しいかも。「発見」する楽しみを自分で「発見」すればいいのだ。

ということを考えながら、今回は前川センパイの「近代」、稲井さんの「フラット化」、河尻さんの「編集」を思い出したし、それにコピーライターの境さんや須田さんの意見も聞いてみたいなぁ。と思いました。

 

オマケ

セッションのパネラー:東京プリン伊藤洋介氏、放送作家倉本美津留氏、POOL inc.小西利行氏の言葉のまとめ。

①シンプル・イズ・ストロング。「チョコレートは明治」に勝てるコピーは無い。
②コピー会議で、「AとBをくっつけて」とよく折衷案出される。意味変わってる。
③「これだと思います」と言って自分のエゴを押し通さないと企画は死ぬ。
④理屈に走りすぎると意味が伝わらない。
⑤「わかった人間だけで話してる」と伝わらないものになる。
⑥まじめな言葉は破壊力が無い。意味解らない言葉は破壊力がある。少なくとも無視されない。アートは「なんじゃこりゃ」と思わせるのが役目。
⑦経営者はアヴァンギャルド。通常の成長でなく、突然変異した人たち。
⑧「スゴい」って言われるコピーでないと広まらない。昔は「上手いな」が褒め言葉だった。いま「上手い」人はたくさんいる。「上手い!」と思われてもダメ。
⑨「想像と違う」「なんじゃこれ」と思わせないと伝わらない。
⑩コンビニのPOSデータ。広告投入後3日間の売れ行きで成否を判断される。1年間用意してきたキャンペーンが3日で終わることもある。
⑪宣伝部に言われる2大言葉「鮮度」と「インパクト」
⑫ビートルズの曲「I wanna hold your hands」は邦題が「抱きしめたい」。レコード会社の担当の人が曲を聴いて「手握りたいだけじゃない。抱きしめたいじゃー」と思い込んでタイトルをつけてしまった。そういった「思い込み」のパワー、言い続けると伝わってくる。岡本太郎氏の「芸術は爆発」も同じ。最初誰も何言ってるのか分からなかった。(ビートルズ担当の方に倉本氏がインタビューしてる。コチラから)
⑬漢字の無い言葉を見つけると「当て字チャンス!」と思う。たとえば、「しつこい」は「質濃い」でどうか。しつこいとクオリティがあがる。
⑭自分が世の中の代表としてコピーを書くことはできない。
⑮マーケティング調査をして広告を「置き」にいく感覚が嫌い。お菓子を1億個売るための仕掛けを考えると、どうしても言葉を置いてしまいがち。けれど、自分が面白いと思うものをぶつけるしかない。子供に日和ると無視される。
⑯いま世の中まとめるのは難しい。「サブカル」はもう存在しない。全てがメイン・カルチャー。

 

志村一隆(シムラカズタカ)プロフィール
1991年早稲田大学卒業、第1期生としてWOWOWに入社。2001年モバイルコミュニティを広告ビジネスで運営するケータイWOWOWを設立、代表取 締役就任、業界の先駆けとなる。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年エモリー大学で MBA、2005年高知工科大学で博士号
『明日のテレビ-チャンネルが消える日-(朝日新書)』、『ネットテレビの衝撃(東洋経済新報社)』が絶賛発売中。ツイッターは zutaka
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