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20131/30

視聴者は「視聴者」でなく「ユーザー」になった

 

西村さんは、CESの様々なパネルディスカッションやセッションに参加し、そこで得たコンテンツ制作の最先端をレポートしている。
例えば、『オンラインビデオでは視聴者データも取得でき・・・そこでコンテンツ、広告ともに作ってはデータを検証し、さらに微調整する。このトライ&エラーで製作、検証をくり返し、ターゲット視聴者に向けたコンテンツ、広告に仕上げていく』

 

『テレビは今でも大きな存在ですが、「ライブ」の価値は前よりも下がって来ている。・・・タイムシフティング/VODなどの視聴者動向を無視してはいけない。また家庭内で「テレビ」を視聴するデバイスも多く増えて来ているので「お茶の間視聴」というスタイルに縛られていてはいけない。カウチポテト的なお茶の間視聴スタイルは20世紀型である』

 

『視聴データを解析すると、テレビ放映エピソードをオンラインで流す際には7分間が最適』で『テレビ番組を作るときには7分間毎にオチを作るように気をつけている』

 

『若者は、・・・自分の好きなアーチストや、タレント、ブランド、番組に対しては、ソーシャルメディアを通じてパーソナルに繋がろうとします。・・・ですので、お茶の間でのスマートフォンからのデジタルコンテンツの購入という「セカンドスクリーン」視聴にこだわらず、視聴者がアーチスト、タレント、番組、ブランドとインタラクティブにつながることのできる仕組みを作ることが大事・・・そうした仕組みこそが、視聴者の満足度を向上させ、購買意欲を促進させる』

 

もちろんこれが今の米国の大多数の視聴者の姿だ、などということはない。まだまだお茶の間視聴でカウチポテトも多数いるだろう。しかし変化は明らかに起きている。しかもその速度の速さは無視できるものではない。

 

実験的なソーシャル連動テレビ番組も含めた動画コンテンツは、単なる視聴だけでなく各種デバイスも巻き込んで、これまでのテレビ視聴とは異なる体験をユーザーに与える。新たな視聴体験をしたユーザーは、旧来のテレビ番組では満足できなくなる。となるとテレビ番組のあり方も変わらなければならない。

 

これからテレビ番組を制作する際に意識しなくてはならないのは、番組を映し出すのはテレビだけでなくタブレットでありスマホでもあること、視聴される場はお茶の間だけでなく、電車の中だったり、公園だったり、コーヒーショップだったりする。そして何より、テレビの、タブレットの、スマホの向こう側で見ている人は、「視聴者」ではなく「ユーザー」だということだ。

 

 

西村真里子さんのTechWaveに書かれているプロフィールは以下の通り。
最高峰のクリエイティブ & コミュニケーション企画力を武器にソーシャル & スマートフォンのアプリケーションやサービスリリースにチャレンジする「バスキュール」の一員。
IBM、Adobe、Grouponを経て現職。テクノロジーと マーケティングとお酒に強い。 バスキュールの「大量の人数がリアルタイムに参加する(マス×インタラクティブ)新エンターテイメント」の代表事例:TBS「大炎上生テレビ オレにも言わせろ!」(2012年9月28日)、フジテレビ「にっぽんのミンイ」(2012年10月15日~)、日本テレビ「JoinTVプロジェクト」

 

 

 

 

氏家夏彦プロフィール

株式会社TBSメディア総合研究所代表
テクノロジーとソーシャルメディアによる破壊的イノベーションで、テレビが、メディアが、社会が変わろうとしています。その行く末をしっかり見極め、テレビが生き残る道を探っています。
1979年TBS入社。報道(カメラ、社会部、経済部、政治部等)・バラエティ・情報・管理部門を経て、放送外事業(インターネット・モバイル、VOD、CS放送、国内・海外コンテンツ販売、 商品化・通販、DVD制作販売、アニメ制作、映画製作)を担当した後、2010年現職。
最近はテレビの外の人たちとの人脈が増えています。

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